薬剤師の転職面接、ESと違うことを話しても良い?一貫性と柔軟性のバランス
転職活動において、履歴書や職務経歴書といった応募書類(ES)は、面接へと進むための重要な第一関門です。そして、いざ面接本番を迎えた際に、「ESに書いた内容と全く同じことを話すべきか」「準備を進める中で考えが深まった部分を、ESとは少し違う形で話しても良いのだろうか」と、その受け答えに迷いを感じる方は少なくありません。この記事では、ESの内容を土台としながらも、面接の場でご自身の魅力をより効果的に伝えるための、一貫性と柔軟性のバランスについて詳しく解説いたします。
基本原則:ESの内容と完全に矛盾することは避ける
まず、最も重要な基本原則として、ESに記載した事実と完全に矛盾する内容を話すことは絶対に避けるべきです。例えば、職務経歴や取得資格、あるいは退職理由の根幹となる部分について、ESとは全く異なる説明をすれば、面接官はあなたの発言の信憑性に強い疑念を抱くでしょう。応募者の発言に一貫性があるかどうかは、その人物の誠実さを測る上で極めて重要な指標となります。これは、患者様や他の医療スタッフとの信頼関係の上に成り立つ、薬剤師という職業にとって、特に大切な資質といえます。
歓迎される「違い」:ESの内容を深掘りする補足
一方で、ESの内容をさらに発展させ、より深く掘り下げて話すことは、むしろ面接官に歓迎されます。面接とは、文字数に限りがあるESでは伝えきれなかった、ご自身の人柄や経験の背景を、具体的な言葉で伝える絶好の機会なのです。例えば、ESに「患者様とのコミュニケーションを大切にしてきました」と記載した場合、面接では「特にご高齢の患者様に対しては、専門用語を避け、図やイラストを用いる工夫をした結果、『説明が分かりやすい』と感謝のお言葉をいただくことができました」というように、具体的なエピソードを交えて話すことで、その言葉に説得力とリアリティが生まれます。
ES提出後に考えが変化した場合の伝え方
ESを提出してから面接日までの間に、企業研究をさらに深めたり、ご自身のキャリアについて改めて考えたりする中で、志望動機などがより具体的になることは、むしろ自然で望ましいことです。その場合は、その変化の経緯を正直に、かつ前向きに伝えることが大切です。「ESを提出させていただいた後、さらに貴社の在宅医療への取り組みについて調べる中で、〇〇という点に強い感銘を受け、私のこれまでの経験を活かして貢献したいという思いがより一層強くなりました」といったように話すことで、入社に向けて真剣に考え続けているという、高い意欲を示すことができます。
ESと面接での役割の違いを理解する
ESと面接での話に、ある程度の「違い」が生まれるのは当然ともいえます。なぜなら、両者はその役割が根本的に異なるからです。ESが、ご自身の基本的な経歴と魅力を伝え、面接官に「会ってみたい」と思わせるための「予告編」だとすれば、面接は、ESという予告編を基に、対話を通じてご自身の人柄や思考プロセス、コミュニケーション能力といった、書類上では分からない魅力を深く理解してもらうための「本編」なのです。この役割の違いを理解すれば、ESの内容をただ丸暗記して話すのではなく、それを土台とした柔軟な対話こそが面接で求められている、ということがお分かりいただけるでしょう。
一貫性のあるアピール戦略のために
ESと面接での発言に一貫性を持たせつつ、いかにして話を深掘りし、ご自身の魅力を最大限に伝えるか。このバランス感覚を養うことが、面接を成功に導く鍵となります。ご自身の経歴や考えを、どの程度、どのように表現すれば最も効果的なのかを客観的に判断し、戦略を練ることは、ご自身一人では難しい場合も少なくありません。そのような時は、転職の専門家であるキャリアアドバイザーにご相談ください。応募書類の段階から面接本番まで、一貫性のある効果的なアピールができるよう、皆様の転職活動を力強くサポートいたします。