キャリアパスとキャリア形成:薬剤師が主体的に未来を築くために
薬剤師に求められる役割が、調剤業務から在宅医療、多職種連携へと大きく広がりを見せる現代。ご自身のキャリアについて深く考える機会が増えているのではないでしょうか。多様な選択肢があるからこそ、「将来、どのような自分になっていたいのか」という未来像を描き、そこへ至る道筋を主体的に築いていくことが、これまで以上に重要になっています。その際、「キャリア形成」と「キャリアパス」という二つの言葉の意味を正しく理解することは、ご自身の未来をより豊かに、そして確かなものにするための、重要な第一歩となります。
キャリア形成とは、ご自身の職業人生を築き上げるプロセス
まず、「キャリア形成」とは、ご自身が仕事を通じてどのような専門性を身につけ、どのような役割を担い、どのような価値観を実現していきたいかという、長期的な視点に立った、主体的な活動そのものを指します。それは、日々の業務を通じてスキルや経験を積み重ね、ご自身の職業人としての価値を高めていく、生涯にわたるプロセスです。キャリア形成の主体はあくまで「個人」であり、ご自身の価値観や目標に基づいて、どのような職業人生を送りたいかを設計し、築き上げていく行為そのものが、キャリア形成なのです。
キャリアパスとは、企業が示す成長の道筋
一方、「キャリアパス」とは、企業や組織が、所属する従業員に対して提示する、昇進や昇格、職務経験のモデルケースや道筋のことを指します。例えば、「一般薬剤師からスタートし、数年後には管理薬剤師、その後はエリアマネージャーへ」といったように、一つの組織の中でどのようなステップを経て成長していくことができるのかを示した、いわば「企業内の地図」のようなものです。キャリアパスは、企業が従業員の成長をどのように支援し、どのような人材を求めているかを示す、重要な指標とも言えます。
「形成」と「パス」の違いを理解し、キャリアを考える
この二つの言葉の最も大きな違いは、その主体が誰にあるかという点です。キャリア形成が「個人」を主体とした能動的な活動であるのに対し、キャリアパスは「組織」が主体となって提示する、成長のための道筋や制度です。つまり、ご自身がどのようなキャリアを形成していきたいかという目標(キャリアプラン)を描き、その目標を実現するための具体的な道筋として、企業が用意するキャリアパスを選択する、という関係性で捉えることができます。納得のいくキャリア形成のためには、ご自身のキャリアプランと、企業が提示するキャリアパスが、いかに合致しているかを見極めることが非常に重要になるのです。
主体的なキャリア形成を実現するための環境選び
ご自身が「専門性を高めたい」というキャリアプランを描いていたとしても、入社した企業にそのためのキャリアパスが用意されていなければ、理想のキャリア形成は困難になります。企業のキャリアパスを事前に知ることで、ご自身のキャリアプランと、企業が提供できる環境とが合致しているかを見極めることができ、長期的な視点を持って安心してキャリアを築いていくことが可能になります。多様なキャリアパスが用意されている企業は、それだけ社員一人ひとりの主体的なキャリア形成を支援する風土があることの証とも言えるでしょう。
専門家と共に、最適なキャリアの道筋を描く
ご自身のキャリア形成の方向性を明確にし、それに合致したキャリアパスを持つ企業を見つけ出すことは、一人では難しい場合もあります。特に、各企業が薬剤師にどのようなキャリアパスを用意しているのか、その昇進の基準や研修制度の実態といった詳細な内部情報は、個人で収集するには限界があるかもしれません。
そのような時、客観的な視点を持つ専門家への相談が、あなたの可能性を大きく広げます。薬剤師のキャリア市場に精通した転職エージェントのキャリアアドバイザーは、数多くの企業のキャリアパスに関する情報を持っています。ご自身の描くキャリアプランを共有し、対話する中で、その実現に最適な環境や、ご自身では気づかなかった新たな可能性を発見できることも少なくありません。ご自身の未来を描く上で、専門家の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。