お役立ち情報

薬剤師の転職とリモートワーク:新しい働き方の可能性を探る

kusuri0530

近年、働き方の多様化が進む中で、「リモートワーク」や「在宅勤務」といった場所に捉われない働き方への関心が高まっています。薬剤師の仕事は、患者さんとの対面でのコミュニケーションや調剤業務など、現場での対応が不可欠な場面が多いですが、実は薬剤師の専門知識やスキルを活かせるリモートワークの可能性も徐々に広がりつつあります。

「薬剤師でもリモートで働ける仕事はあるの?」「どんな職種なら可能なの?」「メリットや注意点は?」――。この記事では、薬剤師がリモートワークという新しい働き方を視野に入れて転職を考える際に知っておきたい現状、具体的な職種例、そして転職を成功させるためのポイントについて詳しく解説します。

薬剤師のリモートワーク:現状と広がる可能性

伝統的に、薬剤師の業務は薬局や病院といった物理的な場所と密接に結びついてきました。処方箋の受付、調剤、鑑査、そして患者さんへの服薬指導といったコア業務の多くは、対面あるいは現場での作業が基本です。

しかし、情報通信技術(ICT)の発展や、働き方改革の流れ、そして近年の社会情勢の変化などを背景に、薬剤師の業務においてもリモートワークが導入されたり、その可能性が模索されたりする動きが見られます。

  • オンライン服薬指導の解禁: 2020年の薬機法改正により、一定の条件下でオンライン服薬指導が認められるようになり、薬剤師が患者さんと遠隔でコミュニケーションを取りながら薬学的管理を行う道が開かれました。これは、リモートワークの可能性を広げる大きな一歩と言えます。
  • 特定の業務におけるリモート化: DI(医薬品情報)業務や学術業務、メディカルライティングなど、薬剤師の専門知識を活かしつつも、必ずしも対面である必要がない業務においては、以前からリモートワークが比較的導入しやすい環境にありました。
  • 働き方の柔軟性へのニーズ: 育児や介護との両立、地方にいながら都市部の企業で働くなど、薬剤師自身のライフスタイルやキャリアプランに合わせた柔軟な働き方へのニーズも高まっています。

ただし、患者さんの情報を取り扱うという特性上、情報セキュリティの確保や、円滑なコミュニケーション体制の構築、そして現行の法制度との整合性など、クリアすべき課題も存在します。

薬剤師がリモートワークを実現しやすい「薬局・病院以外の」職種・業務例

薬局や病院といった臨床現場以外では、薬剤師がリモートワークという働き方を選択しやすい職種や業務が比較的多く存在します。

企業(製薬・医療関連)

  • DI(医薬品情報)・学術担当: 最新の医薬品情報の収集・評価、文献調査、学術資料の作成、医療従事者からの専門的な問い合わせ対応(電話・メール中心)など、パソコンと通信環境があればリモートで遂行しやすい業務が多く含まれます。
  • メディカルライター・メディカルコピーライター: 薬学・医学の専門知識を活かして、論文、治験関連文書、医薬品の販促資材、患者さん向けの説明資料などを執筆・編集する仕事です。フリーランスとして活動する人も多く、場所を選ばない働き方がしやすい代表的な職種です。
  • 安全性情報管理(ファーマコヴィジランス): 副作用情報のデータ入力、文献からの情報収集、報告書作成の一部など、リモートワークで対応可能な業務があります。
  • 薬事関連業務: 医薬品や医療機器の承認申請に必要な書類作成、関連法規の情報収集など、デスクワーク中心の業務はリモートで行える部分があります。
  • MR(医薬情報担当者)の一部の活動: 医療機関への訪問が主な業務ですが、オンラインでの医師との面談、情報提供資料の作成、社内報告業務などはリモートで行われるケースが増えています。(完全リモートは稀です)
  • 臨床開発関連(CRA:臨床開発モニター、DM:データマネジメントなど一部): 治験データの入力・確認作業、報告書の作成、オンラインでの会議参加など、プロジェクトの状況や企業の体制によってはリモートワークが可能な場合があります。

医療系IT・情報サービス企業

  • 医療情報システムの開発サポート・カスタマーサポート: 電子薬歴システムや調剤支援システムなどの開発に関わる業務の一部や、導入施設からの問い合わせ対応(電話・メール)など。
  • 医療系ウェブサイト・アプリのコンテンツ作成・編集: 薬剤師の専門知識を活かした、信頼性の高い医療・健康情報コンテンツの企画・作成。

教育・研修関連企業

  • オンライン研修の講師: 薬剤師や医療従事者向けのオンラインセミナーや研修で講師を務める。
  • e-ラーニング教材の開発・作成: 薬学関連の学習コンテンツの企画・執筆・監修。

その他

  • 薬剤師向け情報メディアの運営・記事執筆: 薬剤師向けのニュース記事やコラムの執筆、編集、サイト運営など。
  • オンライン健康相談サービス(今後の規制緩和やサービス形態による): 薬剤師がオンラインで一般の方からの健康相談に応じるようなサービスも、将来的に広がる可能性があります。

「薬局・病院」におけるリモートワークの可能性と現在の取り組み例

薬局や病院といった臨床現場においても、限定的ではありますが、リモートワークの導入やその可能性が検討されています。

  • オンライン服薬指導: 患者さんが自宅などにいながら、薬剤師からオンラインで服薬指導を受けられる仕組みです。特に、定期的な処方で状態が安定している患者さんや、遠隔地の患者さんへの対応などで活用が期待されています。
  • 在宅医療におけるICT活用: 訪問薬剤管理指導において、タブレット端末などを活用して医師やケアマネージャーとリアルタイムで情報共有を行ったり、患者さんのバイタルデータを遠隔でモニタリングしたりする取り組み。
  • DI(医薬品情報)業務の集約化とリモート対応: 大手調剤薬局チェーンや病院グループなどで、各店舗や施設からの専門的な問い合わせに対応するDI部門を特定の拠点に集約し、電話やオンラインシステムを通じてリモートで情報提供を行うケース。
  • 処方箋のオンライン受付や入力作業の補助: 患者さんが事前に処方箋画像を送信し、薬局側で準備を進めるシステムや、処方箋入力の一部を在宅の薬剤師が補助するような取り組みも一部で見られます。

現時点では、薬局や病院の薬剤師業務全体を完全リモートで行うのは難しいですが、特定の業務を切り出してリモート化したり、育児や介護中の薬剤師の働き方の選択肢として部分的に導入されたりするケースは、今後増えていく可能性があります。

薬剤師がリモートワークで働くメリット

リモートワークという働き方は、薬剤師にとって以下のようなメリットをもたらす可能性があります。

  • 通勤時間の削減と場所を選ばない働き方: 毎日の通勤時間を有効活用でき、満員電車のストレスからも解放されます。また、地方に住みながら都市部の企業の仕事に携わるなど、居住地にとらわれない働き方が可能になります。
  • ワークライフバランスの向上: 通勤時間がなくなることで、家事や育児、介護、趣味、自己啓発など、プライベートな時間を確保しやすくなり、仕事と生活の調和が取りやすくなります。
  • 集中できる作業環境の確保: 自宅など、自分が最も集中できる環境で仕事に取り組むことができます(ただし、環境や個人の性格による差はあります)。
  • 感染症リスクの低減: 通勤ラッシュやオフィスでの人との接触機会が減るため、感染症の罹患リスクを抑えることができます。

薬剤師がリモートワークで働く際の注意点・デメリット

多くのメリットがある一方で、リモートワークには以下のような注意点やデメリットも存在します。

  • コミュニケーションの難しさ: 対面での気軽な雑談や、相手の表情からニュアンスを読み取るといった非言語的なコミュニケーションが減るため、意識的にチャットやオンライン会議ツールなどを活用し、円滑な情報共有や意思疎通を図る努力が必要です。
  • 高度な自己管理能力の要求: 業務の進捗管理、時間管理、そして仕事へのモチベーション維持などを、自分自身で律して行う必要があります。
  • 情報セキュリティへの厳格な対応: 患者さんの個人情報や企業の機密情報などを取り扱う場合、自宅の作業環境における情報漏洩対策やセキュリティ意識の徹底が不可欠です。
  • 運動不足や孤独感の問題: 通勤がなくなることによる運動不足や、一人で作業することによる孤独感、社会との繋がりが希薄に感じる、といった心身への影響が出る可能性もあります。
  • 作業環境の整備: 自宅に、業務に集中できる静かな作業スペースや、安定した高速インターネット回線、必要なIT機器(PC、モニター、ヘッドセットなど)を自身で整える必要がある場合があります。
  • 評価制度の明確化: リモートワークにおける業務の成果や貢献度を、企業がどのように評価するのか、その基準が明確になっているかを確認する必要があります。
  • 薬剤師としての臨床スキルの維持: 特に患者さんと直接接する機会が減るリモートワークの場合、臨床現場での感覚やスキルを維持・向上させるために、意識的な学習や情報収集、研修への参加などがより重要になることがあります。

リモートワーク可能な薬剤師求人を探す方法とポイント

リモートワークが可能な薬剤師の求人を探す際には、以下の方法とポイントを押さえておきましょう。

  • 転職サイトの検索機能を活用: 「リモートワーク可」「在宅勤務可」「オンライン服薬指導」といったキーワードで検索したり、働き方の条件で絞り込んだりします。
  • 転職エージェントに相談する: 薬剤師専門の転職エージェントに、リモートワークを希望している旨を明確に伝えましょう。企業の詳細なリモートワーク導入状況や実績、求人市場の動向などについて情報を提供してくれる可能性があります。
  • 企業の採用ホームページをチェック: 企業の採用ページや会社概要ページで、働き方の柔軟性やリモートワーク制度の有無、導入事例などが紹介されているか確認します。
  • 求人票の記載内容を詳細に確認する: 「一部リモートワーク可」「フルリモート」「原則リモート、必要に応じて出社」など、リモートワークの範囲や頻度、条件などを具体的に確認することが重要です。
  • 面接でしっかりと確認する: 面接の際には、リモートワークの具体的な運用ルール、コミュニケーションツール、情報セキュリティ対策、評価制度、チームメンバーとの連携方法などについて、遠慮なく質問し、疑問点を解消しておきましょう。

リモートワークでの転職を成功させるためにアピールすべきスキル

リモートワークでの活躍を目指すなら、以下のスキルを意識的にアピールすると良いでしょう。

  • 高い自己管理能力と計画性: 指示待ちではなく、自ら目標を設定し、計画的に業務を遂行できる能力。
  • 優れたコミュニケーション能力(特にオンラインでの): 文章(メール、チャット)やオンライン会議ツールを効果的に活用し、誤解なく円滑に意思疎通できる能力。
  • ITリテラシーと新しいツールへの適応力: 様々なITツールやソフトウェアをスムーズに使いこなし、新しい技術にも積極的に対応できる能力。
  • 自律性と責任感: 上司や同僚が常にそばにいなくても、責任を持って主体的に業務を完遂できる能力。
  • (もちろん、これまでの薬剤師としての専門知識や経験、問題解決能力なども重要なアピールポイントです。)

まとめ:薬剤師のリモートワークは進化中!可能性を見据えたキャリア選択を

薬剤師の仕事におけるリモートワークは、まだ全ての業務で実現可能というわけではありませんが、特定の職種や業務においては、その可能性が着実に広がっています。特に、DI業務、メディカルライティング、オンライン服薬指導といった分野では、今後ますますリモートという働き方が浸透していくことが予想されます。

リモートワークには多くのメリットがある一方で、注意すべき点や求められるスキルも存在します。ご自身のライフスタイルやキャリアプラン、そして適性をしっかりと見極め、情報収集を丁寧に行いながら、あなたにとって最適な働き方を選択することが大切です。この記事が、薬剤師としての新しい働き方やキャリアを考える上での一助となれば幸いです。

ABOUT ME
ライト
ライト
キャリアアドバイザー
人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
※当サイト記事はリンクフリーです。ご自身のサイトへ自由にお使い頂いて問題ありません。ご使用の際は、文章をご利用する記事に当サイトの対象記事URLを貼って頂ければOKです。
記事URLをコピーしました