病院薬剤師の「チーム医療」における役割|薬の専門家が果たす、かけがえのない貢献
現代の病院で行われる医療は、一人の医師が全ての判断を下す時代から、様々な専門家がそれぞれの知見を持ち寄り、一人の患者様を多角的に支える「チーム医療」の時代へと、大きく変化しました。このチーム医療の中で、病院薬剤師は、薬物治療に関する全ての責任を担う「薬の専門家」として、今や、なくてはならない存在となっています。この記事では、チーム医療における病院薬剤師の、具体的で、そして、かけがえのない「役割」について、詳しく解説していきます。
チーム医療における、薬剤師の基本的な立ち位置
どのような医療チームにおいても、病院薬剤師に共通する基本的な役割は、「薬物治療の安全性と有効性を最大化させること」です。医師が診断を下し、治療方針を決定するのに対し、薬剤師は、その治療方針に沿って、どのような薬を、どのような量で、どのような使い方をすれば、最も効果が高く、かつ、副作用のリスクを最小限に抑えられるのかを、薬学的視点から提案・実践します。医師や看護師からの、薬に関するあらゆる疑問に答える「院内の情報センター」としての役割も、チームを円滑に機能させる上で、非常に重要です。
栄養サポートチーム(NST)での役割
患者様の栄養状態を専門的に管理し、回復を支援する「栄養サポートチーム(NST)」では、薬剤師は、特に点滴で栄養を補給する際の、中心的な役割を担います。高カロリー輸液に含まれる、電解質やビタミン、微量元素の量を、患者様の血液データに基づいて、精密に計算・設計します。また、他の治療薬との配合変化や、相互作用についても、専門家として細心の注意を払います。
感染制御チーム(ICT)での役割
院内感染を防ぎ、全ての患者様が安心して治療を受けられる環境を守る「感染制御チーム(ICT)」においても、薬剤師の役割は不可欠です。特に、抗生物質の適正使用を推進することは、薬剤耐性(AMR)菌の出現を防ぐという、世界的な課題に取り組む、非常に重要なミッションです。個々の患者様への最適な抗生物質の選択や、投与量の設計(TDM)を通じて、感染症治療の効果を最大化させることに貢献します。
緩和ケアチームでの役割
がんなどの疾患に伴う、患者様の身体的・精神的な苦痛を和らげることを目的とする「緩和ケアチーム」では、薬剤師は、痛みのコントロールを専門的に担います。医療用麻薬をはじめとする、様々な鎮痛薬の特性を深く理解し、患者様一人ひとりの痛みの種類や強さに合わせて、最適な薬剤と使用法を選択します。また、薬による眠気や吐き気といった、不快な副作用を、最小限に抑えるための工夫も、患者様の生活の質(QOL)を維持する上で、非常に重要な役割です。
その「役割」を、真に全うできる病院とは
これまで見てきたように、病院薬剤師がチーム医療で果たす役割は、非常に専門性が高く、やりがいに満ちています。しかし、全ての病院で、薬剤師が、これほど主体的にチーム医療に関与できているわけではない、という現実も知っておく必要があります。薬剤師の専門性を、組織としてどれだけ尊重し、その能力を最大限に発揮できるような環境を整えているかは、病院の方針や文化によって、大きく異なります。
まとめ
チーム医療における病院薬剤師の役割とは、薬の専門家として、患者様の安全を守り、治療効果を高め、そして、他の医療スタッフを支える、まさに「薬物治療の司令塔」です。その責任は大きいですが、チームの一員として、患者様の回復に貢献できた時の喜びは、計り知れないものがあります。あなたのその高い専門性を、存分に発揮し、真にチームの一員として尊重される環境を見つけ出すために、ぜひ一度、各病院の内部事情に精通した、転職のプロフェッショナルに相談してみてはいかがでしょうか。