学校で働く薬剤師の給料は?「学校薬剤師」と「大学教員」の仕事と待遇
薬剤師の活躍の場は、薬局や病院、製薬会社だけにとどまりません。「学校」という教育現場も、薬剤師がその専門性を活かせるフィールドの一つです。しかし、「学校で働く薬剤師の給料はどれくらいなのだろう?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。この記事では、主に「学校薬剤師」と、薬剤師養成課程のある「大学・専門学校の教員」という二つの視点から、学校で働く薬剤師の仕事内容や給料(報酬)について、一般的な情報や傾向を解説します。
「学校薬剤師」の仕事と給料(報酬)
「学校薬剤師」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。学校薬剤師は、子どもたちが健康で安全な学校生活を送れるよう、学校の保健管理において専門的な立場から指導・助言を行う薬剤師のことです。
学校薬剤師の役割と業務内容
学校薬剤師は、学校保健安全法に基づいて、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校に置かれることが定められています(大学を除く)。主な業務内容は以下の通りです。
- 学校環境衛生の検査・指導: 教室の空気、飲料水、プールの水質、採光・照明、騒音など、学校内の環境衛生に関する検査や測定を行い、問題があれば指導・助言をします。
- 医薬品の管理指導: 保健室にある医薬品(救急用医薬品など)の適切な管理方法や使用について、養護教諭や教職員に指導・助言を行います。
- 薬物乱用防止教育への協力: 児童生徒に対して、薬物の危険性や正しい知識を伝えるための授業や講演会で講師を務めるなど、薬物乱用防止教育に協力します。
- その他: アレルギー疾患対策、感染症対策、健康相談への対応など、学校保健に関する様々な活動に関わります。
学校薬剤師の雇用形態と給料(報酬)
学校薬剤師の多くは、非常勤の嘱託職員として、教育委員会や学校法人から委嘱される形となります。毎日学校に常駐するわけではなく、月に数回、あるいは定期的な検査や行事の際に活動するのが一般的です。
そのため、学校薬剤師の給料(報酬)は、正規雇用の薬剤師のような高額な月給や年収という形ではなく、謝金や手当として支払われることが多いのが実情です。
- 報酬の形態: 年額や月額で一定額が支払われる場合や、出務日数や活動時間に応じて支払われる場合があります。
- 金額の目安: 金額は、委嘱する自治体や学校、担当する学校数、活動内容や頻度によって大きく異なります。一般的には、ボランティア的な要素も含む活動と認識されており、年間数万円から十数万円程度というケースも少なくありません。複数の学校を担当することで報酬額が増えることもありますが、これだけで生計を立てるのは難しい場合が多いでしょう。
- 兼務が一般的: 多くの学校薬剤師は、調剤薬局や病院などに勤務しながら、地域貢献の一環として学校薬剤師の業務を兼務しています。
学校薬剤師になるには・やりがい
学校薬剤師になるには、地域の薬剤師会に所属し、そこからの推薦や紹介を通じて委嘱されるのが一般的です。
報酬面では大きな期待は難しいかもしれませんが、地域の子どもたちの健康と安全を守るという社会貢献性の高い活動であり、薬剤師としての専門知識を教育現場で直接活かせることに大きなやりがいを感じる方が多くいます。
薬剤師養成課程のある「大学・専門学校の教員」の仕事と給料
薬剤師の資格や知識を活かして「学校」で働くもう一つの道として、薬学部のある大学や薬剤師養成を目的とする専門学校で教員として働くという選択肢があります。
大学・専門学校教員の役割と業務内容
大学教員の主な役割は、「教育」「研究」「社会貢献」そして「大学運営」です。薬学部の教員であれば、次世代の薬剤師を育成するための講義、実習指導、卒業研究の指導などが中心となります。また、自身の専門分野での研究活動を進め、論文発表や学会発表を行うことも重要な業務です。その他、学生のキャリア相談や、入試業務、各種委員会の運営など、大学運営に関わる業務も多岐にわたります。
専門学校の教員も同様に、薬剤師や関連職種を目指す学生への教育が主な業務となりますが、大学と比較してより実践的な技術指導に重点が置かれる傾向があります。
大学・専門学校教員の職位と求められるもの
大学教員には、一般的に助教、講師、准教授、教授といった職位があります。職位が上がるにつれて、教育・研究における責任や役割が大きくなり、給与も上昇します。
- 助教: 主に教授や准教授の指導のもと、教育・研究活動に従事します。
- 講師: 助教よりも独立して教育・研究を行うことが期待されます。
- 准教授: 教育・研究において中心的な役割を担い、学生指導や研究室運営も行います。
- 教授: 学部や学科の運営、研究プロジェクトのリーダーなど、教育・研究の両面で指導的な立場となります。
大学教員、特に研究・教育職を目指す場合、多くは博士号(薬学、医学、理学など関連分野)の取得が求められます。また、これまでの研究実績(論文、学会発表など)や教育経験も重視されます。
大学・専門学校教員の給料(報酬)
大学・専門学校教員の給料は、設置主体(国立、公立、私立)、職位、経験年数、業績などによって大きく異なります。
- 国立大学法人・公立大学: 職員の給与は、それぞれの法人や自治体の規定に基づいて定められています。多くの場合、国家公務員や地方公務員の給与体系に準じた給与テーブルが用いられ、職位や勤続年数に応じて昇給していきます。
- 私立大学・専門学校: 給与体系は各学校法人の規定によります。一般的に、国立・公立と比較して給与水準に幅があり、人気や経営状況の良い大学では比較的高水準の給与が期待できる一方、そうでない場合もあります。
- 職位による差: 当然ながら、助教から教授へと職位が上がるにつれて給与は大きく上昇します。教授職になると、他の薬剤師の職種と比較しても遜色のない、あるいはそれ以上の高い給与水準となることもあります。ただし、教授に至るまでには長い期間と顕著な業績が必要です。
大学教員の給与は、一般的な薬剤師の勤務と比較して、研究活動や教育活動への貢献が評価されるという特徴があります。
学校薬剤師と大学教員の給料比較と働き方の違い
ここまで見てきたように、「学校薬剤師」と「大学教員」では、その仕事内容も給料(報酬)も大きく異なります。
特徴 | 学校薬剤師 | 大学・専門学校教員(常勤) |
主な役割 | 学校保健衛生管理、薬物乱用防止教育など | 薬学教育、研究、学生指導、大学運営など |
雇用形態 | 非常勤(嘱託)がほとんど | 常勤(任期付きの場合もあり) |
給料(報酬) | 謝金・手当として年額数万~十数万円程度が一般的 | 職位・経験により大きく異なる。教授職は比較的高水準 |
主な収入源 | 他の仕事との兼務が前提 | 主たる収入源となり得る |
勤務時間 | 月数回、数時間程度 | フルタイム勤務(研究・教育時間は裁量も) |
求められるもの | 地域貢献の意識、薬剤師としての基礎知識 | 高度な専門知識、研究能力、教育能力、博士号など |
まとめ
「学校」というキーワードで薬剤師が関わる仕事として、今回は主に「学校薬剤師」と「大学・専門学校の教員」を取り上げました。
学校薬剤師は、地域の子どもたちの健康を守るという社会貢献性の高い役割を担いますが、その報酬は謝金程度であることが多く、主な収入源とするのは難しいのが現状です。多くは他の薬剤師業務と兼務しながら活動しています。
一方、大学・専門学校の教員として働く場合は、次世代の薬剤師育成や学術研究に携わることができ、常勤であれば安定した収入が期待できます。特に教授などの上位職に就けば、高い給与水準も目指せますが、そこに至るまでには高度な専門性や研究実績、教育経験が求められます。
薬剤師として「学校」というフィールドで働くことを考える際には、どのような形で関わりたいのか、どのような役割を担いたいのか、そして報酬を含めた待遇面で何を重視するのかを明確にし、それぞれの仕事内容や特徴をよく理解した上で、ご自身のキャリアプランと照らし合わせて検討することが大切です。