薬剤師の転職面接、「精神疾患」について聞かれた時の誠実な向き合い方
転職活動の面接において、ご自身の経歴やスキルについて話す中で、時に、過去の病歴、特にうつ病などの精神疾患に関する既往歴について尋ねられ、言葉に詰まってしまったり、どう答えるべきか深く悩んでしまったりする方がいらっしゃいます。これは、応募者のプライバシーに深く関わる、極めてデリケートな質問です。不採用に繋がるのではないか、あるいは偏見を持たれてしまうのではないかという恐怖心を抱くのは、当然のことです。この記事では、このような不適切な質問に直面した際の基本的な考え方と、ご自身の状況に応じて、誠実かつご自身を守りながら対応するための方法について、一緒に考えていきたいと思います。
まず知っておくべき基本的な考え方
まず、大前提としてご理解いただきたいのは、業務の遂行能力と直接関係のない、応募者の病歴、特に精神疾患について尋ねることは、就職差別につながる可能性があるため、厚生労働省の指針においても「配慮すべき事項」とされている不適切な質問である、という点です。したがって、法的に、あなたがこの質問に答える義務は一切ありません。
しかし、面接官側にも、必ずしも悪意があるわけではない場合も多くあります。薬剤師という責任の重い仕事に対して、「安定して業務を遂行できるか」「入社後に過度なストレスがかかる環境ではないか」といった、応募者への配慮や、企業としての安全配慮義務の観点から、確認のために尋ねているケースも考えられます。
伝えるべきか、伝えないべきかの判断
ご自身に精神疾患の既往歴がある場合、それを伝える(オープンにする)か、伝えない(クローズにする)かは、ご自身の判断に委ねられます。それぞれに、メリットとデメリットが存在します。
既往歴を伝えない「クローズ」の状態で転職活動を行う場合、選考の過程で不利になる可能性を避けることができます。しかし、もし入社後に症状が再発するなどして業務に支障が出た際に、職場からの必要な配慮を得にくくなるというリスクが伴います。
一方で、既往歴を正直に伝える「オープン」の状態で臨む場合、ご自身の状況に理解のある、本当に働きやすい職場環境を見つけられる可能性が高まります。誠実な姿勢が、かえって信頼に繋がることもあります。しかし、残念ながら、企業によってはその事実だけで不採用と判断されてしまうリスクもゼロではありません。
もし伝える場合の、誠実な伝え方と例文
もし、ご自身の判断で既往歴を伝えることを選択した場合、その伝え方には三つの重要なポイントがあります。第一に、現在は回復しており、今後の業務に支障が全くないことを明確に伝えること。これが最も重要です。第二に、もし可能であれば、疾患に至った原因(例えば、前職での過重労働など)と、ご自身が現在行っている再発防止のための取り組みを客観的に説明すること。第三に、もし必要な配慮(例えば、定期的な通院など)があれば、それを具体的かつ謙虚に伝えることです。
例えば、次のような形で伝えることができます。「はい、過去に環境の変化によるストレスが原因で、心療内科に通院していた時期がございます。しかし、現在は完治しており、主治医からも通常の勤務に全く支障はないとの診断を受けております。現在は、自身のストレスサインを客観的に把握し、定期的な運動といったセルフケアを行うことで、健やかに過ごしておりますので、業務への支障はございません。ご安心ください。」
答えたくない場合の、丁寧な断り方
もちろん、このデリケートな質問に対して、回答を拒否することも可能です。その際は、相手を不快にさせないよう、丁寧な言葉で伝えることが大切です。「大変申し訳ございませんが、そのご質問は私のプライベートに深く関わることですので、お答えを差し控えさせていただいてもよろしいでしょうか。業務の遂行に関しましては、全く支障はございませんので、その点につきましてはご安心いただけますと幸いです。」というように、回答を控える旨と、業務への影響がないことをセットで伝えるのが、スマートな対応です。
一人で抱え込まず、最も信頼できる相談相手を
精神疾患に関する質問は、転職活動における最もデリケートで、かつ応募者お一人で対応するにはあまりにも重い課題です。どの企業が個人の事情に対して理解を示してくれるのか、また、ご自身の状況をどのように伝えれば選考で不利にならないのか、その判断は極めて難しいと言えるでしょう。このような深刻な悩みをお持ちの時こそ、転職の専門家であるキャリアアドバイザーを頼ってください。私たちは、あなたの最も信頼できる相談相手として、まずあなたの状況と気持ちを親身にお伺いします。その上で、オープンで進めるべきか、クローズで進めるべきか、その戦略を一緒に考え、企業側にあなたに代わって業務遂行能力に問題がないことを伝えたり、必要な配慮について事前に交渉したりすることも可能です。一人で抱え込まず、まずはそのお悩みをお聞かせいただくことから始めてみませんか。