薬剤師の採用コスト、その相場と内訳を徹底解説
薬局や病院にとって、優秀な薬剤師の確保は質の高い医療サービスを提供するための生命線です。しかし、採用活動には当然ながらコストがかかります。「薬剤師を一人採用するのに、一体いくらかかるのだろう?」と、採用単価について頭を悩ませる採用担当者の方も少なくないでしょう。
採用コストは、ただ費用をかければ良いというものではありません。費用対効果を最大化し、自院・自社にマッチした人材を獲得するためには、採用単価の相場やその内訳を正しく理解することが不可欠です。
この記事では、薬剤師の採用単価の目安から、コストの内訳、そして採用コストを効果的に活用するためのポイントまで、網羅的に解説します。
薬剤師の採用単価の相場は?
薬剤師の採用単価、つまり「1人の薬剤師を採用するためにかかる費用の総額」は、用いる採用手法によって大きく異なります。ここでは、主な採用手法ごとの費用相場を見ていきましょう。
採用手法 | 費用の目安 | 特徴 |
人材紹介サービス | 想定年収の20%~35% | 成功報酬型。質の高い候補者に出会いやすい。 |
求人広告 | 数万円~100万円以上 | 掲載期間や媒体で変動。広く応募者を集められる。 |
ダイレクトリクルーティング | 月額数万円~+成功報酬 | 企業側から直接アプローチ。潜在層にも届く。 |
自社採用サイト・リファラル | ほぼ0円~ | 外部コストを抑えられるが、時間と手間がかかる。 |
人材紹介サービスを利用した場合、採用する薬剤師の理論年収に対する料率で手数料(成功報酬)が発生するのが一般的です。例えば、年収500万円の薬剤師を料率25%で採用した場合、125万円が採用コストとなります。専門的なスキルや管理職経験を求める場合は、料率が高くなる傾向にあります。
求人広告は、掲載する媒体やプランによって費用が大きく変動します。数万円から始められるものもあれば、数十万円、数百万円かかるものまで様々です。多くの薬剤師の目に触れる機会を作れますが、必ずしも応募や採用に繋がる保証はありません。
近年注目されているダイレクトリクルーティングは、データベースに登録している薬剤師に企業側から直接アプローチできるサービスです。月額利用料に加えて、成功報酬が発生するケースが多いです。
最もコストを抑えられるのが、**自社の採用サイトやリファラル採用(社員紹介)**です。しかし、これらの方法は効果が出るまでに時間がかかったり、そもそも応募者を集めるのが難しかったりするという側面もあります。
無駄にしないために知っておきたい採用コストの内訳
採用コストは、外部に支払う「外部コスト」と、社内で発生する「内部コスト」の2つに大別されます。コスト管理を適切に行うためには、両者を正しく把握することが重要です。
外部コスト
外部コストは、採用活動のために社外のサービスや業者へ支払う費用のことです。
- 人材紹介会社への成功報酬: 採用決定時に支払う費用。採用単価の中で最も大きな割合を占めることが多いです。
- 求人広告の掲載費用: 求人サイトや求人情報誌への広告出稿にかかる費用です。
- ダイレクトリクルーティングサービスの利用料: サービスの月額利用料や成功報酬などが含まれます。
- 合同説明会やイベントへの出展費用: ブースの出展料やパンフレットなどの作成費用が該当します。
内部コスト
内部コストは、採用活動に伴って社内で発生する費用や時間的コストを指します。目に見えにくいコストですが、決して無視できません。
- 採用担当者の人件費: 募集要項の作成、書類選考、面接、候補者との連絡など、採用活動に費やす社員の給与や労働時間です。
- リファラル採用のインセンティブ: 社員が知人や友人を紹介し、採用に至った場合に支払う報奨金です。
- その他諸経費: 面接時の交通費、候補者との会食費、採用ツールの導入費用などが含まれます。
採用単価を考える際は、外部コストだけでなく、こうした内部コストも考慮に入れることで、より正確な費用対効果を測定できます。
採用手法ごとのメリット・デメリットを比較
どの採用手法が最適かは、企業の状況や求める人物像によって異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に合った方法を選びましょう。
人材紹介サービス
- メリット: 採用のプロであるキャリアアドバイザーが、要件に合った候補者をスクリーニングしてくれるため、ミスマッチが起こりにくいです。非公開で募集を進めたい場合にも適しています。
- デメリット: 採用単価が他の手法に比べて最も高くなる傾向があります。
求人広告
- メリット: 潜在的な転職希望者も含め、幅広い層の薬剤師にアプローチできます。企業の知名度向上にも繋がります。
- デメリット: 応募者の質にばらつきが出やすく、選考に手間がかかることがあります。採用に至らなくても掲載費用が発生します。
ダイレクトリクルーティング
- メリット: 企業側が求めるスキルや経験を持つ人材に直接アプローチできるため、効率的です。転職をまだ具体的に考えていない「潜在層」にもアプローチ可能です。
- デメリット: 候補者の選定からスカウトメールの作成・送信まで、運用に手間とノウハウが必要です。
自社採用サイト・リファラル採用
- メリット: 外部業者への支払いがないため、採用単価を大幅に削減できます。特にリファラル採用は、社員からの紹介であるため定着率が高い傾向にあります。
- デメリット: すぐに効果が出るとは限らず、継続的な情報発信や社内制度の整備が不可欠です。
薬剤師の採用コストを抑え、効果を高めるポイント
単に費用を削るだけでは、採用の質が低下し、かえって将来的なコスト増に繋がる恐れがあります。ここでは、採用の質を維持・向上させながら、コストを最適化するためのポイントをご紹介します。
- 採用計画を明確にするどのような経験やスキルを持つ薬剤師を、いつまでに、何名採用したいのかを具体的に定めることが第一歩です。求める人物像が明確になることで、最適なアプローチ方法が見え、無駄なコストを削減できます。
- 複数の採用手法を組み合わせる一つの手法に固執せず、それぞれのメリットを活かして複数を組み合わせることが有効です。例えば、急募のポジションは人材紹介サービスを活用しつつ、中長期的な視点で自社サイトやリファラル採用を強化するといった戦略が考えられます。
- 自社の魅力を積極的に発信する採用サイトやSNSなどを活用して、職場の雰囲気、働きがい、福利厚生といった自社の魅力を継続的に発信しましょう。これにより、企業のファンを増やし、応募に繋がりやすくなります。これは、どの採用手法を用いる上でも重要な土台となります。
- 採用後の定着率を高める採用コストは、採用して終わりではありません。早期離職が発生すれば、再び採用活動が必要となり、追加のコストが発生します。入社後のフォローアップや働きやすい環境づくりに力を入れ、定着率を高めることが、結果的に一人あたりの採用コストを抑えることに繋がります。
まとめ
薬剤師の採用単価は、用いる手法や求める人材によって大きく変動します。大切なのは、それぞれの採用手法の特性とコスト構造を理解し、自社の採用戦略に合った最適な方法を選択・組み合わせることです。
外部コストだけでなく、担当者の人件費といった内部コストにも目を向け、採用活動全体の費用対効果を検証していく視点が求められます。本記事でご紹介したポイントを参考に、ぜひ貴院・貴社の採用活動を成功に導いてください。