お役立ち情報

薬剤師の転職、忘れてはいけない「届出」と手続き:スムーズな移行のために

kusuri0530

薬剤師として新たなキャリアへの一歩を踏み出す転職。希望に満ちたスタートを切るためには、求人探しや面接対策だけでなく、それに伴う様々な「届出」や公的な手続きを正確に、そして滞りなく行うことが非常に重要です。手続きの種類やタイミングを事前に把握しておくことで、余計な不安を抱えることなく、新しい職場での業務に集中できます。

「薬剤師免許に関する届出は必要なの?」「退職時や入社時にどんな手続きがある?」「管理薬剤師になる場合は?」

この記事では、薬剤師が転職する際に知っておくべき主な届出と手続きについて、その内容や注意点を分かりやすく解説していきます。

【最重要】薬剤師免許に関する届出:本当に必要?

薬剤師の転職において、多くの方が気になるのが「薬剤師免許に関する届出は必要なのか?」という点でしょう。結論から言うと、単に勤務先が変わるだけでは、薬剤師名簿の登録事項変更届を提出する必要は「ありません」。

しかし、以下のケースに該当する場合は、変更が生じた日から30日以内に、住所地の保健所(一部地域では県庁の薬務主管課など)を通じて厚生労働大臣に「薬剤師名簿登録事項変更届」を提出することが義務付けられています。

  • 氏名に変更があった場合: 結婚や養子縁組などにより、戸籍上の氏名が変わった場合。
  • 本籍地都道府県名に変更があった場合: 例えば、他の都道府県に本籍を移した場合。(同一都道府県内での本籍地の変更の場合は届出不要です)
  • 性別に変更があった場合。

これらの変更があった際には、戸籍謄本または戸籍抄本(発行日から6ヶ月以内のもの)などの必要書類を添えて届け出る必要があります。

また、薬剤師免許証の記載事項(氏名や本籍地都道府県名など)に変更が生じ、免許証の書換えを希望する場合は、別途「薬剤師免許証書換え交付申請」を行うことができます。これは義務ではありませんが、身分証明として免許証を使用する機会が多い場合は、書き換えておくとスムーズです。

薬局・事業所における「管理薬剤師」の変更届

管理薬剤師として転職する場合、あるいは前職で管理薬剤師を務めていた場合には、以下のような届出が関係してきます。これは、主に薬局や店舗販売業、卸売販売業などの開設者(会社など)が行う手続きですが、薬剤師自身もその内容を理解しておくことが大切です。

  • 新たに管理薬剤師として就任する場合:
    • あなたが新しい勤務先で管理薬剤師になる場合、その薬局や営業所の開設者は、管轄の保健所などの行政庁へ「管理者変更届」を提出する必要があります。この際、あなたの薬剤師免許証のコピーや履歴書などの提出を求められることがあります。
    • 薬剤師は、原則として複数の薬局等で同時に管理薬剤師を兼務することはできません(兼務禁止)。例外的に許可されるケースもありますが、事前に確認が必要です。
  • 前職で管理薬剤師だった場合:
    • あなたが管理薬剤師を退任することになるため、前職の開設者は、後任の管理薬剤師を選任し、速やかに「管理者変更届」を提出しなければなりません。円満な退職と、後任者への業務引継ぎが非常に重要となります。

退職に伴う主な届出・手続き(社会保険・税金など)

現在の職場を退職する際には、主に社会保険や税金に関する手続きが発生します。

  • 健康保険・厚生年金の手続き:
    • 資格喪失: 退職日の翌日に、現在の職場の健康保険と厚生年金の資格を喪失します。
    • 新しい職場への入社日が決まっている場合: 通常、新しい職場で改めて健康保険と厚生年金に加入する手続きが行われます。空白期間が生じないように、入社日を調整することが大切です。
    • 退職後、すぐに入社しない場合(1日でも空白期間がある場合):
      • 国民健康保険への切り替え: お住まいの市区町村役場の窓口で、国民健康保険への加入手続きが必要です。退職時に会社から受け取る「健康保険資格喪失証明書」などが必要になります。
      • 国民年金への切り替え(第1号被保険者): 厚生年金から国民年金への切り替え手続きも、市区町村役場の窓口で行います。年金手帳または基礎年金番号通知書が必要です。
      • 健康保険の任意継続制度: 退職後も、一定の条件を満たせば、最大2年間、前職の健康保険を継続できる「任意継続被保険者制度」を利用することも可能です。保険料は全額自己負担となりますが、国民健康保険の保険料と比較検討して選択しましょう。手続きは、退職日の翌日から20日以内に、加入していた健康保険組合または協会けんぽで行います。
  • 雇用保険の手続き:
    • 離職票の受け取り: 退職する会社から「雇用保険被保険者離職票(離職票-1、-2)」を必ず受け取りましょう。これは、失業保険(基本手当)を申請する際に必要となります。
    • 失業保険(基本手当)の申請: 退職後、積極的に求職活動を行う意思があり、一定の被保険者期間などの受給資格を満たしていれば、ハローワークで手続きを行うことで失業保険を受給できます。ただし、再就職が既に決まっている場合は、原則として給付対象外となります。
    • 雇用保険被保険者証: これは入社時に会社から渡され、退職時に返却されるものではなく、本人が保管するものです。新しい職場へ入社する際に提出します。
  • 住民税の手続き:
    • 住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職後も支払い義務があります。退職する月によって、残りの住民税の支払い方法が変わってきます。
      • 1月1日から5月31日までに退職する場合: 最後の給与から、その年度の5月分までの住民税が一括で天引きされるのが一般的です。
      • 6月1日から12月31日までに退職する場合: 退職月分までの住民税は給与から天引きされ、残りの期間の住民税については、普通徴収(自分で納付書を使って支払う)に切り替えるか、最後の給与や退職金から一括で天引きしてもらうかを選択できる場合があります。
    • 詳細は、退職する会社の人事・経理担当者や、お住まいの市区町村役場に確認しましょう。
  • 源泉徴収票の受け取り:
    • その年の1月1日から退職日までの給与所得に関する「源泉徴収票」は、新しい職場での年末調整や、ご自身で確定申告を行う際に必ず必要となります。退職後、速やかに発行してもらうよう依頼しましょう。

新しい職場への入社時に必要な届出・提出書類

新しい職場へ入社する際には、一般的に以下のような書類の提出を求められます。入社前に会社から指示があるので、漏れなく準備しましょう。

  • 年金手帳(または基礎年金番号通知書)
  • 雇用保険被保険者証
  • 源泉徴収票(前職分)
  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 健康保険被扶養者(異動)届(扶養する家族がいる場合)
  • 給与振込先の届出書(銀行口座情報など)
  • 薬剤師免許証のコピー(場合によっては原本の提示を求められることも)
  • 身元保証書(企業によっては求められる場合があります)
  • 卒業証明書のコピー(新卒や第二新卒の場合など)
  • 健康診断書(入社前健診の結果など、企業から指示があった場合)
  • その他、誓約書や住民票記載事項証明書など、会社が指定する書類

入社当日には、雇用契約書の内容確認と締結、就業規則の説明、その他社内ルールのオリエンテーションなどが行われるのが一般的です。新しい職場での社会保険や雇用保険への加入手続きは、通常、会社側が行ってくれます。

届出・手続きをスムーズに進めるための一般的な注意点

一連の届出や手続きを円滑に進めるためには、以下の点に注意しましょう。

  • 就業規則の確認は必須: 退職に関する規定(退職申し出の期限、手続き方法、退職金の規定など)は、必ず事前に現職の就業規則で確認しておきましょう。
  • 書類の準備と管理は早めに、そして大切に: 必要な書類は、不備がないように早めに準備し、紛失しないように一箇所にまとめて大切に保管しましょう。重要な書類はコピーを取っておくと安心です。
  • 期限の確認と遵守: 各手続きには提出期限や申請期限が設けられています。遅れると不利益を被る場合もあるため、期限は必ず守りましょう。スケジュール管理をしっかり行いましょう。
  • 関係各所への早めの相談・確認: 不明な点や疑問点は、現職の人事担当者、新しい職場の人事担当者、お住まいの市区町村役場、保健所、ハローワークなどに、遠慮せずに早めに確認することが重要です。
  • 円満退職を心がける: 立つ鳥跡を濁さず。たとえ不満があって辞める場合でも、最後まで責任を持って業務に取り組み、丁寧な引継ぎを行うことが、社会人としてのマナーであり、業界内でのあなたの評判を守ることにも繋がります。退職時の手続き(書類の受け渡しなど)もスムーズに進むでしょう。

まとめ:計画的な「届出」と手続きで、気持ちよく新たなキャリアをスタート!

薬剤師の転職には、薬剤師免許に関するもの(特定の変更があった場合)、管理薬剤師としてのもの、そして社会保険や税金に関する一般的なものなど、いくつかの「届出」や手続きが伴います。特に、勤務先の変更だけでは薬剤師名簿の変更届は不要である点は、改めて確認しておきましょう。

一見複雑に感じるかもしれませんが、事前にどのような手続きが必要になるのかを把握し、必要な書類をリストアップし、計画的に準備を進めることで、スムーズに完了させることができます。

円満な退職と、しっかりとした入社準備は、新しい職場でのスタートを気持ちよく切るための大切なステップです。この記事を参考に、滞りなく手続きを進め、あなたの新たなキャリアが素晴らしいものとなることを心より願っています。

ABOUT ME
ライト
ライト
キャリアアドバイザー
人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
※当サイト記事はリンクフリーです。ご自身のサイトへ自由にお使い頂いて問題ありません。ご使用の際は、文章をご利用する記事に当サイトの対象記事URLを貼って頂ければOKです。
記事URLをコピーしました