薬剤師の転職、提出した履歴書に返却義務はある?個人情報の扱いを解説
薬剤師の転職活動において、心を込めて作成し、提出した履歴書。残念ながら不採用となってしまった際に、「提出した大切な個人情報が詰まった履歴書は、返却してもらえるのだろうか」と、その行方を気にする方も少なくないでしょう。個人情報保護への意識が高まる中で、応募書類の扱いは応募者にとって大きな関心事です。この記事では、企業や医療機関における履歴書の返却義務に関する法的な考え方や、返却されない場合の個人情報の正しい扱いについて詳しく解説します。
履歴書の返却は法律上の義務ではない
まず、基本的な考え方として、企業や医療機関には、不採用となった応募者の履歴書を返却する法的な義務はない、と認識しておくことが重要です。個人情報保護法上も、提出された履歴書の返却は義務付けられていません。一度提出された書類の所有権は、受理した企業側に移ると解釈されるのが一般的です。
ただし、これは企業が応募者の個人情報をぞんざいに扱って良いという意味では決してありません。厚生労働省は、応募書類の返却を推奨しており、多くの企業は応募者の心情に配慮し、自主的に返却するか、あるいは責任を持って廃棄するかのいずれかの対応をとっています。
なぜ履歴書は返却されないことが多いのか
履歴書が返却されない背景には、企業側のいくつかの実務的な理由が関係しています。
一つ目の理由は、返却にかかる「コストと手間」です。すべての不採用者に対して、履歴書を郵送で返却するとなると、そのための封筒代や郵送費、そして封入・発送作業を行う人件費といった、相当なコストと手間が発生します。
二つ目の理由は、「個人情報漏洩リスクの管理」です。返送する過程で、宛先を間違えたり、郵送事故に遭ったりする可能性はゼロではありません。万が一、第三者の手に渡ってしまうと、重大な個人情報漏洩事件に繋がりかねません。そのため、企業としては、返送というリスクを冒すよりも、自社の責任のもとで適切に廃棄する方が、安全に個人情報を管理できると判断することが多いのです。
返却されない履歴書の正しい取り扱い
応募者の個人情報である履歴書は、個人情報保護法の対象となります。企業には、応募者の個人情報を適切に管理し、利用目的(この場合は採用選考)が終了した後は、責任を持って廃棄する努力義務があります。
多くの企業では、個人情報保護に関する社内規定を設けており、不採用者の履歴書は、一定期間保管した後にシュレッダーにかけるなど、復元不可能な形で廃棄処分するのが一般的です。したがって、返却されなかったとしても、あなたの個人情報が不適切に扱われたり、外部に流出したりする心配は、基本的にはありません。
応募前に確認すべきことと心構え
最近では、個人情報保護の観点から、募集要項の中に「応募書類は返却いたしませんので、あらかじめご了承ください」といった一文を明記している企業が増えています。履歴書を送付する前に、まず募集要項を隅々まで確認し、書類の取り扱いに関する記載があるかを確認する習慣をつけましょう。
履歴書は、一度提出したら基本的には手元に戻ってこない、ということを前提として準備することが大切です。提出する前には、必ずコピーを取るか、パソコンで作成した場合はデータを大切に保管しておくようにしましょう。もし、どうしても返却を希望する場合は、応募時にその旨を伝えることも可能ですが、必ずしも希望に応じてもらえるとは限らないことを理解しておきましょう。