薬剤師の面接:「苦労したこと」を問う質問への効果的な答え方
なぜ面接で「苦労したこと」が聞かれるのか?
薬剤師の転職活動における面接では、ご自身の経験やスキル、志望動機といった定番の質問に加え、「これまでの業務で最も苦労したことは何ですか?」あるいは「困難な状況をどのように乗り越えましたか?」といった、過去の困難な経験に関する質問がされることがよくあります。
このような質問をされると、「失敗談を話すべきなのだろうか」「ネガティブな印象を与えてしまわないだろうか」と不安に感じるかもしれません。しかし、面接官は単にあなたの失敗や苦労そのものを知りたいわけではありません。特に薬剤師は、患者様の健康に関わり、予期せぬ状況やプレッシャーの中で正確な判断と対応が求められる職業です。そのため、採用担当者は、あなたが困難な状況にどのように向き合い、それを乗り越えるためにどのような努力をしたのか、そしてその経験から何を学んだのかを知ることで、あなたの問題解決能力、ストレス耐性、責任感、そして成長意欲といった、薬剤師として不可欠な資質を見極めようとしているのです。
質問の意図:面接官は何を知りたいのか
面接官が「苦労したこと」について質問する背景には、いくつかの具体的な意図があります。
問題解決能力
困難な状況に直面した際に、原因を分析し、解決策を考え、実行に移すことができるかを見ています。
ストレス耐性と精神的な強さ
プレッシャーのかかる状況や、思い通りにいかない場面で、感情的にならずに冷静に対処できるか、そしてその経験を乗り越える精神的な強さ(レジリエンス)を持っているかを確認しています。
課題発見・改善意欲
現状の問題点に気づき、それを改善しようと主体的に取り組む姿勢があるかを見ています。
学びと成長意欲
過去の経験(たとえ失敗であったとしても)から学びを得て、それを次に活かそうとする謙虚さや成長意欲があるかを確認しています。
責任感と誠実さ
困難な状況から逃げずに、責任を持って最後までやり遂げようとする姿勢や、自身の課題を正直に認められる誠実さを見ています。
効果的な答え方のポイント:エピソード選びと構成
「苦労したこと」に関する質問に効果的に答えるためには、まず適切なエピソードを選ぶことが重要です。そして、そのエピソードを分かりやすく構成して伝える必要があります。
エピソード選びのポイント
まず、薬剤師としての業務に関連するエピソードを選びましょう。プライベートな苦労話ではなく、仕事上の困難(例:複雑な処方への対応、患者様とのコミュニケーション、多職種連携での課題、業務改善への取り組みなど)が適切です。そして、単に大変だったという話ではなく、最終的にご自身の努力や工夫によって乗り越えられた、あるいはそこから明確な学びを得られた経験を選びましょう。
構成のポイント:「STAR」メソッドの活用
エピソードを分かりやすく伝えるためのフレームワークとして、「STAR(スター)メソッド」が役立ちます。これは、Situation(状況)、Task(課題)、Action(行動)、Result(結果)の頭文字を取ったものです。
- Situation(状況):どのような状況・背景であったか。
 - Task(課題):その状況で、どのような課題や目標があったか。
 - Action(行動):その課題や目標に対し、あなたが具体的に「何をしたか」。
 - Result(結果):その行動によって、どのような結果が得られたか(学んだこと、改善されたことなど)。
 
この順番に沿って話を構成することで、エピソードの背景から、あなたの具体的な行動、そしてその結果(学び)までを、論理的かつ簡潔に伝えることができます。
具体的な行動と学びを明確に伝える
STARメソッドの中でも特に重要なのが「Action(行動)」の部分です。他の誰かではなく、「あなたが」何を考え、どのように主体的に行動したのかを具体的に説明することが、あなた自身の能力や人柄をアピールする上で最も重要になります。
そして、「Result(結果)」の部分では、困難を乗り越えたことで得られた具体的な成果や、その経験から何を学び、それが今後の薬剤師としての業務にどのように活かせるのかを明確に伝えましょう。「この経験を通じて、〇〇の重要性を改めて認識し、今後は△△を心がけていきたいと考えております」といった形で締めくくると、前向きな姿勢と成長意欲を示すことができます。
避けるべきNGな回答
一方で、以下のような回答は避けるべきです。
他責・不平不満に終始する
苦労の原因をすべて周囲(上司、同僚、会社など)のせいにして、不平不満ばかりを述べるのは、協調性や問題解決能力がないという印象を与えます。
ネガティブなだけで終わる
苦労した事実だけを話し、そこから何も学んでいない、あるいは乗り越えられていないような印象を与える回答は避けましょう。
苦労経験がない、あるいは些細すぎる
「特に苦労したことはありません」という回答は、仕事に対する意欲が低い、あるいは自己分析ができていないと受け取られる可能性があります。また、あまりにも些細なエピソードでは、面接官の期待に応えられないかもしれません。
嘘や誇張
もちろん、事実と異なることを話したり、過度に話を盛ったりするのは厳禁です。
「苦労したこと」への回答準備に不安がある場合は
このように、面接で「苦労したこと」について効果的に答えるためには、ご自身の経験を深く掘り下げ、それを具体的なエピソードとして分かりやすく構成し、伝える練習が必要です。「自分のどの経験がアピールになるか分からない」「うまくエピソードをまとめられない」「話すのが苦手で不安」といった悩みを抱える方もいらっしゃるかもしれません。
もし、こうした面接での質疑応答や、自己紹介、面接マナー全般に少しでも不安を感じるようであれば、転職の専門家である転職エージェントにご相談いただくのも一つの有効な手段です。転職エージェントでは、薬剤師の転職市場に精通したコンサルタントが、あなたの経験の中から応募先に響くエピソードを見つけ出し、STARメソッドなどを活用して効果的な伝え方を一緒に考えます。また、模擬面接を通じて、実践的な練習を行い、客観的なフィードバックを受けることも可能です。万全の準備で自信を持って面接に臨むために、ぜひ一度ご登録をご検討ください。







