臨床開発モニター（CRA）が「つらい」と言われる理由と、その実態

薬剤師の皆様がご自身のキャリアプランを考える際、その活躍の場は調剤薬局や病院での臨床業務だけに限られるものではありません。皆様が薬学部で培った高度な専門知識と臨床的な視点は、「臨床開発モニター（CRA）」という分野においても、人々の健康や医療の未来に貢献するための、非常に重要な役割を担っています。

CRAは、新薬開発という大きなやりがいを感じられる専門職として、薬剤師の転職先として人気があります。しかしその一方で、インターネット上などで「CRAの仕事は『つらい』『きつい』」といった声を見聞きし、キャリアチェンジに不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、臨床開発モニター（CRA）の仕事で「つらい」と感じられがちな点と、その背景、そしてキャリア選択の視点について詳しく解説いたします。

臨床開発モニター（CRA）とはどのような職種か

「CRA」（Clinical Research Associate：臨床開発モニター）とは、製薬会社やCRO（開発業務受託機関）に所属し、新薬開発における「臨床試験（治験）」のプロセスを専門的にサポート・管理する職種を指します。

CRAは、新薬が国の承認を得て、患者様の元に届くために不可欠な「臨床開発」の最前線で活躍します。

CRAの仕事で「つらい」と感じられがちな点

CRAの仕事内容は、調剤薬局や病院での薬剤師業務とは大きく異なります。臨床開発「未経験」の薬剤師が転職した場合、そのギャップから「つらい」と感じる可能性のあるポイントがいくつか存在します。

責任の重さと法的なプレッシャー

CRAの最大のミッションは、治験が法律（GCP：医薬品の臨床試験の実施の基準）や計画書（プロトコル）に基づいて正しく行われているかを「監視・管理（モニタリング）」することです。

新薬開発という、多くの患者様の未来に関わるプロセスであり、データの信頼性や被験者の安全を守るという、ミスが許されない重い責任を担います。この法的なプレッシャーや責任の重さを、「つらい」と感じる方もいらっしゃいます。

医療機関との高度な調整業務

CRAの主な仕事は、治験を実施する医療機関（病院）を訪問し、医師や看護師、院内CRC（治験コーディネーター）と密に連携を取ることです。

多忙な医療従事者の方々に、治験のルール遵守をお願いしたり、データの修正を依頼したりと、高度なコミュニケーション能力と調整力が求められます。時には、製薬会社（依頼者）と医療機関（実施者）との板挟みになり、精神的に「つらい」と感じる場面もあるかもしれません。

業務量とスケジュール管理の難しさ

CRAは、多くの場合、複数の治験（プロトコル）や、複数の医療機関を同時に担当します。そのため、業務量は膨大になりがちです。各プロジェクトには厳格な期限（締め切り）が設定されており、常にスケジュールに追われる状況を「つらい」と感じることもあります。

出張の多さと体力的な負担

担当する医療機関が、ご自身の拠点から遠方にある場合、日帰りや宿泊を伴う出張が多くなります。移動時間や、慣れない環境での宿泊が続くことが、体力的に「つらい」と感じる方もいらっしゃるようです。

デスクワーク（報告書作成）の多さ

CRAは医療機関を訪問する外勤だけでなく、オフィスに戻ってからのデスクワークも非常に多い職種です。特に、モニタリング（訪問）後は、その内容を詳細に記した「モニタリング報告書（MVR）」を作成する必要があり、緻密で膨大な事務作業が求められます。このデスクワークの多さにギャップを感じる方もいます。

「つらい」状況を生み出す「職場環境」という要因

しかし、これまで述べた「つらさ」は、個人の適性（体力、コミュニケーションスタイル、事務作業の得意・不得意）だけの問題ではありません。むしろ、「職場環境」そのものが、CRAを「つらい」状況に追い込んでいる可能性もございます。

例えば、「慢性的な人員不足」や「一人当たりの担当施設数・プロトコル数が過多」な企業では、業務量が許容範囲を超え、恒常的な長時間労働に繋がってしまいます。

また、「未経験」の薬剤師として転職したにもかかわらず、「十分な研修（OJT）やサポート体制がなく」、適切なフィードバックも得られないまま、不安を抱えたまま現場に出されるような環境も、精神的な「つらさ」を増大させる大きな要因です。

環境を変えることで解決できる可能性

もし皆様が、「CRAの仕事のやりがい（新薬開発への貢献）は感じているが、現在の働き方が『つらい』」と感じているのであれば、それはご自身の適性の問題ではなく、職場環境の問題かもしれません。

個人の努力だけでは改善できない環境の問題は、「転職」によって解決できる可能性があります。CRAが働きやすいよう、人員体制や研修制度、業務効率化のシステムを整えている企業（製薬メーカーやCRO）も、確かに存在します。

「つらい」かどうかを見極めるための転職エージェント

CRAへの転職を考える際、あるいはCRAとして他の企業への転職を考える際、求人票の文面だけでは、その企業の「実際の忙しさ（一人当たりの担当施設数）」や、「研修制度の実態」、「職場の雰囲気（相談しやすさ）」といった、「つらさ」に直結する内部事情を正確に把握することは困難です。

薬剤師専門の転職エージェントは、こうした各CROや製薬会社の内部事情について、詳細な情報を保有している場合があります。

「調剤経験しかないが、CRAの『つらい』点が不安だ」「現在のCRAの仕事が『つらい』が、環境を変えて続けたい」といったご自身の切実な悩みを専門のコンサルタントにご相談いただくことで、一般には公開されていない求人を含め、ご自身に最適な職場環境をご提案することが可能です。

キャリアチェンジのミスマッチを防ぎ、ご自身の専門性を活かして充実したキャリアを築くための一歩として、まずは転職エージェントに登録し、専門家の視点からアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
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