薬剤師転職の「給与交渉」。説得力を高める「エビデンス」とは
薬剤師として転職を考える際、ご自身のこれまでの経験やスキルが、次の職場でどれだけ評価されるのか、特に「給与」という形でどう反映されるのかは、非常に重要な関心事です。そして、より良い条件を目指す上で避けて通れないのが「給与交渉」です。しかし、ただ漠然と「これくらい欲しい」と希望を伝えるだけでは、交渉をスムーズに進めることはできません。薬剤師の皆様が日々の業務で「エビデンス(根拠)」を重視するように、給与交渉においても、その希望額を裏付ける客観的な「エビデンス」が不可欠となります。
なぜ給与交渉に「エビデンス」が必要なのか
採用担当者との給与交渉は、感情的に希望を伝える場ではなく、ご自身の「市場価値」を論理的に提示し、相手に納得してもらうための「話し合い」の場です。薬剤師の皆様がEBM(Evidence-Based Medicine)に基づき、客観的な根拠を持って薬物治療に貢献するのと同様に、ご自身の給与に関しても「エビデンス」に基づいた主張が求められます。「なぜ、その給与額が妥当であると考えるのか」という客観的な根拠(エビデンス)を示すことで、ご自身の希望は単なる「願望」から、説得力のある「要求」へと変わります。しっかりとした「エビデンス」を提示することは、ご自身のプロフェッショナルとしての姿勢を示すことにもつながり、採用担当者も真剣に検討する土台が整うのです。
薬剤師の給与交渉における「エビデンス」の具体例
では、薬剤師の「給与交渉」において、どのようなものが「エビデンス」となり得るのでしょうか。それは、ご自身の「専門性」「経験」、そして「市場価値」の3つの側面から考えることができます。これらを整理し、提示することが、交渉の説得力を高める鍵となります。
「エビデンス」としての専門性や資格
最も分かりやすく、客観的な「エビデンス」となるのが、ご自身の専門性を証明する「資格」です。例えば、「認定薬剤師」や「専門薬剤師」の資格(がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、在宅療養支援認定薬剤師など)は、その分野における高度な知識と技能を有していることの明確な「エビデンス」となります。こうした資格が、応募先の企業(病院・薬局)が求めている専門性と合致する場合、それは給与交渉における非常に強力な材料となります。
「エビデンス」としての実務経験と実績
資格だけでなく、ご自身がこれまでに培ってきた具体的な「実務経験」や「実績」も、重要な「エビデンス」です。例えば、「管理薬剤師」や「薬局長」としてのマネジメント経験(スタッフの教育・指導、店舗運営、売上管理など)は、組織貢献能力の「エビデンス」となります。また、「在宅医療に中心メンバーとして関わり、多職種連携を推進した経験」や、「病院の病棟業務で、医師へ積極的に処方提案を行った実績」なども、ご自身の高いスキルを具体的に示す「エビデンス」として提示できるでしょう。
もう一つの重要な「エビデンス」:市場価値
ご自身の内的な「エビデンス」(スキルや経験)に加えて、交渉を有利に進めるためには、外的な「エビデンス」、すなわちご自身の「市場価値」を客観的に把握しておくことが不可欠です。ご自身の経験やスキルが、現在の転職市場全体や、応募先の地域において、どれくらいの給与水準で評価されているのかという「相場観」です。この「市場価値」という客観的な「エビデンス」とご自身の希望額がかけ離れていては、交渉は難航してしまいます。
客観的な「エビデンス」を揃えることの難しさ
ご自身のスキルや経験を棚卸しすること(内的なエビデンス)はご自身でもある程度可能ですが、ご自身の「市場価値」という客観的な「エビデンス」を、一人で正確に把握することは非常に困難です。他の企業がどのような給与水準で、どのようなスキルを持つ薬剤師を求めているのか、といった情報は、個人ではなかなかアクセスできないためです。
「エビデンス」に基づいた交渉をサポートする存在
こうした「給与交渉」の難しさや、客観的な「エビデンス」の収集に不安を感じる場合、転職エージェントを活用するのも一つの有効な手段です。薬剤師専門の転職エージェントは、業界の給与相場や、各企業・病院の採用動向、どのようなスキルや経験が市場で高く評価されるのかといった豊富な情報(エビデンス)を持っています。ご自身の経験やスキルが市場でどれくらい評価されるのかを客観的に判断し、それを「エビデンス」として、ご自身に代わって企業側との給与交渉を行うことも可能です。ご自身の価値を正当に評価してもらうための「エビデンス」に基づいた交渉を、専門家と共に進めてみてはいかがでしょうか。