退職意向を伝えた後の「引き止め」と「給与交渉」。薬剤師が考えるべきこと

薬剤師として現在の職場に「退職」の意向を伝えた際、思いがけず上司や会社から「引き止め」にあう、という経験をされる方は少なくありません。特に、ご自身の働きぶりが評価されている場合や、人手不足の職場においては、「給与を上げるから残ってほしい」といった、具体的な「給与交渉」を伴う「引き止め」が行われるケースもあります。

なぜ企業は「給与交渉」で「引き止め」を図るのか？

企業側（病院・薬局側）が、「給与」という条件を見直してまで「引き止め」を図る背景には、いくつかの理由が考えられます。まず、薬剤師は専門職であり、特に経験豊富な人材の採用は容易ではありません。新たに人材を採用するには、求人広告費や採用に関わる人件費、そして入社後の教育コストなどがかかります。経験のあるあなたに辞められるよりも、多少給与を上げてでも残ってもらう方が、結果的にコストを抑えられる、という経営的な判断が働く場合があります。また、あなたの「退職」理由が、給与への不満にあると会社側が認識した場合、その不満を解消することが最も手っ取り早い「引き止め」策だと考えられることもあります。

「引き止め」の「給与交渉」に応じるメリットとデメリット

「給与交渉」を伴う「引き止め」は、一見すると魅力的な提案に思えるかもしれません。確かに、転職活動の手間が省け、慣れた環境で働き続けられる上に、給与が上がるのであれば、それに越したことはないと感じるでしょう。これが、「引き止め」に応じる最大のメリットと言えます。

しかし、その一方で、安易に「引き止め」に応じることには、いくつかのデメリットやリスクも潜んでいます。最も大きな問題は、ご自身が「退職」を決意した「根本的な理由」が、本当に「給与」だけだったのか、という点です。もし、給与以外の理由（例えば、業務内容への不満、人間関係、スキルアップの機会の欠如、過重労働など）が根底にあった場合、一時的に給与が上がったとしても、その根本原因が解決されなければ、いずれ再び同じ不満が募り、結局また「退職」を考えることになりかねません。

また、一度「辞めようとした人」というレッテルが貼られてしまい、その後の昇進や評価に影響が出たり、周囲との関係性が微妙になったりする可能性もゼロではありません。提示された給与アップが、その場しのぎの一時的なものであり、将来的な昇給が約束されているわけではない、というケースも考えられます。

「引き止め」の「給与交渉」に臨む前に考えるべきこと

もし、あなたが「引き止め」を受けている状況にあるなら、感情的になったり、目先の条件にすぐに飛びついたりする前に、一度立ち止まって冷静に考えることが非常に重要です。

• ご自身が本当に「退職」したいと思った「根本的な理由」は何だったのか？ それは今回の「給与交渉」で解決されるものなのか？
• 提示された給与額は、ご自身の現在の市場価値（他の同様のスキルを持つ薬剤師の給与水準）に見合っているか？
• その給与アップは、長期的に保証されるものなのか？ 将来的な昇給の見込みはどうか？
• 給与以外の労働条件（業務内容、残業時間、休日、人員体制など）に、改善の余地はあるのか？
• 一度「辞めたい」と伝えた職場で、本当に気持ちよく、モチベーションを維持して働き続けられるか？

これらの点を客観的に見つめ直し、ご自身の長期的なキャリアプランにとって、本当にその「引き止め」に応じることが最善の選択なのかを、慎重に判断する必要があります。

冷静な判断のために「第三者の視点」を

「引き止め」を受けている状況では、上司からの期待や、条件改善への期待感などから、なかなか客観的な判断が難しくなるものです。「給与交渉」という魅力的な提案に心が揺れ動くのも無理はありません。

このような時こそ、一度立ち止まって、ご自身のキャリアプランや市場価値を客観的に見つめ直すことが大切です。現在の転職市場における薬剤師の給与相場や、他の企業（病院・薬局）がどのような労働条件を提示しているのか、といった外部の情報を得ることも、冷静な判断を下すための助けとなります。

転職エージェントが提供できるサポート

私たち転職エージェントは、単に新しい転職先を探すお手伝いをするだけではありません。現在「引き止め」にあっている、あるいはこれから「退職」交渉に臨む薬剤師の皆様に対しても、キャリアの専門家として様々なサポートを提供できます。

例えば、現在の転職市場における客観的な給与相場や、様々な企業の労働条件に関する情報を提供することで、提示されている「引き止め」条件が妥当なものなのかどうかを判断するための材料を提供できます。また、ご自身のスキルや経験に基づいた「市場価値」を客観的に評価し、今後のキャリアプランについて一緒に考えるお手伝いも可能です。

もし、最終的に転職を決断された場合には、より良い条件（給与交渉を含む）での転職活動をサポートすることはもちろん、円満な「退職」に向けたアドバイスも行っています。

納得のいくキャリア選択のために

「引き止め」による「給与交渉」は、ご自身のキャリアを見つめ直す良い機会でもあります。目先の条件だけでなく、ご自身の長期的なキャリアプランにとって何が最善の選択なのかを、客観的な情報も踏まえながら、ぜひ慎重にご判断ください。その判断に迷われた際には、私たちキャリアの専門家にご相談いただくことも、有効な選択肢の一つです。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
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