「ざっくばらんにお話ししましょう」- 面接官の言葉に隠された本当の意図とは
転職活動の面接の冒頭で、面接官から「今日は堅苦しい話は抜きにして、ざっくばらんにお話ししましょう」と声をかけられ、どのように対応すべきか戸惑ったご経験はないでしょうか。和やかな雰囲気に安堵する一方で、「どこまで本音で話して良いのだろうか」「評価にどう影響するのだろうか」と、かえって緊張してしまうかもしれません。実は、この「ざっくばらん」な面接こそ、応募者の本質的な人柄やコミュニケーション能力を見極めるための、重要な選考手法なのです。
「ざっくばらん」な面接の目的
企業がこのような雰囲気の面接を行う背景には、いくつかの明確な意図があります。最大の目的は、準備された模範解答ではない、応募者の「素顔や本音を知る」ことです。リラックスした会話の中から、応募者が本来持っている価値観や物事の考え方を引き出そうとしています。また、相手に心を開かせ、本音で対話できる「コミュニケーション能力」は、患者様との信頼関係構築やチーム医療を円滑に進める上で、薬剤師に不可欠なスキルであり、その能力を実践的に評価しているのです。
「ざっくばらん」の言葉に甘えすぎない心構え
和やかな雰囲気であっても、面接が選考の場であることに変わりはありません。「ざっくばらん」という言葉は、「無礼講」を意味するものではないと、まず心に留めておくことが重要です。友人や知人と話すように言葉遣いが崩れたり、態度が馴れ馴れしくなったりしないよう、社会人としての敬意と礼儀は最後まで保ちましょう。発言の一つひとつが、ご自身の評価に繋がっているという意識を常に持ち、薬剤師として求められる誠実さや清潔感を損なうような言動は、厳に慎む必要があります。
ざっくばらんな会話の中でアピールすべきこと
ざっくばらんな面接は、ご自身の強みや魅力を自然な形でアピールする絶好の機会です。会話の話題が多岐にわたったとしても、ご自身の経験や強み、志望動機といった話の「軸」からブレないように意識しましょう。どのような話題であっても、最終的にはご自身がアピールしたいポイントに結びつけて話すことが大切です。また、ご自身が話すだけでなく、面接官の話に真摯に耳を傾け、共感を示した上で的確な質問を返す「傾聴力」と「質問力」も、高いコミュニケーション能力の証明となります。
薬剤師として「本音」で語るべきこと
「ざっくばらん」という言葉を前向きに捉え、ご自身の「本音」を語ることで、面接官の心に深く響くことがあります。ここで語るべき「本音」とは、現職への不満や愚痴ではありません。「なぜ薬剤師という職業を選んだのか」「日々の業務の中で、何を一番大切にしているか」といった、ご自身の仕事に対する純粋な情熱や想いです。また、「今後どのような薬剤師になりたいのか」といった前向きなキャリアビジョンを、ご自身の言葉で誠実に語ることも、強い入社意欲の表れとして高く評価されるでしょう。
面接スタイルの事前把握と対策
企業の社風によって、面接の雰囲気は大きく異なります。事前に応募先の面接スタイルに関する情報を得ておけば、心の準備ができ、当日も落ち着いて対応することができます。薬剤師の転職を専門とする転職エージェントは、各企業の面接に関する詳細な情報、例えば「〇〇社の面接は、比較的ざっくばらんな雰囲気で進むことが多い」といった傾向を把握している場合があります。また、模擬面接を通じて、リラックスした雰囲気の中でも、しっかりと自己PRをするための客観的なフィードバックを受けることも、有効な対策の一つです。