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薬剤師の転職先としての「株式会社」:その特徴と選び方のポイント

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薬剤師の活躍の場は多岐にわたりますが、転職を考える際、大きな選択肢となるのが「株式会社」として運営されている組織です。これには、全国展開する大手調剤薬局チェーンやドラッグストアチェーン、新薬開発を担う製薬会社、医薬品開発をサポートするCRO/SMO、医薬品流通を支える卸売企業などが含まれます。

個人経営の薬局や公的な病院とは異なる、「株式会社」という組織形態で働くことには、どのような特徴やメリット・デメリットがあるのでしょうか。また、転職先として株式会社を選ぶ際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

この記事では、薬剤師が「株式会社」への転職を考える際に知っておきたいポイントについて、詳しく解説していきます。

薬剤師が働く「株式会社」とは? 主な種類と組織の特徴

まず、「株式会社」は、利益を追求し、株主に対して経営責任を負う法人形態です。そのため、一般的に以下のような組織的な特徴が見られます。

  • 組織的な運営: 経営理念や事業戦略に基づき、組織全体として目標達成を目指します。業務マニュアルや評価制度などが整備されていることが多いです。
  • 経営の安定性(特に大手): 資本力があり、経営基盤が比較的安定している企業が多い傾向にあります。
  • コンプライアンス重視: 法令遵守や情報管理に対する意識が高く、体制が整えられています。

薬剤師が活躍する主な「株式会社」には、以下のような種類があります。

  • 調剤薬局チェーン: 全国または広域に多数の店舗を展開。統一された研修制度やキャリアパスが用意されていることが多い。
  • ドラッグストアチェーン: 調剤併設型店舗が主流。薬剤師は調剤業務に加え、OTC販売や店舗運営にも関わる。
  • 製薬会社: 新薬やジェネリック医薬品の研究開発、製造、販売、情報提供などを行う。薬剤師は研究、開発、学術、MR、薬事、品質管理など多様な職種で活躍。
  • CRO(医薬品開発業務受託機関)/SMO(治験施設支援機関): 製薬会社から医薬品開発業務を受託したり、医療機関での治験を支援したりする専門企業。CRA(臨床開発モニター)やCRC(治験コーディネーター)などとして薬剤師が活躍。
  • 医薬品卸売企業: 医薬品の安定供給と情報提供を担う。MS(医薬情報担当者/マーケティング・スペシャリスト)、管理薬剤師、学術担当などのポジションがある。
  • その他: 医療機器メーカー、化学メーカー、食品メーカー、化粧品メーカー、ヘルスケア関連のIT企業などでも、薬剤師の専門知識が求められる場合があります。

薬剤師が「株式会社」へ転職するメリット

株式会社への転職には、個人経営の薬局や一部の病院などと比較して、以下のようなメリットが期待できます。

経営の安定性と将来性

特に大手企業の場合、経営基盤が安定しており、倒産などのリスクが比較的低いと考えられます。また、企業として成長戦略を描き、事業拡大や新規分野への進出などを目指している場合が多く、将来性を感じやすいでしょう。

充実した福利厚生

社会保険完備は当然として、住宅手当、家族手当、退職金制度、財形貯蓄制度、従業員持株会、育児・介護休業制度や時短勤務制度、提携保養所の利用、社員割引など、福利厚生が手厚く整備されている企業が多い傾向にあります。

明確なキャリアパスと多様な選択肢

一般薬剤師からスタートし、管理薬剤師、薬局長、エリアマネージャー、ブロック長といった店舗・エリアのマネジメント職へ進む道や、本社部門(人事、教育研修、商品開発、店舗開発、経営企画など)へ異動する道など、多様なキャリアパスが用意されていることが多いです。企業薬剤師の場合は、研究職、開発職、学術職、薬事職など、専門性を極める道も広がっています。

体系的な教育・研修制度

新人向けの導入研修はもちろん、スキルアップのための専門研修、認定・専門薬剤師資格取得支援、マネジメント研修、e-ラーニングなど、継続的に学び、成長できる環境が整っている企業が多いです。

コンプライアンス体制の整備

法令遵守や個人情報保護、ハラスメント対策など、組織としてのコンプライアンス体制が比較的しっかりしているため、安心して働きやすい環境と言えます。

(企業の場合)調剤以外の専門スキル習得

製薬会社やCROなどでは、薬局や病院では経験できない研究開発、臨床開発、薬事、マーケティングといった専門分野のスキルを身につけることができます。

薬剤師が「株式会社」へ転職する際の留意点・デメリット

一方で、株式会社ならではの留意点や、人によってはデメリットと感じる可能性のある点も存在します。

組織のルールと個人の裁量

業務の標準化のため、マニュアルやルールが細かく定められていることが多く、個人の裁量で仕事を進めたいと考える人にとっては、窮屈に感じられる可能性があります。組織の方針に従うことが求められます。

異動・転勤の可能性

特に全国展開しているチェーン薬局や大手企業の場合、会社の辞令によって、店舗間や部署間の異動、あるいは転居を伴う転勤が発生する可能性があります。ライフプランを考える上で重要な要素となります。

経営方針と利益への意識

株式会社は営利企業であるため、常に売上や利益目標を意識した運営が行われます。職種によっては(特にドラッグストアやMR、MSなど)、個人や店舗にノルマが課される場合もあります。

組織の複雑さと人間関係

組織規模が大きくなるほど、部署間の連携や意思決定プロセスが複雑になったり、人間関係も多様になったりします。

画一的な評価制度の可能性

標準化された評価制度が導入されている場合、個々の細かな頑張りや貢献が、必ずしも給与や昇進に直結しないと感じる場面もあるかもしれません。

(ドラッグストアの場合)業務範囲の広さ

調剤業務だけでなく、OTC販売、品出し、レジ応対、清掃など、店舗運営に関わる幅広い業務を担当することが一般的です。調剤業務に専念したい場合はミスマッチになる可能性があります。

(企業の場合)臨床現場との距離

患者さんと直接関わる機会がほとんどなくなるため、「患者さんのために」という直接的なやりがいを感じにくくなる可能性があります。

「株式会社」への転職を成功させるための選び方のポイント

自分に合った株式会社を見つけるためには、以下の点を意識して情報収集と比較検討を行いましょう。

  • 企業の経営理念・ビジョン・文化: その企業が何を目指し、どのような価値観を大切にしているのか。自分の考え方や働き方の希望と合っているか。説明会や企業HP、社員のインタビュー記事などを参考にしましょう。
  • 事業内容と将来性: 主力事業は何か、今後の成長戦略はどうか、業界内でのポジションはどうかなどを調べ、将来性を判断します。
  • 具体的なキャリアパス: 入社後、どのようなステップでキャリアアップできる可能性があるのか、モデルケースや昇進・異動の基準などを確認します。
  • 教育・研修制度の内容: どのような研修プログラムが用意されているか、資格取得支援はどの程度かなど、自身の成長に繋がる制度かを確認します。
  • 福利厚生と待遇の詳細: 求人票だけでなく、面接やエージェントを通じて、給与体系(基本給、手当、賞与、昇給モデル)、休日休暇制度(年間休日数、有給取得率)、残業時間の実態、退職金制度、育児・介護支援制度などを具体的に確認します。
  • 職場の雰囲気と人間関係: 可能であれば、職場見学を依頼したり、転職エージェントに内部情報を聞いたりして、実際の働く環境を確認しましょう。
  • 異動・転勤の条件: 転勤の可能性はあるか、あるとすればどのくらいの頻度・範囲か、拒否することは可能かなどを事前に確認しておくことが重要です。

転職活動の進め方:株式会社を目指す場合

株式会社への転職を目指す場合、以下の点を意識して活動を進めると良いでしょう。

  • 自己分析の深化: なぜ薬局や病院ではなく「株式会社」なのか、その組織で何を成し遂げたいのかを明確にします。
  • 徹底した企業研究: 応募候補となる企業のビジネスモデルや強み、業界での位置づけなどを深く理解します。IR情報(投資家向け情報)なども参考になります。
  • 企業求人に強いエージェントの活用: 非公開求人の紹介や、企業ごとの選考対策(特に面接対策)、条件交渉などで大きな助けとなります。複数のエージェントを活用するのがおすすめです。
  • 応募書類と面接対策の強化: 企業の採用担当者の視点を意識し、自身の経験やスキルがその企業でどのように貢献できるかを、論理的かつ具体的にアピールできるように準備します。組織への適応力や協調性も重要な評価ポイントです。

まとめ:組織の力を活かすキャリアへ – 株式会社への転職

薬剤師にとって、「株式会社」への転職は、安定した経営基盤、充実した福利厚生、多様なキャリアパス、そして場合によっては調剤業務以外の専門性を追求できるなど、多くのメリットを持つ魅力的な選択肢です。

しかし、組織の一員として働く上でのルールや異動の可能性、利益追求といった側面も理解しておく必要があります。成功のためには、企業の理念や文化、働き方が自身の価値観やキャリアプランと合致するかを慎重に見極め、十分な情報収集と準備を行うことが不可欠です。

この記事が、株式会社への転職を考える薬剤師の皆様にとって、より良いキャリア選択のための一助となれば幸いです。

ABOUT ME
ライト
ライト
キャリアアドバイザー
人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
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