薬剤師転職の「給与交渉」。正直さが信頼を築く鍵
薬剤師として転職を考える際、給与条件はご自身のキャリアプランや生活において、非常に重要な要素の一つです。これまでのご自身の経験やスキルを正当に評価してもらい、納得のいく条件で新しいスタートを切りたいと願うのは当然のことでしょう。しかし、このデリケートな「給与交渉」の場で、少しでもご自身に有利な条件を引き出したいという思いから、「嘘」をついてしまうことを考えてしまう方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
「給与交渉」で「嘘」をつきたくなる心理
「給与交渉」で「嘘」をつきたくなる背景には、多くの場合、「現在の給与が、ご自身のスキルや働きに見合っていない」という悩みや、「現職の給与が低すぎる」という現実があります。「正直に現職の年収を伝えたら、次の職場の給与もそれを基準に低く設定されてしまうのではないか」という不安から、つい現職の給与額を実際よりも高く伝えてしまったり、交渉を有利に進めるために「他社からも、もっと高い金額で内定をもらっている」と偽ったりすることを考えてしまうケースです。
なぜ「嘘」をつくべきではないのか:信頼失墜のリスク
しかし、転職活動において「嘘」をつくことは、どのような理由であれ、絶対に避けるべきです。最大の理由は、採用担当者や転職先企業(病院・薬局)との「信頼関係」を、根本から破壊してしまう重大なリスクがあるからです。転職は、入社がゴールではなく、その後長く良好な関係を築きながら、専門家として貢献していくことが目的です。そのスタートラインである交渉の場で「嘘」が発覚した場合、ご自身の薬剤師としての誠実さや倫理観まで疑われてしまうことになりかねません。
現職の給与額を偽ることの具体的な危険性
例えば、現職の給与額について「嘘」をついた場合、その「嘘」は、内定後に提出を求められる「源泉徴収票」や「給与明細」によって、ほぼ間違いなく発覚します。企業側は、こうした公的な書類で給与額の確認(裏付け)を行うことが一般的です。「嘘」が発覚した時点で、応募者の申告内容に虚偽があったとして、その重大性によっては、最も重い処分として内定が取り消される可能性も十分にあります。
他社の内定状況や提示額を偽るリスク
同様に、他社の選考状況や、提示された給与額について「嘘」をつくことも、ご自身の信頼を損ねる危険な行為です。交渉を有利に進めるためだけの「嘘」は、経験豊富な採用担当者に見抜かれることも少なくありません。たとえその場はうまくいったように見えても、入社後にご自身の能力と、交渉によって釣り上がった期待値との間に大きなギャップが生まれ、結果としてご自身が苦しい立場に置かれてしまうことにもなりかねません。
「嘘」をつかずに給与交渉を進める方法
では、現職の給与が低い場合、どのように交渉すれば良いのでしょうか。大切なのは、「嘘」をつくことではなく、「現職の給与は、あくまで現職の評価基準や給与体系によるものであり、ご自身の市場価値とは必ずしも一致しない」という視点を持つことです。「嘘」でごまかすのではなく、「これまでの経験やスキル(例:在宅医療の経験、マネジメントスキル、専門資格など)を、貴社(貴院)ではこのように活かせると考えており、その価値を正当に評価していただきたい」と、ご自身の「市場価値」に基づいて交渉することが正攻法です。
重要なのは「市場価値」に基づいた交渉
給与交渉の基本は、前職の給与額がどうであったか以上に、ご自身のスキルや経験が、転職市場においてどれくらいの価値があるのか、という「市場価値」に基づいて行われるべきです。現職の給与が低かったとしても、それはご自身の能力が低いことを意味するものではありません。その職場の給与体系や、地域的な相場、経営状況によるものかもしれないのです。
デリケートな「給与交渉」を専門家に任せる選択
とはいえ、ご自身の「市場価値」を客観的に判断し、採用担当者に対して「嘘」をつかずに論理的に給与交渉を行うことは、非常に難易度が高く、心理的な負担も大きいものです。「どのように伝えれば良いか分からない」「現職の給与を正直に伝えた上で、どう交渉すれば良いのか不安だ」。
こうしたデリケートな「給与交渉」こそ、転職エージェントが専門性を発揮できる領域です。薬剤師専門の転職エージェントは、業界の給与相場や、どのようなスキルが市場で評価されるのかを熟知しています。ご自身の客観的な市場価値を算出し、ご自身に代わって企業側との給与交渉を行うことができます。「嘘」をつくという大きなリスクを冒すことなく、ご自身の価値を正当に評価してもらうために、こうした専門家のサポートを活用することも検討してみてはいかがでしょうか。







