薬剤師転職：「給与交渉に応じない」と言われたら？ その理由と対処法

薬剤師として転職活動を行う際、ご自身のこれまでの経験やスキルを正当に評価してもらい、納得のいく給与条件で働きたいと願うのは当然のことです。しかし、勇気を出して「給与交渉」を申し出た、あるいは転職エージェント経由で打診してもらった結果、応募先から「交渉には応じられない」という回答が返ってくるケースも、残念ながら存在します。

薬剤師転職と「給与交渉」の現実

薬剤師は専門職であり、その需要は安定していますが、だからといって全ての「給与交渉」が思い通りに進むわけではありません。転職における給与は、応募者のスキルや経験だけでなく、採用側の企業（病院・薬局）の事情も大きく影響します。そのため、「交渉に応じられない」という回答があったとしても、それは一概にご自身の評価が低いというわけではないのです。

なぜ「給与交渉に応じない」という回答になるのか

企業側が「給与交渉に応じない」と判断する背景には、いくつかの典型的な理由があります。最も多いのは、その企業（病院・薬局）に明確な「給与規定（給与テーブル）」が存在し、提示された金額がその規定における上限額である、というケースです。既存の社員との公平性や、組織全体のバランスを考慮した結果、特定の個人だけを例外扱いできない、という判断です。また、そのポジションに対してあらかじめ「採用予算」が厳密に決められており、それを超える提示が物理的に不可能だという理由も考えられます。

「交渉に応じない」と言われた時の考え方

「給与交渉に応じない」という回答を受けると、ご自身が評価されなかったのではないかと、落ち込んでしまうかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限りません。企業側としては、ご自身のスキルや経験を適正に評価した上で、「規定上の最大限の金額を最初から提示している」という場合もあります。この場合、それ以上の交渉の余地がないのは当然とも言えます。大切なのは、その提示額が、ご自身の客観的な市場価値や、その地域の薬剤師の給与相場と比べて、本当に見合っていないのかどうかを冷静に判断することです。

転職の「目的」は給与だけだったのかを再確認する

もし、提示された給与額がご自身の希望に満たず、交渉にも応じてもらえないという状況になったら、一度立ち止まって、ご自身が「なぜ転職しようと思ったのか」という原点に立ち返ってみることも重要です。転職の目的は、本当に「給与」だけだったのでしょうか。例えば、「スキルアップできる環境」「希望する業務内容（例：在宅医療、病棟業務）」「残業時間の削減」「通勤の利便性」「職場の雰囲気」といった、給与以外の条件を重視していた部分もあるのではないでしょうか。給与以外の条件がご自身の希望を満たしているのであれば、総合的に判断してその内定を受け入れる、という選択肢も当然あり得ます。

「給与交渉」をご自身で行うことの難しさ

ご自身で直接、応募先と「給与交渉」を行う場合、一度「応じない」と言われてしまうと、それ以上強く交渉を続けることは心理的にも難しく、かえって採用担当者との関係性をこじらせてしまうリスクも伴います。また、どのタイミングで、どのような根拠（エビデンス）をもって交渉すれば、相手が検討のテーブルについてくれるのか、その見極めは非常に困難です。

転職エージェントが「給与交渉」で果たす役割

転職エージェントは、こうしたデリケートな「給与交渉」を、皆様に代わって行う役割も担っています。薬剤師専門の転職エージェントであれば、業界の給与相場や、各企業・病院の給与規定、採用予算の傾向などを、これまでの実績からある程度把握している場合があります。そのため、最初から無理な交渉をするのではなく、ご自身の市場価値に基づいた、現実的かつ最大限の落としどころを探る交渉が可能です。

「応じない」理由を明確にすることもエージェントの役目

もし、交渉の結果として企業側から「応じない」という回答があった場合でも、エージェントはその「理由」を詳しく確認することができます。それが「規定上の上限」なのか、「現時点でのスキル評価」によるものなのか、その背景を知ることで、ご自身がその内定を受け入れるべきか、あるいは、他の選択肢を探すべきかという、次の判断を冷静に行うための重要な材料を得ることができます。

納得のいく転職を実現するために

ご自身の客観的な市場価値を把握し、給与交渉の戦略を立て、企業側の事情も汲み取りながら交渉を進めることは、ご自身一人では非常に難しい作業です。「給与交渉に応じない」と言われて困惑する前に、あるいは、そう言われた後の次の手を考えるためにも、キャリアの専門家に相談するという選択肢があります。転職エージェントは、給与だけでなく、皆様のキャリアプラン全体を見据えた上で、最適な転職活動をサポートするパートナーとなります。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
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