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大学病院の薬剤師の仕事内容とは?高度医療から研究・教育まで役割を徹底解説

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最先端の医療技術が集結し、難病治療や医学研究、そして未来の医療人育成という重要な使命を担う大学病院。薬剤師として、このような高度で専門的な環境で働くことに強い関心や憧れを抱く方も多いのではないでしょうか。「大学病院の薬剤師って、一般的な病院や薬局の薬剤師とどう違うの?」「具体的にどんな専門的な仕事をしているのだろうか?」「キャリアアップの道は?」といった疑問や期待をお持ちかもしれません。この記事では、大学病院で働く薬剤師の仕事内容を中心に、その多岐にわたる役割、求められるスキル、1日の流れ、そして働きがいやキャリアパスについて、詳しく解説していきます。

大学病院における薬剤師の役割と重要性

大学病院は、一般の市中病院とは異なり、主に以下の三つの大きな使命を持っています。

  1. 臨床(高度・先進医療の提供): 特定機能病院として、診断や治療が難しい疾患を持つ患者さんや、救命救急を必要とする重篤な患者さんに対し、専門性の高い高度な医療を提供します。
  2. 教育(医療人の育成): 医学部・歯学部・薬学部などの学生に対する臨床教育や、医師・歯科医師・薬剤師をはじめとする医療専門職の卒後研修(初期研修、専門研修、レジデント制度など)を行い、次世代の医療人を育成します。
  3. 研究(医学・薬学の発展): 新しい治療法や診断技術、医薬品の開発を目指した基礎研究や臨床研究(治験を含む)を推進し、医学・薬学の発展に貢献します。

このような大学病院において、薬剤師は薬物療法の専門家として、これらの三つの使命すべてに深く関与し、不可欠な役割を果たします。単に医薬品を調剤するだけでなく、高度医療における複雑な薬物療法の設計・管理、チーム医療のキーパーソンとしての機能、未来の薬剤師や医療人を育てる教育者としての一面、そして新しいエビデンスを創出する研究者としての一面も併せ持つのです。

大学病院薬剤師の主な仕事内容 – 多岐にわたる専門業務

大学病院で働く薬剤師の仕事内容は非常に幅広く、高度な専門性が求められます。主な業務分野を具体的に見ていきましょう。

高度な調剤業務・注射薬無菌調製

  • 処方箋監査と調剤: 入院患者さんや外来患者さんから発行される処方箋に対し、薬学的観点から極めて厳密な監査(用法・用量、相互作用、重複投与、禁忌、アレルギー歴、腎機能・肝機能に応じた投与量調節など)を行います。特に大学病院では、特殊な薬剤や未承認薬(医師主導治験など)、あるいは複雑な処方内容に接する機会が多く、より深い知識と慎重な判断が求められます。調剤業務においても、散剤・水剤の精密な計量・混合、軟膏の混合、一包化といった一般的な業務に加え、院内製剤(市販されていない特殊な薬剤を院内で調製するもの)の調製も行います。
  • 注射薬の無菌調製: 特に大学病院では、高カロリー輸液(TPN)や抗がん剤、免疫抑制剤、特殊な抗菌薬といった、無菌的な取り扱いが必須である注射薬の混合調製業務が重要となります。クリーンベンチや安全キャビネットといった専用の設備を用い、厳格な無菌操作技術と曝露対策のもと、患者さん一人ひとりに合わせた注射薬を正確に調製します。

専門的な病棟薬剤業務・薬剤管理指導

多くの大学病院では、薬剤師が各診療科の病棟に常駐または担当薬剤師として配置され、入院患者さんの薬物療法に直接的かつ積極的に関与します(病棟薬剤業務、薬剤管理指導業務)。

  • ベッドサイドでの服薬指導: 患者さんのベッドサイドを訪問し、処方された薬剤の効果、副作用、正しい服用方法、生活上の注意点などを、患者さんの状態や理解度に合わせて丁寧に説明します。
  • 持参薬の確認・評価: 入院時に患者さんが持参した薬剤(他の医療機関で処方された薬やOTC医薬品、サプリメントなど)の内容を詳細に確認し、入院中の治療薬との重複や相互作用、アレルギー歴などを評価し、医師や看護師と情報を共有します。
  • 副作用のモニタリングと早期対応: 患者さんの状態を注意深く観察し、検査値の変動や訴えから副作用の兆候を早期に発見し、重篤化を防ぐための対応(医師への報告・処方提案など)を行います。
  • TDM(治療薬物モニタリング)に基づく投与設計: 特定の薬剤(抗てんかん薬、免疫抑制剤、一部の抗菌薬など)について、薬物血中濃度を測定・解析し、その結果に基づいて個々の患者さんに最適な投与量や投与間隔を医師に提案し、効果的かつ安全な薬物療法を支援します。
  • 医師や看護師との回診同行・処方設計への参画: 担当診療科の医師の回診に同行し、薬学的観点から患者さんの状態を評価したり、治療方針の検討や処方設計に積極的に参画したりします。
  • 退院時服薬指導と地域連携: 退院する患者さんに対し、退院後の薬物療法がスムーズに継続できるよう、薬の自己管理方法や注意点を指導し、必要に応じて地域の調剤薬局やかかりつけ医と情報を共有(退院時薬剤情報連携)します。

チーム医療への積極的な参加

大学病院では、様々な専門分野の医療スタッフが連携して患者さんの治療にあたる「チーム医療」が推進されており、薬剤師もその重要な一員として専門性を発揮します。

  • ICT(Infection Control Team:感染制御チーム): 院内感染の防止と対策のため、抗菌薬の適正使用推進、感染症サーベイランス、院内ラウンド、手指衛生の指導などを行います。
  • NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム): 経口摂取が困難な患者さんや栄養状態の悪い患者さんに対し、医師、看護師、管理栄養士などと共に、最適な栄養療法(経腸栄養、経静脈栄養(TPN)など)の計画・実施・評価に関わります。
  • 緩和ケアチーム: がん患者さんなどの身体的・精神的苦痛を和らげるため、医療用麻薬をはじめとする薬剤の適切な選択・使用、副作用対策、患者さんや家族への精神的サポートなどを行います。
  • 褥瘡対策チーム、糖尿病療養指導チーム、がん化学療法チーム、移植医療チームなど: その他、様々な疾患領域や特定の医療行為に関する専門チームに参画し、薬物療法の専門家としての役割を果たします。
  • カンファレンスでの活動: 各チームの定期的なカンファレンスに参加し、患者さんの状態評価、治療効果の判定、副作用の検討、今後の治療方針の決定などにおいて、薬学的観点から積極的に意見を述べ、情報提供を行います。

DI(医薬品情報)業務・医薬品管理

  • 最新かつ正確な医薬品情報の収集・評価・提供: 国内外の学術論文、学会発表、製薬会社からの情報、公的機関からの通知などを常に収集し、その情報の信頼性や重要性を評価・整理した上で、院内の医師、看護師、他の薬剤師、そして時には患者さんに対し、必要な情報を分かりやすく的確に提供します。院内向けにDIニュースを発行したり、医薬品に関する勉強会を企画・開催したりすることも重要な業務です。
  • 院内採用医薬品の選定・評価: 病院内で使用する医薬品を選定・評価し、採用薬リスト(フォーミュラリー)の作成・運用に関与します。薬効、安全性、経済性、供給安定性などを総合的に比較検討します。
  • 医薬品の厳格な品質管理・在庫管理: 院内で使用される多種多様な医薬品(特に注射薬や特殊な管理が必要な薬剤)の品質を適切に保ち、必要な時に必要な薬が安全に供給できるよう、厳格な在庫管理(温度管理、使用期限管理、ロット管理など)と発注業務を行います。麻薬、向精神薬、毒薬、劇薬といった特殊な医薬品については、法律に基づいた特に厳重な管理が求められます。

治験関連業務

新しい医薬品や治療法の開発に不可欠な臨床試験(治験)において、薬剤師は治験薬の管理を中心に重要な役割を担います。

  • 治験薬の厳格な管理: 治験依頼者(製薬会社など)から供給される治験薬(有効成分を含む薬、プラセボ(偽薬)など)の受け入れ、数量確認、品質確認、そして治験実施計画書(プロトコル)やSOP(標準作業手順書)に従った厳格な保管管理(温度管理、施錠管理、盲検性の維持など)を行います。
  • 治験薬の調剤・払い出し・回収: プロトコルに基づき、治験薬を被験者(治験に参加する患者さん)ごとに正確に調製・払い出し、使用済み治験薬や未使用治験薬を回収し、適切に記録・管理・返却または廃棄します。
  • 被験者への説明補助・同意取得支援: 治験責任医師や治験分担医師が行う、被験者に対する治験内容の説明(インフォームド・コンセント)に同席し、薬学的観点から治験薬の用法・用量、期待される効果、予測される副作用などを分かりやすく補足説明し、被験者が十分に理解した上で治験参加に同意できるようサポートします。
  • 治験審査委員会(IRB/IEC)との連携: 治験の倫理的・科学的妥当性を審査する院内の治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board または IEC:Independent Ethics Committee)に対し、治験薬に関する情報提供や、必要な資料の提出などを行います。
  • CRC(Clinical Research Coordinator:治験コーディネーター)としての活動: 大学病院によっては、薬剤師がCRCの役割を担い、治験全体の円滑な運営をサポートすることもあります。

教育・研修活動

大学病院は医療人の育成機関でもあるため、薬剤師も教育・研修に深く関わります。

  • 薬学部学生の実務実習指導: 薬学部の学生(5・6年生)が病院で行う実務実習において、認定実務実習指導薬剤師として、学生の指導・評価、実習計画の作成などを行います。
  • 新人薬剤師・薬剤師レジデントの教育・指導: 新たに採用された薬剤師や、卒後臨床研修(レジデント)中の薬剤師に対し、OJT(On-the-Job Training)や講義、症例検討などを通じて、臨床薬剤師としての知識・技術・態度の育成をサポートします。
  • 院内医療スタッフへの医薬品研修: 医師、看護師、その他の医療スタッフに対し、新しい医薬品の情報、副作用対策、医療安全に関する知識など、医薬品の適正使用に必要な研修会や勉強会を企画・実施します。

臨床研究・学術活動

大学病院の薬剤師は、日々の臨床業務から生じる疑問(クリニカルクエスチョン)を解決するため、あるいはより良い薬物療法を追求するために、臨床研究や学術活動にも積極的に取り組みます。

  • 臨床研究の計画・実施・データ解析: 自身の専門分野や興味のあるテーマに基づき、倫理委員会の承認を得て臨床研究を計画・実施し、得られたデータを統計学的に解析・評価します。
  • 学会発表・論文執筆: 研究成果を国内外の薬学会や医学会で発表したり、学術雑誌に論文として投稿したりすることで、新しいエビデンスを創出し、医療の発展に貢献します。

大学病院薬剤師の1日の流れ(例:病棟担当薬剤師の場合)

大学病院で働く薬剤師の1日は、担当する業務(病棟、外来、DI、注射薬調製、治験など)や診療科、そしてその日の状況によって大きく異なります。ここでは、ある病棟を担当する薬剤師の一般的な1日を例としてご紹介します。

  • 午前(朝礼・情報共有~病棟業務・調剤):
    • 朝礼・情報共有: 薬剤部全体の朝礼や、担当病棟の医療チーム(医師、看護師など)とのミーティングで、夜勤者からの申し送り、入院患者さんの状態変化、当日の手術予定や重要な検査、薬剤に関する注意点などを共有。
    • 持参薬確認・処方箋監査: 新規入院患者さんの持参薬を確認・評価し、入院中の処方内容との重複や相互作用をチェック。病棟で発行された処方箋を薬学的観点から監査。
    • 注射薬の調製・払い出し: 当日投与される注射薬(特に抗がん剤やTPNなど、個別の無菌調製が必要なもの)の調製業務、あるいは調製された注射薬の病棟への払い出し。
    • 医師との回診同行・処方提案: 担当診療科の医師の回診に同行し、患者さんの状態を薬学的視点から評価し、薬物療法に関する情報提供や処方提案を行う。
    • ベッドサイドでの服薬指導・副作用モニタリング: 入院患者さんのベッドサイドを訪問し、処方された薬剤の説明、副作用の確認、服薬状況のチェック、患者さんや家族からの相談対応など。
  • 昼休憩: スタッフ間で交代で休憩。時には製薬会社主催のランチョンセミナー(昼食付きの勉強会)に参加することも。
  • 午後(カンファレンス・DI業務~教育・研究など):
    • 多職種カンファレンスへの参加: NST、ICT、緩和ケアチームといった専門チームのカンファレンスや、担当診療科の症例検討会に参加し、薬学的観点から意見を述べ、治療方針の決定に貢献。
    • 退院時服薬指導: 退院が決まった患者さんに対し、退院後の薬の自己管理方法、注意点などを丁寧に指導し、必要に応じて地域のかかりつけ薬局へ情報提供。
    • DI(医薬品情報)業務: 医師や看護師からの医薬品に関する問い合わせ対応、最新の学術論文やガイドラインの調査・評価、院内向けDIニュースの作成など。
    • 薬学生・レジデント薬剤師への指導: 担当している薬学生やレジデント薬剤師に対し、病棟業務や症例検討を通じて教育・指導。
    • 臨床研究・学会発表準備: 自身の研究テーマに関するデータ収集・解析、学会発表用のスライド作成、論文執筆など。
    • 委員会活動: 所属する院内の委員会(医療安全管理委員会、薬事委員会、倫理委員会など)の会議に出席。
  • 夕方~(記録整理・翌日準備など):
    • その日の業務記録(薬歴、DI記録、カンファレンス議事録、研究ノートなど)の整理と最終確認。
    • 翌日の注射薬調製の準備や、担当患者さんの情報整理。
    • 当直薬剤師への申し送り事項の確認・伝達。
    • (緊急呼び出しやオンコール対応がある場合は、勤務時間外でも対応が必要になることもあります。)

大学病院で働く薬剤師に求められるスキルと知識

大学病院という高度な医療を提供する場で薬剤師として活躍するためには、薬学的な専門知識はもちろんのこと、以下のような多岐にわたるスキルと資質が求められます。

  • 幅広い疾患と薬物療法に関する高度な専門知識: 内科系、外科系、小児科、精神科、がん、感染症、移植医療、再生医療といった、大学病院で扱われる多種多様な疾患と、それらに対する最新かつ専門的な薬物療法(薬理作用、副作用、相互作用、薬物動態、投与設計など)に関する深い知識。
  • 特定の専門分野における深い知識と経験: 自身の専門分野(例:がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、NST専門療法士など)を確立し、その分野でリーダーシップを発揮できるレベルの知識と経験。
  • チーム医療を推進するための卓越したコミュニケーション能力と協調性: 医師、看護師、その他の医療スタッフ、そして患者さんやその家族と、それぞれの立場や知識レベルを理解し、円滑かつ効果的に意思疎通を図り、信頼関係を構築し、チームの一員として協調して目標を達成する能力。
  • 臨床研究を遂行するための能力: 研究デザインの立案、倫理的配慮、データ収集・統計解析、論文作成、学会発表といった、臨床研究を計画・実施し、その成果を科学的に発信するための能力。
  • 教育・指導能力: 後進の薬剤師や薬学生に対し、自身の知識や技術を効果的に伝え、その成長をサポートする能力。
  • 最新の医療情報やエビデンスを収集・評価・活用する能力: 国内外の学術論文、診療ガイドライン、学会発表、公的機関からの通知などを常にチェックし、その情報の信頼性や臨床的意義を批判的に吟味(クリティカルアプレイザル)し、日々の業務や研究に活かす能力。
  • 論理的思考力、問題解決能力、批判的吟味能力: 複雑な臨床上の課題や、矛盾する情報に直面した際に、論理的に思考し、多角的な視点から問題を分析し、科学的根拠に基づいて最適な解決策や判断を導き出す能力。
  • 高い倫理観と強い責任感: 人の生命と健康に直接関わる専門家として、常に高い倫理観を持ち、患者さんの権利を尊重し、自身の業務に強い責任感を持って取り組む姿勢。
  • 語学力(特に英語): 最新の医学・薬学情報の多くは英語で発表されるため、英語の論文を読解する能力は必須です。また、国際学会での発表や、海外の研究者との共同研究、国際共同治験への参加などを目指す場合は、高度な英語コミュニケーション能力(会話、プレゼンテーション)も求められます。

大学病院で薬剤師として働く魅力とやりがい

大学病院で薬剤師として働くことには、他の職場では得られない多くの魅力と、大きなやりがいがあります。

  • 最先端の医療・薬物療法への関与: 常に進化し続ける医療の最前線に身を置き、最新の治療法や新しい医薬品、先進的な医療技術に触れ、それらを実践的に学ぶことができます。
  • 専門性の高い多様な症例経験: 一般の市中病院や薬局では経験できないような、複雑な疾患や難治性の症例、希少疾患の患者さんの薬物療法に深く関与することで、薬剤師としての知識・スキルを飛躍的に向上させることができます。
  • チーム医療の中核メンバーとしての貢献実感: 多職種と緊密に連携し、それぞれの専門性を尊重し合いながら、患者さんにとって最善の治療方針を共に考え、決定していくプロセスに、薬剤師として主体的に関与し、その貢献を実感できます。
  • 教育者としての役割と喜び: 未来の薬剤師である薬学生や、キャリアをスタートさせたばかりの新人薬剤師・レジデント薬剤師を指導・育成し、その成長を間近で見守ることは、大きな喜びとやりがいをもたらします。
  • 研究者としての新たなエビデンス創出への貢献: 日々の臨床業務から生まれた疑問や課題をテーマに臨床研究を行い、その成果を学会や論文で発表することで、新しい薬学的知見やエビデンスを創出し、医療全体の発展に貢献できます。
  • 認定薬剤師・専門薬剤師への道とキャリアの深化: 大学病院は、各種の専門薬剤師・認定薬剤師の研修施設となっていることが多く、資格取得を目指しやすい環境です。専門性を高めることで、その分野のスペシャリストとしてのキャリアを深く追求できます。
  • 比較的安定した雇用環境と福利厚生: 特に国立大学病院や公立大学病院では、公務員(またはそれに準じた)身分として、安定した雇用と充実した福利厚生(共済組合制度、退職金制度、育児・介護休業制度など)のもとで働くことができます。私立大学病院も、多くは学校法人としてのしっかりとした基盤があります。

大学病院で薬剤師として働く際の大変さ・注意点

魅力的な側面が多い一方で、大学病院で働く際には以下のような大変さや注意点も理解しておく必要があります。

  • 常に求められる高度な専門知識・スキルと継続的な学習: 日々進歩する医療に対応するため、常に最新の知識を学び続け、自身の専門性を高めていく努力が不可欠です。業務時間外の自己学習や学会参加なども必要となることが多いです。
  • 業務量の多さと多忙な日々: 急性期医療や救急医療を担い、また教育・研究活動も行うため、業務量が多く、多忙な日々を送ることが一般的です。時間外勤務や緊急呼び出し、オンコール対応が発生することもあります。
  • 複雑な症例や重篤な患者さんとの関わりによる精神的プレッシャー: 治療が困難な疾患や、生命の危機にある患者さんと接する機会が多いため、精神的なプレッシャーやストレスを感じることもあります。
  • 研究活動や教育活動へのコミットメント: 臨床業務に加え、研究活動(データ収集、論文執筆など)や教育活動(学生指導、講義準備など)への積極的な参加を求められることが多く、それらに対する時間的・精神的なコミットメントが必要です。
  • 初任給の水準の可能性: 一般的な調剤薬局やドラッグストア、製薬会社などと比較して、大学病院の薬剤師の初任給は必ずしも高いとは限らない場合があります。長期的なキャリア形成と昇給を見据える必要があります。
  • 大規模組織特有の課題: 大規模な組織であるため、意思決定プロセスに時間がかかったり、部署間の連携調整に労力を要したり、あるいは人間関係に配慮が必要だったりする場面もあるかもしれません。

大学病院薬剤師のキャリアパスと給与の傾向

大学病院で働く薬剤師のキャリアパスは多様であり、個人の努力と志向によって大きく広がります。

  • キャリアパスの例:
    • 臨床のスペシャリスト: 特定の疾患領域(がん、感染症、循環器、精神科など)や業務分野(NST、ICT、緩和ケア、TDM、治験など)で専門性を深め、関連する専門薬剤師・認定薬剤師の資格を取得し、その分野のリーダーとして活躍する。
    • 薬剤部門の管理職: 主任薬剤師、係長、副薬剤部長、薬剤部長といった管理職へとステップアップし、薬剤部門全体の運営管理、人材育成、病院経営への参画などを担う。
    • 大学教員(臨床薬学分野など): 臨床経験や研究実績を活かして、大学の薬学部や医学部で教員となり、薬学教育や研究活動に専念する。
    • 製薬企業やCROへのキャリアチェンジ: 大学病院で培った高度な専門知識や臨床研究の経験を活かして、製薬会社の研究開発部門、メディカルアフェアーズ部門(MSLなど)、あるいはCRO(医薬品開発業務受託機関)へ転職し、新たなキャリアを築く。
  • 給与の一般的な傾向:
    • 大学病院の薬剤師の給与は、その設置主体(国立、公立、私立)によって給与体系が異なります
    • 初任給は、他の薬剤師の職場(特にドラッグストアや製薬会社)と比較して必ずしも高いとは限りませんが、経験年数や役職、専門薬剤師・認定薬剤師の資格取得などに応じて、着実に昇給していくのが一般的です。
    • 国立大学病院や公立大学病院では、国家公務員や地方公務員の給与規定(俸給表)に準じた、あるいは法人独自の規定に基づいた給与が支給され、各種手当(地域手当、扶養手当、住居手当、期末・勤勉手当(賞与)など)も充実しており、非常に安定しています。
    • 私立大学病院では、各学校法人の給与規定によりますが、一般的に大学の規模や経営状況、地域などによって給与水準に幅があります。
    • 専門薬剤師手当や役職手当、研究活動に対するインセンティブなどが、給与に影響を与える重要な要素となります。
    • 長期的に見れば、専門性を高め、キャリアアップを重ねることで、他の職場と比較しても遜色のない、あるいはそれ以上の高い給与水準を目指せる可能性があります。

まとめ

大学病院で働く薬剤師は、高度な医療の提供、未来の医療人の育成、そして医学・薬学研究の推進という、社会にとって極めて重要な三つの使命を担い、その薬学的専門性を多岐にわたる業務で最大限に発揮しています。その仕事内容は、複雑な薬物療法の管理、チーム医療への積極的な参画、治験業務、教育・研究活動など、非常に専門性が高く、常に最新の知識と技術を追求し続ける努力が求められます。

決して容易な道ではありませんが、医療の最前線で社会に大きく貢献し、薬剤師としてのキャリアを大きく発展させ、そして深い専門性を身につけることができる、非常にやりがいのある魅力的な仕事です。この記事が、大学病院で働く薬剤師の仕事内容についての理解を深め、ご自身のキャリアを考える上での一助となれば幸いです。

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黒岩満(くろいわみつる)
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キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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