薬剤師の面接：「パーソナルな質問」への適切な対応

なぜ薬剤師の面接で「パーソナルな質問」がされるのか？

薬剤師の転職活動における面接は、ご自身の専門知識やこれまでの経験をアピールする重要な場面です。しかし、採用担当者はスキルと同時に、応募者の「人柄」や「価値観」といった、いわゆる「パーソナル」な側面にも厳しく注目しています。なぜなら、薬剤師は患者様の健康やプライバシーに関わる情報を扱い、高い倫理観や誠実さが求められる職業だからです。

また、医師や看護師といった多職種と円滑に連携し、患者様やそのご家族と信頼関係を築く上で、コミュニケーション能力や協調性は不可欠です。履歴書や職務経歴書だけでは分からない、あなたの「人となり」や物事の捉え方を知るために、面接官はあえて職務経歴とは直接関係のない、パーソナルな質問を投げかけることがあるのです。

面接官が質問を通して知りたいこと

面接官が趣味や休日の過ごし方、あるいは価値観に関する質問をする際、その背景にはいくつかの意図があります。例えば、「ストレス解消法」についての質問は、プレッシャーのかかる医療現場で、ご自身で適切に心身のバランスを保ち、安定して業務を続けられるか（自己管理能力）を確認する意図があります。「学生時代に打ち込んだこと」や「チームでの経験」に関する質問は、あなたの協調性や目標達成への意欲、リーダーシップの素養などを知る手がかりとなります。

これらの質問は、あなたの「人となり」が、応募先の薬局や病院、企業の文化やチームの雰囲気に適合するかどうか（マッチング）を判断するための重要な材料となるのです。

業務に関連する「パーソナルな質問」への答え方

もし、「趣味は何ですか？」や「休日はどのように過ごしていますか？」といった質問をされた場合は、正直に、かつ簡潔に答えることが基本です。その際、可能であれば、その経験が薬剤師としての資質や仕事への姿勢と、どのようにポジティブに関連しているかを、さりげなく付け加えることができると良いでしょう。

例えば、「趣味は読書です。様々な分野の知識を吸収することが好きで、その探求心は薬剤師として常に最新の医療情報を学び続ける上でも役立っていると感じます」や、「学生時代から続けているチームスポーツを通じて、協調性と目標達成意欲を培いました。これはチーム医療においても活かせると考えております」といった形です。ただし、無理にこじつける必要はありません。明るい表情で、ご自身の言葉で誠実に話すことが何よりも大切です。

業務遂行能力に関係のない「不適切な質問」とは？

一方で、パーソナルな質問の中には、応募者の適性や能力とは関係がなく、本来、採用選考の場で尋ねるべきではない（あるいは配慮が必要な）不適切な内容も存在します。これらは厚生労働省の指針でも示されており、応募者の基本的人権を尊重し、公正な採用選考を行うために避けるべきとされています。

具体的には、本籍地や出生地に関すること、家族構成や家族の職業・学歴・収入に関すること、宗教や支持政党といった思想・信条に関すること、あるいは結婚や出産の予定といった、個人のプライバシーに深く関わる質問がこれに該当します。

不適切な質問をされた場合のスマートな対応

もし面接中に、上記のような不適切な質問をされ、答えることに抵抗を感じた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。慌てたり感情的になったりせず、落ち着いて対応することが大切です。

最も基本的な対応は、回答を控える旨を丁寧に伝えることです。「申し訳ありませんが、そのご質問への回答は控えさせていただいてもよろしいでしょうか」や、「そのご質問は、私の業務遂行能力とは直接関係がないように思われますので、お答えを控えさせていただきます」といった形で、相手への敬意を払いながらも、答える義務がないことを示します。

あるいは、質問の意図を汲み取りつつ、仕事への意欲を伝える形でかわす方法もあります。例えば、結婚や出産の予定について聞かれた際に、「プライベートな予定に関わらず、入職後は責任を持って業務に取り組み、貢献したいと考えております」といった形で、仕事への前向きな姿勢を改めて示すことで、面接官の懸念（もしあれば）を払拭しつつ、質問をかわすことも可能です。

面接での対応に不安がある場合は

このように、面接では時にプライベートにも関わるような、答え方に配慮が必要な質問がされることがあります。「どのように答えれば良いか分からない」「不適切な質問をされたらどうしよう」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。特に、応募先の企業文化や面接官のタイプによって、質問の傾向が異なる場合もあります。

もし、こうした面接対策や、企業の情報収集、面接での受け答えマナー全般に少しでも不安を感じるようであれば、転職の専門家である転職エージェントにご相談いただくのも一つの有効な手段です。転職エージェントでは、薬剤師の転職市場に精通したコンサルタントが、応募先の詳細な情報（企業の文化や過去の面接傾向なども含む）に基づき、想定される質問とその効果的な回答方法、そして不適切な質問への対応策について、具体的なアドバイスを行います。また、模擬面接を通じて、実践的な練習を行い、自信を持って本番に臨むためのサポートを受けることも可能です。

まとめ：正しい知識で公正な選考を

面接は、応募者と企業（病院・薬局）が相互に理解を深めるための場です。パーソナルな質問に対しても、その意図を理解し、誠実に対応することが、あなたの薬剤師としての信頼性を示すことにつながります。不適切な質問に対しては、正しい知識を持って冷静に対応し、ご自身の権利を守りましょう。不安な点は専門家も活用しながら、万全の準備で自信を持って面接に臨んでください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
好きなアニメは、薬屋のひとりごと。
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