薬剤師の転職面接、やり取りの「録音」はOK?マナーと法的な注意点
転職活動における面接での一言一句を、後で正確に振り返りたい。あるいは、万が一の圧迫面接やハラスメントなどに備えたい。そんな思いから、「面接官との会話を、こっそり録音しておきたい」と、ふと考えたことはございませんか。スマートフォンの普及により、誰でも手軽に録音ができるようになった現代、その行為の是非について、悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、面接の録音は、非常にデリケートな問題であり、その判断や方法を誤ると、かえってご自身の信頼を大きく損なう、深刻なトラブルに発展しかねないのです。この記事では、面接における録音の法的な位置づけや、ビジネスマナーとしての適切な対応について詳しく解説いたします。
応募者が、面接官に「無断で」録音する場合
まず、応募者であるあなたが、面接官の許可を得ずに、いわゆる「秘密録音」をすることの是非についてです。現在の日本の法律では、会話の当事者の一方が、相手の同意を得ずにその会話を録音する行為自体が、直ちに違法と判断されることは稀です。
しかし、法的に問題がないことと、ビジネスマナーとして、あるいは人としての倫理観として許容されることは、全くの別問題です。相手に隠れて会話を録音するという行為は、言うまでもなく、相手との信頼関係を著しく損なう、不誠実な行為と見なされます。もし、面接中にスマートフォンを操作するなどの仕草から、録音していることが面接官に発覚した場合、その時点で「不誠実で、信頼できない人物」という致命的なレッテルを貼られ、不採用となる可能性が極めて高いでしょう。これは、高い倫理観が求められる薬剤師として、最も避けるべき行為です。
応募者が、面接官に「許可を得て」録音する場合
では、正直に「録音しても良いですか」と、許可を求めるのはどうでしょうか。「面接での貴重なお話を、後で正確に振り返るために、録音させていただいてもよろしいでしょうか」と丁寧に申し出ることは、理論上は可能です。
しかし、企業側の立場からすると、自社の発言内容がどのような形で外部に漏れるか分からない、というリスクや、面接官自身が「録音されている」と意識することで、萎縮してしまい、本来の自然な対話ができなくなる、といった懸念があります。そのため、応募者から録音の許可を求められても、それを快く承諾する企業は、残念ながら、ほとんどないのが実情です。
録音よりも効果的な「面接の振り返り」方法
そもそも、あなたが録音をしたいと考える目的は、「面接内容を正確に振り返り、次に活かしたい」という、前向きなものであるはずです。その目的は、録音というリスクの高い手段に頼らなくても、よりスマートで、かつ効果的な方法で達成することが可能です。
一つは、面接中に、許可を得た上で「メモを取る」ことです。相手の話のキーワードや、ご自身が気になった点を簡潔に書き留めることで、記憶の補助となります。そして、最も効果的なのが、面接が終わった直後に行う「記憶の書き出し」です。面接会場を出てすぐのカフェなどで、興奮が冷めないうちに、どのような質問をされ、ご自身がどう答えたか、面接官の反応はどうだったか、などを、覚えている限り全てノートに書き出すのです。この作業が、録音を後から聞き返す以上に、あなたの課題点を浮き彫りにし、次への具体的な改善に繋がります。
企業側が、面接を録音・録画することはあるか
近年、企業側が、応募者の同意を得た上で、面接の様子を録音・録画するケースは増えています。その目的は、面接官のスキルアップのためのトレーニング用であったり、複数の採用担当者間で評価を共有するためであったりと様々です。この場合、企業は個人情報保護の観点から、必ず事前に応募者の同意を得なければなりません。もし同意を求められた際は、基本的には企業の採用プロセスの一環として、協力するのが望ましいでしょう。
最も確実な「客観的な振り返り」の方法
面接の録音は、応募者と企業との信頼関係を損なうリスクが非常に高い、原則として避けるべき行為です。面接内容を正確に振り返り、ご自身のパフォーマンスを客観的に評価したい、という真剣な思いは、より建設的な方法で実現すべきです。
転職エージェントは、そのための最も効果的で、かつ安全なソリューションを提供します。キャリアアドバイザーとの「模擬面接」では、あなたの許可を得た上で、その様子を録画することが可能です。そして、その録画映像を一緒に見ながら、「ここの話し方の癖は、このように改善しましょう」「このエピソードは、もっと自信を持って話した方が良いですね」といった、プロの視点からの、一言一句に至るまで具体的で客観的なフィードバックを行います。あなたは、リスクを冒すことなく、ご自身の面接を最も効果的な形で振り返り、次の本番へと繋げることができるのです。