薬剤師の転職、応募書類で「作文」を求められた際の書き方
薬剤師の皆様が転職活動を行う際、履歴書や職務経歴書に加えて、「作文」や「小論文」の提出を求められることがあります。決まった形式のないこの課題に、「一体何を書けば良いのだろうか」「採用担当者は何を見ているのだろうか」と、その書き方に深く悩んでしまう方も少なくありません。しかし、この作文は、あなたのスキルや経歴だけでは伝わらない人間性や仕事への熱意を伝えるための、絶好の自己表現の機会です。この記事では、採用担当者の心に響き、あなたの魅力を最大限に伝えるための、応募書類としての作文の書き方を詳しく解説します。
なぜ応募書類で作文が求められるのか
企業や医療機関が応募書類で作文を課す主な目的は、履歴書や職務経歴書といった定型的な書類だけでは分からない、あなたの「人柄」や「価値観」、「論理的思考力」をより深く知るためです。採用担当者は、あなたがどのような考えを持ち、仕事にどう向き合おうとしているのかを、あなた自身の言葉で表現された文章から読み取ろうとしています。
また、与えられたテーマに対して、自分の経験と結びつけて、分かりやすく、かつ説得力のある文章を構成できるかどうかで、あなたのコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力も評価しています。つまり、作文は、あなたの薬剤師としての専門性だけでなく、一人の社会人としての総合力を示すための、重要な選考材料なのです。
作文でよくあるテーマと選び方のポイント
作文のテーマは、応募先によって様々ですが、主にあなたの仕事観や将来のビジョンを問うものが多く見られます。例えば、「私の目指す薬剤師像」「仕事において大切にしていること」「これまでの経験で最も成長を感じたこと」「当院(当薬局)で実現したいこと」といったテーマが挙げられます。
どのテーマを選ぶにせよ、最も重要なのは、そのテーマと「応募先の理念や事業内容」、そして「ご自身の経験」とを、いかにうまく結びつけるかという点です。応募先のウェブサイトなどを十分に読み込み、その組織が何を大切にしているのかを深く理解した上で、ご自身の経験の中から、その価値観と合致するエピソードを掘り起こすことが、説得力のある作文を作成する第一歩となります。
採用担当者に響く作文の基本構成
説得力のある作文は、一般的に以下の四つの要素で構成されています。この流れを意識することで、あなたの考えが論理的に伝わりやすくなります。
まず「結論」として、与えられたテーマに対するあなたの考えや主張を、最初に明確に述べます。次に、その結論に至った「具体的なエピソード」を、これまでの実務経験や学生時代の経験の中から選び出し、具体的に記述します。ここが、あなたの話に信憑性を持たせる最も重要な部分です。
続いて、そのエピソードを通じて「何を学んだのか」という、あなた自身の気づきや考察を述べます。そして最後に、その学びを、入社後に「どのように活かし、貢献していきたいのか」という、未来に向けたビジョンで締めくくります。この「結論→具体例→学び→貢献」という一貫したストーリーこそが、採用担当者の深い納得感を引き出す鍵となります。
作文を書く上での注意点とNG例
作文を作成する際は、いくつかの基本的なマナーを守ることが重要です。まず、文体は履歴書などと同様に、「です・ます調」の丁寧語で統一します。誤字脱字は、注意力不足という印象を与えてしまうため、提出前には必ず複数回の見直しを行いましょう。
内容については、単なる成功体験の自慢話や、前職への不満を述べる場ではありません。どのような経験であれ、そこから何を学び、次へどう繋げようとしているのかという、前向きで謙虚な姿勢を貫くことが大切です。また、「貴社(貴院)の理念に共感しました」といった抽象的な言葉で終わらせるのではなく、理念のどの部分に、ご自身のどのような経験から共感したのかを具体的に述べなければ、あなたの熱意は伝わりません。インターネット上の例文を丸写しするのではなく、あなた自身の言葉で、あなただけのストーリーを語ることが、何よりも重要です。