服薬指導の会話例から学ぶ、患者様の信頼を得るコミュニケーション術
薬剤師の皆様にとって、患者様への「服薬指導」は、その専門性を発揮する上で最も重要であり、同時に最もやりがいのある対人業務の一つです。しかし、日々の業務の中で、「患者様にうまく説明できたか」「本当に理解してもらえただろうか」と、その難しさを感じる場面も少なくないでしょう。
「服薬指導の具体的な会話例を知りたい」「もっと患者様の信頼を得られるような話し方を学びたい」と、ご自身のコミュニケーションスキルに悩む薬剤師の方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、服薬指導の基本となる会話の構成例や、患者様の信頼を得るためのコミュニケーションのポイントについて解説します。
服薬指導の基本となる会話の構成例
質の高い服薬指導は、単なる一方的な情報伝達ではなく、患者様との双方向のコミュニケーションによって成り立ちます。基本的な会話の流れ(構成)を意識することで、必要な情報を漏れなく収集し、伝えるべき情報を確実に届けることができます。
まず「導入」として、患者様への挨拶と体調の確認などを行います。例:「こんにちは、〇〇様ですね。その後、体調はいかがですか」「お薬をお渡しする前に、大切なお話をいくつかさせてください」。
次に「情報収集(アセスメント)」です。患者様の状況を把握するために、質問を行います。例:「このお薬は初めてでいらっしゃいますか」「今、他に飲んでいるお薬や健康食品はございますか」「何かアレルギーはお持ちではないですか」。
そして「情報提供(説明)」に移ります。収集した情報に基づき、専門用語を避け、平易な言葉で説明します。例:「このお薬は、〇〇(効果)のためのお薬です」「飲み方は〇〇です」「特に気をつけていただきたいのは〇〇(副作用の初期症状など)です」。
最後に「確認とクロージング」で、患者様の理解度を確認し、不安を解消します。例:「ここまでで、何かご不明な点や、ご不安なことはございませんか」「お大事になさってください」。これが、基本的な服薬指導の会話例の骨格となります。
【状況別】アドヒアランス不良時の会話例
患者様が服薬をためらっていたり、飲み忘れが多かったりする場合、会話の進め方には特に配慮が必要です。「ちゃんと飲まないとダメですよ」といった一方的な指導(NG会話例)は、患者様の心を閉ざしてしまいます。
重要なのは「傾聴」と「共感」です。例:「(患者様の話を遮らずに聞き)そうだったんですね。お薬を飲むのが難しいと感じる理由は、何か思い当たりますか(例:飲む回数が多い、副作用が心配など)」「もしよろしければ、〇〇様が続けやすい方法を一緒に考えませんか(例:一包化の提案、服薬カレンダーの利用など)」。患者様を責めるのではなく、その背景にある原因を探り、具体的な解決策を共に考える姿勢が求められます。
【状況別】副作用が疑われる時の会話例
患者様が副作用かもしれないと不安を訴えてこられた場合、その不安を真正面から受け止めることが最初のステップとなります。
例:「それはご心配ですね。いつから、どのような症状が出ていらっしゃいますか」と、まずは具体的な状況を丁寧に傾聴します。その上で、「その症状が、今お飲みになっているお薬によるものかどうか、しっかり確認させていただきますね」と、薬剤師としてアセスメントを行う姿勢を伝えます。
必要に応じて、処方医への疑義照会や、具体的な対処法の提示(例:症状が出た場合の初期対応)を行い、患者様の不安を安心に変える会話が重要です。
会話例を実践できない「職場環境」という課題
これまで述べたような丁寧な服薬指導や会話例を、全ての薬剤師が実践したいと願っているはずです。しかし、現実には「そうしたくてもできない」というジレンマを抱えている方も多いのではないでしょうか。
例えば、「処方箋枚数が非常に多く、常に調剤業務(対物業務)に追われるばかりで、患者様一人ひとりと向き合う時間が物理的に全く取れない」といった職場環境です。
あるいは、「ブランクからの復帰や経験が浅く、服薬指導の会話に自信がないのに、十分な研修(OJT)や、先輩薬剤師からのフィードバックを得られる体制が整っていない」といった職場もあるかもしれません。
このような環境下では、薬剤師個人の努力だけで服薬指導のスキルを高め、理想の会話例を実践し続けることには限界があり、やりがいの低下に繋がってしまう可能性もあります。
会話スキルを活かせる職場への転職という視点
もし、皆様が「もっと患者様としっかり向き合いたい」「服薬指導のスキルを高め、専門性を発揮したい」という高い意欲をお持ちでありながら、現在の職場環境がそれを許さないと感じているのであれば、ご自身のキャリアプランを見直す良い機会かもしれません。
薬剤師の対人業務や専門性を高く評価し、その能力を最大限に発揮できる職場環境へ「転職」することも、前向きな解決策の一つです。
例えば、最新の調剤機器やシステムを導入して対物業務を徹底的に効率化し、薬剤師がアセスメントや服薬指導に集中できる体制を整えている企業や、研修制度が充実しており、服薬指導のロールプレイングなど、会話のスキルを体系的に学べる環境がある薬局などです。
理想の職場環境を見つけるための転職エージェント
とはいえ、求人票の文面だけでは、その薬局がどの程度「対人業務」に重きを置いているのか、調剤室の実際の忙しさや人員体制、研修制度の充実度といった「内部事情」を正確に把握することは困難です。
薬剤師専門の転職エージェントは、こうした各薬局や病院の内部事情(職場の雰囲気、残業時間、教育研修制度、対人業務への注力度など)に精通しています。
「服薬指導の会話スキルを磨ける環境で働きたい」「患者様とじっくり向き合える職場で、これまでの経験を活かしたい」といったご自身の希望や、現在の職場での悩みを専門のコンサルタントにご相談いただくことで、一般には公開されていない求人を含め、ご自身に最適な職場環境をご提案することが可能です。
ご自身の専門性を最大限に発揮し、薬剤師としてのやりがいを深めていくための一歩として、まずは転職エージェントに登録し、専門家の視点からアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。







