薬剤師の転職、職歴の一部を抜かすとどうなる?経歴詐称のリスクを解説
薬剤師の転職活動において、履歴書の職歴欄を作成する際、「数ヶ月で辞めてしまった短い職歴は、書かずに抜かした方が印象が良いのではないか」「不利になりそうな経歴は隠しておきたい」と考えてしまうことがあるかもしれません。ご自身の経歴を少しでも良く見せたいという気持ちは自然なことですが、その判断はあなたのキャリア全体を危険に晒す、極めて重大なリスクを伴います。この記事では、職歴の一部を意図的に抜かす行為がなぜ問題なのか、その深刻なリスクと正しい対処法について詳しく解説します。
職歴を抜かす行為は「経歴詐称」にあたる
まず最も重要な原則として、たとえ在籍期間が1日であったとしても、雇用契約を結んで勤務した経歴はすべて、履歴書の職歴欄に記載するのが社会人としての義務であり、絶対的なルールです。意図的に職歴の一部を抜かして記載しない行為は、事実を偽る「経歴詐称」と見なされます。採用担当者は、職歴の長さや短さそのものよりも、応募者の「誠実さ」を厳しく見ています。嘘をつくという行為は、患者様の健康と命を預かる医療人として、最も大切な信頼性を自ら根本から損なう行為であることを理解しなければなりません。
なぜ職歴を抜かすと必ず発覚するのか
「短い期間だから、きっとバレないだろう」という安易な考えは非常に危険です。職歴は、入社手続きの際に提出を求められる公的な書類によって、ほぼ100%の確率で明らかになります。具体的には、前職の会社名や退職日が記載されている「雇用保険被保険者証」や、厚生年金の加入記録がわかる「年金手帳」などを提出した際に、履歴書に記載のない職歴の存在が発覚します。これらの公的記録をごまかすことはできません。
もし、この経歴詐称が発覚すれば、採用担当者からの信頼を完全に失い、内定は取り消されます。万が一、入社後に発覚した場合は、就業規則違反として「懲戒解雇」という最も重い処分が下される可能性も十分にあり、あなたの薬剤師としてのキャリアに深刻な傷を残すことになります。
職歴を抜かすのではなく、伝え方を工夫する
採用担当者が短期離職の経歴を懸念するのは、「私たちの組織でも、またすぐに辞めてしまうのではないか」という不安があるからです。この不安を払拭するためには、職歴を抜かすのではなく、正直に記載した上で、その経験から何を学び、なぜ次のステップに進みたいと考えたのかを、前向きな言葉で伝えることが重要です。
面接でその経歴について質問された際に、説得力のある説明ができるように準備しておきましょう。その際、「人間関係が悪かった」「聞いていた条件と違った」といった、他責的でネガティブな理由を述べるのは避けるべきです。そうではなく、「自身のキャリアプランと真剣に向き合った結果、新たな道に進むことを決意した」という、主体的でポジティブな理由に転換して伝えることが、円満なコミュニケーションの鍵となります。
短い職歴でも前向きな学びに変える伝え方
短い在籍期間であっても、そこで得た学びや気づきは必ずあるはずです。その経験が無駄ではなかったこと、そして次のキャリアに対する明確なビジョンがあることを示しましょう。
例えば、「前職のドラッグストアでは、OTC医薬品のカウンセリング販売を通じて、セルフメディケーションの重要性を深く学びました。その中で、より一人ひとりの患者様の治療に深く関わりたいという思いが強くなり、臨床の現場で専門性を高めることができる病院薬剤師の道に進みたいと考えるに至りました。短い期間ではございましたが、お客様の多様なニーズを的確に把握するための傾聴力を培うことができたと考えております。」
このように説明することで、短期離職が、キャリアプランを明確にするための重要な転機であったことを伝えることができます。職歴を抜かすというリスクを冒すのではなく、すべての経験をあなたの強みに変えるという前向きな姿勢で、転職活動に臨みましょう。