薬剤師の履歴書、「中退」は書かないとNG?経歴詐称のリスクと正しい伝え方
薬剤師の転職活動で履歴書を作成する際、大学などを中途退学した経歴があると、「この事実は書かない方が良いのではないか」「選考で不利になるかもしれない」と、その扱いに深く悩んでしまう方も少なくありません。ご自身の経歴を少しでも良く見せたいという気持ちは自然なことですが、中退の事実を意図的に「書かない」という選択は、あなたのキャリア全体を危険に晒す、極めて重大なリスクを伴います。この記事では、中退の経歴を履歴書に書かないことの危険性と、その事実を正直に、かつ前向きに伝えるための正しい書き方を解説します。
「中退」の事実を書かないことは「学歴詐欺」にあたる
まず最も重要な原則として、中途退学した経歴を履歴書に記載しないという行為は、意図的であるかどうかにかかわらず「学歴詐欺」と見なされます。履歴書は、あなたのこれまでの経歴を客観的に証明するための公的な書類です。そこに事実と異なる情報を記載したり、事実の一部を隠したりすることは、ご自身の信頼性を根本から揺るがす行為に他なりません。特に、患者様の健康と命を預かる薬剤師という職業には、誰よりも高い倫理観と誠実さが求められます。その第一歩である応募書類において、経歴を偽ることは決して許されません。
なぜ「書かない経歴」は必ず発覚するのか
「短い期間だったから、きっと分からないだろう」という安易な考えは非常に危険です。中退の事実は、採用選考の過程や、入社手続きの段階でほぼ確実に明らかになります。例えば、高等学校の卒業年月と、薬学部の入学年月との間に不自然な空白期間があれば、採用担当者は必ずその理由を質問します。また、最終的に卒業証明書の提出を求められた際に、辻褄が合わないことが発覚します。
もし経歴詐欺が明らかになれば、その時点で採用担当者からの信頼は完全に失われ、内定は取り消されます。万が一、入社後に発覚した場合は、就業規則違反として「懲戒解雇」という最も重い処分が下される可能性も十分にあります。
履歴書への正しい書き方と理由の添え方
中退の事実は、隠すのではなく、学歴欄に正直に、かつ正確に記載するのが唯一の正しい対応です。まず入学した年月と学校名・学部名を記載し、その次の行に中途退学した年月と「中途退学」という事実を明記します。その際、退学した理由を簡潔に書き添えるのが一般的です。
薬剤師を目指すために中退した場合の記入例
平成〇年 4月 〇〇大学 文学部 入学
平成〇年 9月 〇〇大学 文学部 中途退学(薬剤師を目指し、大学を再受験するため)
やむを得ない事情があった場合の記入例
平成〇年 4月 〇〇大学 〇〇学部 入学
平成〇年 9月 〇〇大学 〇〇学部 中途退学(家庭の事情により)
病気療養が理由であった場合は、「(病気療養のため。現在は完治しており、業務に支障はありません)」のように、現在の健康状態を補足しておくと、採用担当者に安心感を与えることができます。
面接で中退理由を前向きに伝えることが重要
採用担当者が本当に知りたいのは、中退という過去の事実そのものよりも、「その経験から何を学び、現在は仕事にどう向き合おうとしているのか」という、あなたの未来に向けた姿勢です。面接で退学理由について質問された際は、その経験がご自身のキャリアプランを見つめ直すための重要な転機であったことを、前向きな言葉で伝えましょう。
例えば、「一度別の学問を学んだからこそ、より強い意志を持って薬剤師という目標を見つけることができました」と説明すれば、それは主体的なキャリア選択の決断として、あなたの意欲の高さを示すことができます。過去の経験を誠実に語り、それを糧にして成長した現在の姿を自信を持って示すことが、採用担当者からの信頼を勝ち取るための鍵となります。