薬剤師の転職、職務経歴書と履歴書の内容は重複しても良い?
薬剤師の皆様が転職活動を行う際、必ずと言っていいほど準備が必要となる「履歴書」と「職務経歴書」。いざ作成を始めると、「この二つの書類、同じような内容を書いても良いのだろうか」「どこまで内容が重複していても許されるのか」と、その書き分け方に深く悩んでしまう方も少なくないでしょう。実は、この二つの書類は似ているようで、その目的と役割が根本的に異なります。この違いを正しく理解し、それぞれの役割に応じて書き分けることが、採用担当者にあなたの価値を最大限に伝えるための重要な鍵となります。この記事では、履歴書と職務経歴書の役割の違いと、内容が重複する場合の正しい書き分けのポイントについて詳しく解説します。
履歴書と職務経歴書が持つ根本的な役割の違い
まず理解すべきは、履歴書と職務経歴書が持つ役割の根本的な違いです。履歴書は、あなたの氏名や学歴、そして薬剤師免許といった資格など、ご自身のプロフィールを証明するための「公的な書類」です。採用担当者は履歴書を通して、応募者が募集要件を満たしているか、どのような経歴を歩んできた人物なのかを客観的に把握します。
一方、職務経歴書は、これまでのキャリアで「どのような業務に、どのように取り組み、どのような成果を上げてきたのか」を具体的にアピールするための、より実践的な「プレゼンテーション資料」です。履歴書の職歴欄だけでは伝えきれない、あなたの専門性やスキル、そして仕事への真摯な姿勢を、あなた自身の言葉で伝える役割を担っています。
「職歴」の重複と書き分けのポイント
二つの書類で最も内容が重複するのが「職歴」の項目です。しかし、ここでの情報の深さは全く異なります。履歴書の職歴欄は、あくまで経歴の「概要」を時系列で示すものです。「〇〇株式会社 入社」「△△薬局に配属」「一身上の都合により退職」といった客観的な事実を、簡潔に記載するのが基本です。
それに対して、職務経歴書では、その概要をさらに深掘りし、具体的な業務内容や実績を詳細に記述します。例えば、どのような診療科の処方箋を、1日に何枚程度応需していたのか。在宅医療や後輩指導にどのように関わってきたのか。在庫管理でどのような工夫をしたのか、といった具体的な情報を盛り込みます。つまり、履歴書の職歴欄が「目次」だとすれば、職務経歴書はその「本文」にあたるのです。事実として勤務先や在籍期間は重複しますが、その情報の密度と質で明確な差別化を図ります。
「自己PR」や「志望動機」の重複に関する考え方
自己PRや志望動機といった項目も、両方の書類に記載する機会があります。この場合、全く同じ文章をコピーアンドペーストするのは避けるべきです。これも職歴欄と考え方は同じで、履歴書ではご自身の強みや熱意の「要点」を、職務経歴書ではそれを裏付ける「具体的なエピソード」を記述するという役割分担を意識しましょう。
例えば、履歴書の自己PR欄で「患者様の心に寄り添う傾聴力が私の強みです」と簡潔に述べたとします。それに対し、職務経歴書の自己PR欄では、「前職で服薬に抵抗を感じていた患者様に対し、時間をかけてお話を伺う中で、副作用への不安が原因であることを突き止めました。そこで、副作用の初期症状と対処法を具体的にお伝えした結果、安心して服薬を継続していただけた経験がございます」というように、その強みが発揮された具体的なエピソードを示すのです。これにより、あなたのアピールは一貫性を持ち、かつ深みと説得力を増すことになります。
役割分担があなたの評価を高める
履歴書と職務経歴書の内容が一部重複することは、当然のことであり問題ありません。大切なのは、それぞれの書類が持つ役割を正しく理解し、「概要」と「詳細」という情報の棲み分けを意識することです。この丁寧な書類作成の姿勢は、あなたの論理的思考力や、相手への配慮ができるコミュニケーション能力の高さを示すことにも繋がります。二つの書類を効果的に連携させ、あなたの魅力を最大限に伝えましょう。