薬剤師の転職面接、「短く答える」技術とは?簡潔さと熱意を両立させる話し方
転職活動の面接において、「簡潔に、分かりやすく話すこと」が重要である、とよく言われます。ご自身の経験や入社への熱意を伝えたいと思うあまり、つい話が長くなってしまうのは、多くの応募者が陥りがちな失敗の一つです。しかしその一方で、ただ短く答えれば良いというものでもなく、「短く答える」ことには、実はあなたのコミュニケーション能力が試される、高度な技術が求められます。この記事では、面接官に「この人は話が分かりやすく、論理的だ」という好印象を与える、戦略的に「短く答える」ための技術と、その適切なバランス感覚について詳しく解説いたします。
なぜ、面接で「短く答える」ことが評価されるのか
まず、なぜ面接で簡潔に話すことが評価されるのでしょうか。その理由は、あなたの「論理的思考力」や「コミュニケーション能力」の高さを示すことに繋がるからです。多くの情報の中から、今話すべき最も重要な要点を瞬時に抽出し、簡潔な言葉でまとめる能力は、高い論理的思考力の証です。また、聞き手である面接官の理解度や集中力に配慮し、分かりやすく伝えようとする姿勢は、相手本位の円滑なコミュニケーションができる人物であると評価されます。これは、限られた時間の中で、患者様に薬の重要な情報を、正確かつ簡潔に伝えなければならない薬剤師の業務にも、深く通じるスキルと言えるでしょう。
「短すぎる」NGな答え方との境界線
ここで注意すべきなのは、「短く答える」ことと、「情報量がなく、会話を打ち切ってしまう」ことは、全く違うということです。例えば、面接官からの「〇〇のご経験はありますか?」という質問に対して、「はい、あります」と、ただ一言で答えてしまうのは、典型的なNG例です。これでは、あなたの経験の深さも、コミュニケーションへの意欲も全く伝わりません。
適切な答え方は、結論に、必ず「プラスアルファの情報」を一言付け加えることです。先ほどの質問であれば、「はい、ございます。前職では約3年間、〇〇の業務を担当しておりました」と答えるのです。この「プラスアルファ」の一文が、会話のキャッチボールを生み、面接官が「では、その中でどのような工夫をしましたか」といった、次の質問をしやすくするための、相手への配慮となります。
簡潔に、かつ深く伝えるための「PREP法」
では、志望動機や自己PRといった、ご自身の考えをしっかりと説明すべき質問に対しては、どのようにすれば簡潔に、かつ内容の濃い回答ができるのでしょうか。そのために非常に有効なのが、「PREP法」という話の構成術です。これは、Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)の頭文字を取ったもので、この順番で話を組み立てます。まず、質問に対する直接的な答えである「結論」を述べ、次にその「理由」を説明し、それを裏付ける「具体的なエピソード」を話します。そして最後に、もう一度「結論」や入社後の貢献意欲で締めくくります。この構成を意識することで、話が脱線せず、自然と要点がまとまり、聞き手が最も理解しやすい形で、ご自身の考えを深く伝えることができます。
全ての質問に長く答える必要はない
面接の対話全体で、心地よいリズムを生み出すためには、質問の種類に応じた、回答の長さの使い分けも重要です。事実確認の質問や、はい・いいえで答えられる質問は、「結論+α」でテンポよく返します。そして、志望動機やあなたの強みといった、人柄やキャリア観の核となる質問に対しては、PREP法を用いて1分程度で、しっかりと熱意を込めて語る。この緩急の使い分けができることこそが、成熟した大人のコミュニケーション能力の証となるのです。
あなたの「伝える力」を、プロの視点で磨き上げる
面接で「短く答える」という技術は、単に言葉を省略することではなく、情報を論理的に整理し、相手への配慮を持って、最も伝えたいことを的確に届ける、高度なプレゼンテーションスキルです。ご自身の話し方が、客観的に見て「簡潔で分かりやすい」のか、それとも「情報不足で素っ気ない」のか、そのバランスをご自身一人で判断し、改善していくのは非常に難しいものです。そのような時は、転職の専門家であるキャリアアドバイザーにご相談ください。模擬面接などを通じて、あなたの答え方について、プロの視点から客観的なフィードバックを受けることで、あなたの「伝える力」は格段に向上するはずです。