薬剤師の転職:「臨床開発」と「DM(データマネジメント)」というキャリア
薬剤師の皆様がご自身のキャリアプランを考える際、その活躍の場は調剤薬局や病院での臨床業務だけに限られるものではありません。皆様が薬学部で培った高度な専門知識と科学的思考は、製薬会社などにおける「臨床開発」という分野においても、人々の健康や医療の未来に貢献するための、非常に重要な役割を担っています。
特に、「臨床開発」プロセスの中で、新薬の承認申請の根幹となるデータを扱う「DM(データマネジメント)」という職種は、薬剤師の専門性を活かせるキャリアとして注目されています。この記事では、薬剤師が「臨床開発」および「DM」へ転職する際の、その具体的な仕事内容やキャリアの可能性について解説します。
「臨床開発」と薬剤師の役割
「臨床開発」とは、新薬の「種」が、最終的に国の承認を得るために不可欠な「臨床試験(治験)」を計画・実行・管理するプロセス全体を指します。このプロセスには、治験をサポートする臨床開発モニター(CRA)や、治験薬の管理、そして集められたデータを管理・解析する部門など、多くの専門職が関わっています。
「DM(データマネジメント)」の具体的な仕事内容
「DM(データマネジメント)」は、臨床開発プロセスの中でも、特に「データ」の品質と信頼性を担保する、極めて重要な役割を担う専門職です。
その主な仕事内容は、全国の医療機関(病院)で実施された臨床試験から集められた膨大な症例データ(例:検査値、血圧、有効性・安全性の評価結果など)を、コンピュータシステム(データベース)を用いて収集・管理・点検することです。
データの入力漏れや矛盾、異常値などがないかを厳密にチェック(データクリーニング)し、統計解析部門に渡せる、クリーンで信頼性の高いデータベースを構築することが最大のミッションとなります。
なぜ「DM」として薬剤師が求められるのか
「DM」の仕事は、単なるデータ入力作業ではありません。収集されたデータ(例:有害事象、併用薬)が、医学的・薬学的に妥当なものかどうかを判断する能力が求められます。
ここで、薬剤師の皆様が持つ医薬品に関する深い知識(薬理学、副作用、薬物動態など)や、臨床現場(病院や薬局)での経験が、データの意味を深く理解し、その妥当性を評価する上で非常に大きな強みとなります。
また、調剤業務や処方監査で培われた、ミスの許されない環境での「正確性」「緻密さ」、そして「監査能力」は、データの品質を保証する「DM」の業務適性と、非常に高くマッチします。
調剤経験からの転職は可能か
「DM」職への転職を考える際、「調剤薬局や病院での臨床経験しかないが、転職できるのだろうか」という不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
「DM」は、医療機関を訪問して回るCRAとは異なり、基本的には企業内でのデスクワークが中心となります。臨床開発の経験がなくても、薬剤師としての基礎知識と、データに対する強い責任感があれば、「未経験可」として挑戦できる求人が存在するケースもあります。
ただし、転職後は、専門的なデータベースソフトの操作や、臨床開発に関する法規(GCPなど)、統計に関する基礎知識など、新たに学ぶべきことも多くあります。
「DM」求人探しの難しさと転職エージェント
「臨床開発」部門、特に「DM」のような専門職の求人は、その専門性の高さから、調剤薬局などに比べて求人数自体が限定的です。また、企業の将来の戦略に関わる重要なポジションも多いため、一般の求人サイトには掲載されず、「非公開求人」として扱われることが非常に多くあります。
個人でこうした質の高い求人情報にアクセスし、ご自身の経験がどのように評価されるのか、また「未経験者への研修体制」は整っているのかといった内部事情を判断することは容易ではありません。
薬剤師専門の転職エージェントは、こうした一般には公開されていない企業(製薬会社、CRO:開発業務受託機関など)の「非公開求人」を多数保有している場合があります。また、各企業がどのような人材(スキル、経験、PCスキル、英語力など)を求めているかという詳細な背景や、職場の雰囲気、キャリアパスといった内部事情も把握しております。
「調剤経験しかないが、『臨床開発』や『DM』の仕事に挑戦できるか」といった、個別の具体的なご相談にも対応が可能です。薬剤師としての新たな可能性を広げ、専門性を活かしたキャリアを築くための一歩として、まずは転職エージェントに登録し、専門家の視点からアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。







