薬剤師の転職面接、「他社の選考状況は？」と聞かれた時の正直な答え方

転職活動の面接も終盤に差し掛かった頃、「差し支えなければ、他に選考を受けていらっしゃる企業はありますか？」と、現在の活動状況について質問されることがあります。「正直に話すべきか、それとも『御社だけです』と答えるべきか」、その駆け引きに悩む、応募者にとっては非常に答えにくいデリケートな質問の一つです。この記事では、この質問に込められた企業の意図を正しく理解し、嘘をつくことなく、かつご自身の入社意欲を効果的に伝えるための、誠実でスマートな答え方について詳しく解説いたします。

企業が「選考状況」を質問する意図

まず、なぜ企業側が他の企業の選考状況について尋ねるのか、その背景にある意図を理解しておきましょう。最も大きな目的は、応募者の「志望度の高さを測りたい」という点にあります。自社をどの程度重視しているのか、志望順位を知ることで、入社への本気度を確かめたいのです。また、もし他社の選考が最終段階に進んでいるのであれば、自社の選考スケジュールを早める必要があるかといった、「採用スケジュールの調整」のためにもこの情報は重要となります。さらに、内定を出した場合に、承諾してもらえる可能性がどのくらいあるかという、「内定辞退のリスク」を事前に把握しておきたい、という現実的な意図も含まれています。

答える際の基本スタンス：「正直」かつ「誠実」に

この質問に答える際の基本的な心構えは、嘘をつかず「正直」に、そして相手への敬意を払って「誠実」に答えることです。転職活動において、複数の企業を比較検討するのはごく自然なことであり、企業側もそれを理解しています。そのため、「御社しか受けていません」といった明らかな嘘をつくのは、後々矛盾が生じた際に信頼を失う原因となるため、絶対に避けるべきです。ただし、具体的な企業名を尋ねられない限り、ご自身から社名を明かす必要はありません。「同業の調剤薬局を数社」「在宅医療に力を入れている病院」といったように、業界や業態、あるいは企業の特色などで答えるのが、適切なマナーです。そして何よりも大切なのは、どのような状況であっても、目の前の企業に対する入社意欲が最も高いという姿勢を、言葉と態度で示すことです。

【状況別】具体的な答え方と例文

ここでは、ご自身の選考状況に応じた具体的な答え方の例をいくつかご紹介します。

他に選考が進んでいる企業がある場合は、まずその事実を正直に伝えた上で、第一志望であることを明確に付け加えましょう。例えば、「はい、現在、他に2社ほど選考に進んでおります。1社は二次面接の結果待ちの段階です。しかしながら、本日〇〇様から直接お話を伺い、貴社の〇〇という点に大変強い魅力を感じており、ぜひこちらで働きたいという気持ちがより一層強くなりました。私の中では、御社が第一志望でございます」といった形で答えることで、誠実さと熱意の両方を伝えることができます。

もし、他に選考中の企業が本当にない場合は、意欲がないと見なされないよう、その理由を補足することが大切です。「現在は、御社に集中して選考の準備を進めております。〇〇という私のキャリアの軸に最も合致しているのが御社であると考えているため、まずは御社からご縁をいただきたいと強く願っております」というように、活動の軸を明確にすることで、真剣な姿勢が伝わります。

薬剤師としての「一貫性」を意識する

選考を受けている、あるいは検討している企業のラインナップには、ご自身が転職活動で何を重視しているか、その「キャリアの軸」が自然と表れます。「地域密着型のかかりつけ薬局を中心に活動しております」や、「専門性を高められる急性期病院に絞って応募しております」といったように、ご自身の活動に一貫性があることを伝えることで、場当たり的ではなく、計画性を持ってキャリアを考えている、思慮深い人物であるという印象を与えることができます。

デリケートな交渉は、プロに任せるという選択肢

他社の選考状況に関する質問は、単なる事実確認ではなく、応募者の志望度や誠実さが試される、高度なコミュニケーションの場です。どのような伝え方をすれば、ご自身の市場価値を正しく伝えつつ、志望度の高さをアピールできるのか、その駆け引きをご自身一人で行うのは非常に難しいものです。このような時、転職エージェントは皆様の強力な味方となります。キャリアアドバイザーが、皆様に代わって企業の採用担当者へ他社の選考状況を伝え、選考スケジュールの調整などを戦略的に行うことが可能です。応募者の方が自らデリケートな駆け引きをする必要がなくなり、面接そのものに集中できる環境を整えるためにも、ぜひ専門家のサポートをご活用ください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
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