2025.06.02

動物病院で働く薬剤師の仕事内容とは？役割や必要なスキル、魅力を解説

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犬や猫をはじめとするコンパニオンアニマルが家族の一員として大切にされる現代において、動物医療の質向上はますます重要になっています。その中で、薬物療法の専門家である薬剤師も、動物病院という特殊な環境でその専門知識を活かし、動物たちの健康と生命を守るために活躍しています。「動物病院の薬剤師って、具体的にどんな仕事をしているのだろう？」「人間の薬局や病院で働く薬剤師とは、仕事内容にどんな違いがあるの？」「動物が好きという気持ちだけでは難しいのかな？」そんな疑問や関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、動物病院で働く薬剤師の仕事内容を中心に、その役割、求められるスキル、1日の流れ、そして働く魅力やキャリアについて詳しく解説していきます。

Contents

動物病院における薬剤師の役割と重要性
動物病院薬剤師の主な仕事内容
動物病院薬剤師の1日の流れ（例）
動物病院で働く薬剤師に求められるスキルと知識
動物病院で薬剤師として働く魅力とやりがい
動物病院で働く薬剤師の大変さ・注意点
動物病院薬剤師のキャリアパスと給与の傾向
まとめ

動物病院における薬剤師の役割と重要性

動物病院における薬剤師は、動物医療における薬物療法の専門家として、獣医師や動物看護師と連携し、チーム医療の一翼を担います。人間医療と同様に、動物医療においても医薬品の適正使用は治療効果を左右し、副作用を最小限に抑える上で極めて重要です。

薬剤師の主な役割と重要性は以下の通りです。

安全かつ効果的な薬物療法の推進: 動物の種類、品種、年齢、体重、生理機能、そして病態は多種多様であり、それぞれに適した医薬品の選択、精密な用法・用量の設定、そして適切な投与方法の選択が不可欠です。薬剤師は、薬学的観点からこれらを評価し、獣医師をサポートします。
医薬品の品質・安全管理: 動物用医薬品だけでなく、人間用の医薬品を動物に使用するケース（適応外使用）も多く、これらの医薬品の適切な管理、品質保持、そして法規遵守は薬剤師の重要な責務です。
飼い主への情報提供と精神的サポート: 動物は自ら症状を訴えることができないため、飼い主が薬剤の重要性や正しい使い方を理解し、不安なく投薬できるよう、丁寧な服薬指導と精神的なサポートを行います。
チーム医療への貢献: 獣医師、動物看護師、トリマー、その他のスタッフと情報を共有し、薬学的知見を提供することで、動物に対するより質の高い医療の提供に貢献します。

ただし、現状では全ての動物病院に薬剤師が常駐しているわけではなく、比較的大規模な動物病院や大学附属の動物医療センター、専門的な治療を行う二次診療施設などで薬剤師が活躍しているケースが多いです。小規模な動物病院では、獣医師が調剤業務を兼任していることもあります。

動物病院薬剤師の主な仕事内容

動物病院で働く薬剤師の仕事内容は、その施設の規模や機能、薬剤師の配置人数によって異なりますが、主に以下のような業務が挙げられます。

調剤業務（動物用医薬品・人体用医薬品の動物への応用）

獣医師が発行した処方指示に基づき、動物たちに投与する医薬品を正確に調製します。

処方内容の薬学的監査: 処方された医薬品の種類、用法・用量、投与経路、投与期間などが、対象となる動物種、体重、年齢、病態、そして生理機能（特に肝機能や腎機能）に対して適切であるかを厳密にチェックします。他の薬剤との相互作用や、副作用歴、アレルギー歴なども考慮します。
精密な用量計算: 動物は体重や体表面積が人間と比較して大きく異なるため、特に小型動物やエキゾチックアニマル（犬猫以外の小動物、鳥類、爬虫類など）に対しては、極めて精密な用量計算が求められます。
剤形工夫と調製: 動物は人間のように自ら進んで薬を飲んでくれるとは限りません。そのため、錠剤を粉砕してカプセルに詰め替えたり、嗜好性の高いフレーバーを添加したり、あるいは懸濁液や軟膏を動物が受け入れやすいように調製したりといった、投与を容易にするための剤形工夫が非常に重要になります。
人体用医薬品の適応外使用への対応: 動物用に承認されている医薬品の種類は限られているため、治療上必要な場合、獣医師の判断と飼い主の同意のもとで、人間用の医薬品を動物に使用する（適応外使用）ことがあります。この際、薬剤師は薬学的知見に基づき、その妥当性、用法・用量、安全性に関する情報提供や獣医師への助言を行います。
調剤過誤防止のための監査: 調剤された医薬品が処方指示通りであるか、最終確認（監査）を徹底し、投薬ミスを防ぎます。

服薬指導・飼い主へのカウンセリング

調剤した医薬品を飼い主に渡す際に、その薬に関する重要な情報を分かりやすく説明し、適切な投薬をサポートします。

薬剤の効果・副作用・投与方法の説明: 処方された薬の名前、何のための薬か、期待される効果、注意すべき副作用の初期症状、正しい投与方法（飲ませ方、塗布方法、注射方法など）、保管方法、他の薬や食べ物との飲み合わせなどを、飼い主が理解しやすい言葉で丁寧に説明します。
動物への投薬テクニックのアドバイス: 薬を嫌がる動物に対して、どのようにすればスムーズに投薬できるか、具体的なコツや工夫（例：好物に混ぜる、投薬補助具を使うなど）をアドバイスします。
副作用モニタリングの協力依頼: 飼い主に対し、投薬後に動物の様子を注意深く観察し、どのような変化（食欲不振、嘔吐、下痢、元気消失、皮膚症状など）が現れたら副作用の可能性があるのか、そしてそのような場合にどう対処すべきか（獣医師に連絡するなど）を具体的に伝えます。
飼い主の不安や疑問への対応: 動物の病状や治療、薬に対する飼い主の不安や疑問に真摯に耳を傾け、精神的なサポートも行いながら、安心して治療に取り組めるよう支援します。

医薬品管理・在庫管理

動物病院内で使用される多種多様な医薬品の品質を保ち、必要な時に必要な薬が安全に使用できるよう管理します。

動物用医薬品・人体用医薬品の購入・品質管理・在庫管理: それぞれの医薬品の特性に応じた適切な保管条件（温度、湿度、光など）を維持し、使用期限を厳密に管理します。また、必要な医薬品が不足したり、過剰な在庫を抱えたりしないよう、計画的に在庫量を管理し、医薬品卸売業者へ発注します。納品された医薬品の検品も重要な業務です。
特殊な医薬品の厳重管理: 麻薬、向精神薬、毒薬、劇薬、生物学的製剤（ワクチンなど）といった、法律で厳重な管理が義務付けられている医薬品については、盗難や紛失、不正使用を防ぐため、施錠された場所での保管、正確な使用記録の作成、定期的な在庫確認などを徹底して行います。
院内製剤の調製・管理: 獣医師の指示に基づき、市販されていない特殊な濃度や配合の薬剤（例：特殊な点眼薬、皮膚病用のローション、口腔内投与用の懸濁液など）を院内で調製し、その品質を管理することがあります。

DI（医薬品情報）業務

獣医師や動物看護師、そして時には飼い主に対し、医薬品に関する専門的な情報を提供します。

院内スタッフからの問い合わせ対応: 獣医師や動物看護師から、医薬品の用法・用量、相互作用、副作用、配合変化、代替薬の提案、海外の動物薬情報などに関する専門的な問い合わせに対応します。
最新の医薬品情報の収集・評価・提供: 動物薬や人体薬の動物への応用に関する最新の学術論文、国内外の学会情報、公的機関からの通知、製薬メーカーからの情報などを継続的に収集・評価し、院内スタッフへ適切に情報提供します。
採用医薬品リストの作成・管理への関与: 院内で使用する医薬品を選定・評価し、採用薬リストの作成や更新に関与することもあります。
院内勉強会の企画・実施: 新しい医薬品の情報や、副作用対策、適正使用に関する知識などを、院内スタッフ向けに勉強会や研修会を企画し、講師として情報共有を行うこともあります。

チーム医療への参加

動物医療においても、獣医師、動物看護師、トリマー、リハビリ担当者など、様々な専門職が連携して治療にあたる「チーム医療」が重要です。薬剤師もその一員として、薬学的観点から貢献します。

カンファレンスやミーティングへの参加: 入院動物の治療方針を検討するカンファレンスや、手術前の術前カンファレンス、あるいは院内の医療安全会議などに参加し、薬物療法に関する専門的な意見を述べたり、情報提供を行ったりします。
処方提案・プロトコル作成への関与: 獣医師と協力し、個々の動物の状態に合わせた最適な薬物治療計画（プロトコル）の作成や、既存の処方の見直し（減薬提案、副作用軽減のための薬剤追加など）に関与します。
手術や処置に使用する薬剤の準備・管理: 手術室や処置室で使用される麻酔薬、鎮痛薬、抗菌薬、消毒薬といった薬剤の準備、管理、そして適正使用のサポートを行います。

その他

院内感染対策への関与: 消毒薬の適切な選択や使用方法の指導、院内の衛生環境の維持・向上に関する助言などを通じて、院内感染の予防に貢献します。
医療安全管理に関する業務: 医薬品に関連するインシデント（ヒヤリ・ハット）やアクシデント（医療過誤）の情報を収集・分析し、再発防止策の検討・実施に関わります。
栄養管理に関する情報提供: 療法食やサプリメントの選択に関して、獣医師や動物看護師、飼い主に対し、薬学的観点からの情報提供やアドバイスを行うことがあります。
研究・学術活動（大学附属動物病院など）: 大学附属の動物医療センターなどでは、動物の疾患や薬物療法に関する臨床研究や基礎研究に携わったり、学会発表や論文執筆を行ったりする機会もあります。

動物病院薬剤師の1日の流れ（例）

動物病院で働く薬剤師の1日は、その病院の規模や診療体制（救急対応の有無など）、そしてその日の予約状況や入院動物の状態によって大きく変動します。ここでは、一般的な外来診療と入院管理を行う動物病院に勤務する薬剤師の1日を例としてご紹介します。

午前（始業準備～午前診療対応）:
- 出勤後、調剤室の清掃、調剤機器の起動・点検、前日からの申し送り事項（入院動物の状態変化、夜間の緊急処方など）の確認。
- 入院動物や手術予定動物の注射薬の調製、内服薬の準備。
- 午前中の外来診療に合わせて、獣医師から発行される処方指示に基づき、調剤業務（用量計算、剤形工夫を含む）と、飼い主への丁寧な服薬指導。
- 獣医師や動物看護師からの医薬品に関する問い合わせ対応。
昼休憩: スタッフ間で交代で休憩。
午後（午後診療対応～医薬品管理・DI業務など）:
- 午後の外来診療に伴う調剤業務と服薬指導。
- 医薬品の在庫確認、不足している医薬品の卸売業者への発注、納品された医薬品の検品・棚入れ。
- DI業務（最新の動物薬情報の収集・整理、院内スタッフ向けの資料作成など）。
- 院内勉強会の準備や、多職種カンファレンスへの参加（定期的に開催される場合）。
- 飼い主からの電話での薬に関する相談対応。
終業準備:
- 調剤室の片付け、調剤記録や薬歴（動物ごとの投薬記録）の最終確認・整理。
- 特殊な管理が必要な医薬品の在庫確認と施錠。
- 翌日の業務準備（予製可能な薬剤の準備など）を行い、終業。

※夜間救急対応を行っている動物病院では、薬剤師もシフト制による夜勤やオンコール待機がある場合があります。

動物病院で働く薬剤師に求められるスキルと知識

動物病院で薬剤師として専門性を発揮するためには、薬学的な基礎知識に加え、動物医療特有の以下のようなスキルや知識が不可欠です。

動物種による薬物動態・薬力学の違いに関する深い知識: 犬、猫、うさぎ、フェレット、鳥類、爬虫類など、対象となる動物種によって、薬の吸収・分布・代謝・排泄の過程（薬物動態）や、薬の効き方・副作用の現れ方（薬力学）が大きく異なるため、各種動物の生理学的特性と薬物応答性に関する深い理解。
動物用医薬品に関する専門知識と人体用医薬品の動物への応用知識: 動物用に承認されている医薬品の種類、用法・用量、副作用情報に加え、治療上必要な場合に人間用の医薬品を動物へ適応外使用する際の科学的根拠、安全性、倫理的側面に関する知識。
精密な用量計算スキル: 動物の体重や体表面積に基づいて、μg/kg（体重1kgあたりのマイクログラム）といった単位での極めて正確な用量計算を行う能力。特に小型動物やエキゾチックアニマルでは、わずかな計算ミスが重大な結果を招く可能性があります。
動物への投薬を容易にするための製剤技術・知識: 動物が嫌がらずに薬を摂取できるよう、錠剤を粉砕してカプセルに詰めたり、嗜好性の高いシロップやペーストに混ぜたり、あるいは経皮吸収製剤の可能性を検討したりといった、製剤学的な知識と技術。
卓越したコミュニケーション能力:
- 飼い主への対応: 動物の病状や治療、薬に対する不安を抱える飼い主に対し、専門的な内容を分かりやすく、かつ共感を持って説明し、信頼関係を築き、治療への協力を得る能力。時には、治療費や予後といったデリケートな内容についても、誠実に対応する必要があります。
- 獣医師・動物看護師との連携: チーム医療を円滑に進めるため、獣医師や動物看護師と専門家として対等な立場で意見交換し、情報を共有し、互いの専門性を尊重しながら協力する能力。
動物に対する深い愛情と理解: 動物が好きであることはもちろん、動物の行動や習性、苦痛のサインなどを理解しようと努め、動物福祉の観点からも薬物療法を考える姿勢。
獣医療関連法規への理解: 獣医師法、獣医療法、動物用医薬品等取締規則、動物の愛護及び管理に関する法律といった、動物医療や動物用医薬品に関連する法律・規制に関する知識。
冷静な観察力・的確な判断力・迅速な問題解決能力: 言葉で症状を伝えられない動物の状態変化を注意深く観察し、副作用の兆候などを早期に発見し、緊急時には獣医師と連携して迅速かつ的確に判断し、問題を解決する能力。

動物病院で薬剤師として働く魅力とやりがい

動物病院で薬剤師として働くことには、人間を対象とする医療現場とは異なる、独自の大きな魅力と深いやりがいがあります。

動物の苦痛を和らげ、生命を救う手助けができる喜び: 自身が関わった薬物療法によって、病気やケガで苦しんでいた動物が元気を取り戻し、その生命を救う手助けができた時には、何物にも代えがたい大きな喜びと達成感を感じられます。
飼い主からの心からの感謝と動物の回復する姿: 治療がうまくいき、動物が回復していく姿を飼い主と共に喜び、飼い主から「ありがとう」という感謝の言葉を直接いただくことは、日々の仕事の大きな励みとなります。
チーム医療の一員としての専門性の発揮: 獣医師や動物看護師といった動物医療の専門家チームの一員として、薬剤師ならではの薬学的知識やスキルを存分に発揮し、治療方針の決定や患者ケアの質の向上に貢献できます。
人間医療とは異なる、動物医療ならではの薬学的探求: 多様な動物種における薬物動態の違い、人体用医薬品の動物への応用、動物特有の疾患に対する薬物療法など、人間医療とは異なる視点からの薬学的探求は、知的好奇心を刺激し、薬剤師としての専門性を深めることに繋がります。
「動物が好き」という気持ちを仕事に活かせる: 動物が好きで、動物たちのために何かをしたいという強い思いを持つ人にとっては、その気持ちを日々の仕事に直接活かせる、非常にやりがいのある環境です。

動物病院で働く薬剤師の大変さ・注意点

魅力的な側面がある一方で、動物病院で働く際には以下のような大変さや注意点も理解しておく必要があります。

動物は言葉で症状を伝えられない難しさ: 動物は「どこが痛い」「どんなふうに辛い」といったことを言葉で伝えることができないため、その状態を正確に把握し、薬の効果や副作用を評価することが非常に難しい場合があります。飼い主からの情報や、行動の変化などを注意深く観察する能力が求められます。
多様な動物種への対応と幅広い知識の必要性: 犬や猫だけでなく、うさぎ、フェレット、ハムスター、鳥類、爬虫類、両生類といったエキゾチックアニマルを診療する動物病院もあり、それぞれの動物種で薬の効き方や副作用の現れ方、適切な投与量が大きく異なるため、非常に幅広い知識と経験が必要となります。
飼い主とのコミュニケーションの重要性と難しさ: 治療方針や費用、予後といったデリケートな内容について、飼い主の感情に配慮しながら、分かりやすく、かつ納得してもらえるように説明する高度なコミュニケーション能力が求められます。時には、飼い主の意向と獣医学的な最適解との間で難しい判断を迫られることもあります。
獣医師の指示のもとでの業務と薬剤師の裁量: 動物医療においては、最終的な診断と治療方針の決定は獣医師が行い、薬剤師は獣医師の指示のもとで薬物療法をサポートする立場となります。人間医療の現場と比較して、薬剤師が独立して判断を下せる範囲が限定的であると感じる場合もあるかもしれません。
薬剤師の配置人数と業務負担: 特に小規模な動物病院では、薬剤師が一人または非常に少ない人数で、調剤から医薬品管理、服薬指導、DI業務まで幅広い業務をカバーしなければならず、業務負担が大きくなることや、専門的な相談相手がいない状況で判断を求められるプレッシャーを感じることがあります。
求人数の限定性と専門性への適応: 一般的な調剤薬局や人間を対象とする病院と比較すると、動物病院の薬剤師求人はまだ数が少なく、特に未経験者が就職・転職する際のハードルが高い場合があります。また、一度動物医療の分野に進むと、その専門性が高まる一方で、将来的に人間医療の分野へ戻る際に、経験のギャップを感じる可能性も考慮する必要があります。
動物アレルギーへの配慮: 動物の毛やフケなどに対するアレルギー体質がある場合は、勤務が難しい可能性があります。

動物病院薬剤師のキャリアパスと給与の傾向

動物病院で働く薬剤師のキャリアパスや給与は、その施設の規模や種類（個人経営、法人経営、大学附属など）、そして本人の専門性や経験によって様々です。

キャリアパスの例:
- 特定の動物種や疾患領域の専門性を深める: 例えば、犬猫の循環器疾患、腫瘍（がん）治療、皮膚科疾患、あるいはエキゾチックアニマルの薬物療法といった特定の分野で深い知識と経験を積み、その分野のスペシャリストとして獣医師や飼い主から頼りにされる存在になる。
- 動物病院の薬剤部門の責任者: 経験を積み、リーダーシップを発揮して、薬剤部門の責任者（薬剤科長など、施設による呼称）として、部門全体の運営管理、薬剤師の教育・指導、医薬品管理体制の構築などを担う。
- 動物用医薬品メーカーや卸売業者への転職: 動物病院での臨床経験を活かして、動物用医薬品の開発、学術、マーケティング、あるいは品質管理といった分野で活躍する。
- 研究・教育分野への進出: 大学附属の動物医療センターなどで、動物の薬物療法に関する臨床研究や基礎研究に携わったり、獣医学部や薬学部で動物薬学に関する教育・指導を行ったりする。
- 独立開業（稀なケース）: 動物専門の調剤薬局といった形態はまだ一般的ではありませんが、将来的にそのような新しい分野を切り拓く可能性もゼロではありません。
給与の一般的な傾向:
- 動物病院で働く薬剤師の給与は、一般的に、人間を対象とする調剤薬局や病院の薬剤師と比較して、同等か、場合によってはやや低い傾向が見られることもあります。これは、動物病院の経営規模や、診療報酬制度の違いなどが影響していると考えられます。
- しかし、大規模な動物病院や大学附属の動物医療センター、あるいは高度な専門医療を提供する二次診療施設などでは、薬剤師の専門性が高く評価され、比較的良好な給与水準となることもあります。
- 給与額は、勤務する施設の規模、地域、そして個人の経験年数、専門スキル（特定の動物種や疾患領域の知識、手術室業務経験など）、役職などによって大きく変動します。
- 薬剤師資格に対する基本的な手当は期待できますが、人間医療の分野ほど専門薬剤師制度が確立していないため、資格手当の種類や額は限定的かもしれません。

まとめ

動物病院で働く薬剤師は、犬や猫をはじめとする様々な動物たちの健康と生命を守るため、調剤、服薬指導、医薬品管理、そして獣医師や動物看護師との緊密なチーム医療を通じて、その薬学的専門知識と技術を駆使し、多岐にわたる重要な業務を担っています。

人間を対象とする医療とは異なる、動物種ごとの特性や飼い主とのコミュニケーションといった特有の難しさや専門性が求められますが、それ以上に、言葉を話せない動物たちの苦痛を和らげ、その回復を助け、そして飼い主の笑顔を見ることができるという、大きなやりがいと社会貢献を実感できる仕事です。動物への深い愛情と、薬学の専門知識を活かして動物医療の発展に貢献したいと考える方にとって、動物病院薬剤師は非常に魅力的で、挑戦しがいのあるキャリアの一つと言えるでしょう。この記事が、動物病院で働く薬剤師の仕事内容についての理解を深める一助となれば幸いです。