病院薬剤師の「SOAP」の書き方|チーム医療で活きる、論理的な記録術
病院薬剤師が、チーム医療の一員として、その専門性を最大限に発揮する上で、避けては通れない非常に重要なスキルがあります。それが、患者様の薬物治療に関する情報を、論理的かつ簡潔に記録するための手法、「SOAP(ソープ)」形式での薬歴記載です。この記事では、全ての病院薬剤師にとって必須のスキルである、このSOAPの基本的な「書き方」と、質の高い記録を作成するためのポイントについて、詳しく解説していきます。
なぜ、病院薬剤師にSOAPが必要なのか
SOAPは、単なる記録の形式ではありません。それは、薬剤師自身の思考を整理し、患者様が抱える薬物治療上の問題点を明確にするための、強力な「思考ツール」です。そして、その思考のプロセスと結論を、医師や看護師といった他の医療スタッフに、標準化された分かりやすい形で共有するための、「コミュニケーションツール」でもあります。質の高いSOAPを記載できることは、あなたの臨床判断能力の高さを示す、何よりの証明となるのです。
SOAPの4要素と、それぞれの記載内容
SOAPは、情報を四つの項目に分類して記述します。それぞれの項目に、どのような内容を記載するのかを、具体的に見ていきましょう。
S:Subjective(主観的情報)
ここには、患者様本人や、そのご家族からの訴えといった、「主観的な情報」を記載します。「昨夜は痛みでよく眠れなかった」「この薬を飲むと、少しふらつく気がする」といった、患者様の言葉を、できるだけそのままの形で記録することが重要です。
O:Objective(客観的情報)
ここには、血液検査のデータや血圧、体温といったバイタルサイン、そして、処方されている薬剤の内容や、薬剤師が客観的に観察した事実など、「客観的な情報」を記載します。誰が見ても事実として解釈できる、具体的な数値を伴う情報が中心となります。
A:Assessment(評価)
ここが、薬剤師の専門性が最も発揮される、SOAPの心臓部です。S(主観的情報)とO(客観的情報)で得られた情報を基に、薬学的視点から、現状をどのように分析・「評価」したのかを記述します。例えば、「SとOの情報から、薬剤Aによる副作用Bが発現している可能性が考えられる」といった、あなたの思考のプロセスを、論理的に示します。
P:Plan(計画)
A(評価)で下した判断に基づき、今後どのような行動をとるのか、具体的な「計画」を記載します。この計画には、患者様に対して行う服薬指導の内容(Care Plan)、副作用のモニタリング計画(Monitoring Plan)、そして、医師への処方提案(Therapeutic Plan)などが含まれます。
より質の高いSOAPを書くためのポイント
質の高いSOAPを書くためには、それぞれの項目が、論理的に繋がっていることが不可欠です。「SとOの情報があるから、Aのように評価し、だからこそ、Pという計画を実行する」という、明確な因果関係を意識することが大切です。また、他の医療スタッフが、短時間で要点を把握できるよう、専門用語の多用は避け、できるだけ簡潔に、分かりやすく記述することを心がけましょう。
スキルを磨くための、最適な「環境」選び
SOAPの書き方を頭で理解することと、実際の臨床現場で、質の高い記録を実践できることとの間には、大きな隔たりがあります。この重要なスキルを本当に習得するためには、日々の実践と、経験豊富な先輩薬剤師からの、適切なフィードバックが欠かせません。つまり、新人薬剤師への教育制度が充実しており、質の高い臨床業務を推奨する文化が根付いている「環境」に身を置くことが、スキルアップへの一番の近道なのです。
まとめ
SOAP形式での薬歴記載は、病院薬剤師が、単なる調剤業務を行うだけでなく、思考し、評価し、そして計画する、専門家であることを示すための、基本的な技術です。このスキルを磨くことが、チーム医療の中で、あなたの価値を高め、信頼を勝ち取るための、確かな一歩となります。あなたの専門性を、さらに高いレベルへと引き上げてくれる、最適な学習環境を見つけ出すために、ぜひ一度、転職のプロフェッショナルに相談してみてはいかがでしょうか。