日々の疑問を未来の医療へ、病院薬剤師と臨床研究の世界
日々の病棟業務や調剤業務の中で、「なぜこの患者さまには、この薬が効きにくいのだろう」「もっと良い投与方法はないのだろうか」といった、臨床上の疑問(クリニカルクエスチョン)を抱いた経験は、多くの薬剤師がお持ちのことでしょう。その純粋な知的好奇心や患者さまを想う心を、未来の医療を創造する力へと昇華させる道、それが「臨床研究」です。ここでは、病院薬剤師が深く関わることのできる、臨床研究という専門性の高い世界についてご紹介します。
病院薬剤師が関わる臨床研究の形
病院薬剤師が臨床研究に関わる形は、大きく二つに分けられます。一つは、新しい医薬品の誕生に貢献する「治験」への関与です。治験薬の厳格な管理や、治験に参加される患者さまへの説明、関連部署との調整などを担う臨床研究コーディネーター(CRC)として、新薬開発の最前線を支える役割があります。もう一つは、薬剤師自らが主体となって行う研究活動です。日々の業務で感じた疑問をテーマに、データを収集・分析し、その成果を論文として発表したり、学会で報告したりします。
臨床研究がもたらす専門家としての成長
臨床研究に携わる経験は、病院薬剤師を専門家として大きく成長させてくれます。一つのテーマを深く掘り下げる過程で、特定の疾患や薬物療法に関する、極めて深いレベルの知識が身につきます。また、科学的根拠に基づいて物事を考察し、論理的に結論を導き出すというプロセスは、日々の臨床業務における判断力や問題解決能力を飛躍的に向上させます。そして何よりも、ご自身の研究成果が、未来の患者さまの治療に貢献するかもしれないという実感は、大きなやりがいと使命感を与えてくれます。
研究活動が活発な病院環境
このような臨床研究活動は、どの病院でも等しく行われているわけではありません。一般的に、大学病院やがんセンターといった高度な医療を提供する専門病院では、研究や教育が組織の重要な使命と位置づけられており、薬剤師が研究に携わる機会も豊富にあります。また、地域の基幹病院などにおいても、薬剤師の研究活動を積極的に支援する体制を整えている施設は増えています。
研究への道を拓くためのキャリア選択
臨床研究に挑戦したいという思いを現実のものにするためには、そのための環境が整った職場を選ぶことが最も重要です。研究活動への理解があるか、指導してくれる先輩薬剤師がいるか、学会参加への支援制度はあるかといった点は、入職前に確認すべき重要なポイントです。しかし、こうした内部の情報は、個人で収集するには限界があります。薬剤師専門の転職エージェントは、各病院の研究活動の実績や薬剤部の文化といった詳細な情報に精通しています。専門のキャリアアドバイザーに相談することで、あなたの知的好奇心を満たし、研究者としてのキャリアを拓くことができる最適な職場と出会うことができるでしょう。