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薬剤師の給料は本当に下がる?将来の動向と影響要因、対策を解説

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「薬剤師の給料は今後下がるのではないか?」――このような声を耳にし、将来に不安を感じている薬剤師の方や、これから薬剤師を目指す学生さんもいらっしゃるかもしれません。確かに、医療制度や薬剤師を取り巻く環境は変化しており、給与動向に影響を与える可能性のある要因も存在します。しかし、一方で薬剤師の専門性がより評価され、給与維持・向上に繋がる道も示されています。この記事では、薬剤師の給料が下がると言われる背景や具体的な要因、そして変化の時代に薬剤師としてどのように備えるべきかについて、多角的に考察していきます。

薬剤師の給料が下がると言われる背景

近年、薬剤師の給与に対して懸念の声が聞かれる背景には、いくつかの社会的な動きや業界の変化があります。国の医療費抑制策、薬剤師数の増加傾向、AIやテクノロジーの進化などが、将来の給与動向に影響を与えるのではないかと考えられています。これらの要因が複合的に絡み合い、薬剤師の働き方や給与体系に変化をもたらす可能性が指摘されています。

給料低下に繋がりかねない主な要因

薬剤師の給与にマイナスの影響を与える可能性のある主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 薬剤師数の増加と需給バランスの変化: 薬学部の6年制移行後、全国的に薬学部が新設され、薬剤師の資格を持つ人の数は増加傾向にあります。特に都市部など一部の地域では、薬剤師の供給が需要を上回り、採用における競争が以前より穏やかになることで、給与水準が上がりにくくなる、あるいは相対的に低下する可能性が懸念されています。
  • 診療報酬・調剤報酬改定の影響: 国民医療費の適正化は国の重要な政策課題であり、診療報酬や調剤報酬は定期的に改定が行われます。この改定の中で、調剤基本料や薬剤料、特定の技術料などが引き下げられると、薬局や病院の収益に直接影響し、結果として薬剤師の人件費にも抑制圧力がかかる可能性があります。特に、対物業務中心の評価から対人業務中心の評価へのシフトに対応できない場合、経営的に厳しくなることも考えられます。
  • 薬価差益の縮小: 薬価は国によって定められており、定期的な薬価改定によって薬価は引き下げられる傾向にあります。これにより、かつて薬局経営の収益源の一つであった薬価差益(仕入れ値と薬価の差)は縮小しており、薬局の収益構造に影響を与えています。
  • AI・テクノロジーの進化と業務代替: 調剤業務の自動化(ピッキングロボット、自動分包機など)や、AIを活用した処方監査支援システム、電子お薬手帳の普及などが進んでいます。これらのテクノロジーは業務効率を大幅に向上させる一方で、これまで薬剤師が行ってきた一部のルーチン業務を代替する可能性があり、薬剤師の需要や業務内容に変化をもたらすと考えられています。
  • 業界再編や競争激化: ドラッグストアや調剤薬局チェーンでは、M&Aによる業界再編が進み、市場の寡占化が進む傾向にあります。これにより、企業間の価格競争やサービス競争が激化し、コスト削減の一環として人件費が抑制される動きが出てくる可能性も否定できません。

一方で、給与が維持・向上する可能性のある薬剤師とは?

上記のような懸念材料がある一方で、薬剤師の専門性や役割の重要性が再認識され、特定の分野やスキルを持つ薬剤師の給与が維持されたり、むしろ向上したりする可能性も十分にあります。

  • 高度な専門性を持つ薬剤師: がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、精神科専門薬剤師、緩和薬物療法認定薬剤師、在宅療養支援認定薬剤師など、特定の疾患領域や業務において高度な知識と技術を持つ認定薬剤師・専門薬剤師の需要は高まっています。これらの専門性を活かして質の高い医療に貢献できる薬剤師は、より高い評価と待遇を得られる可能性があります。
  • 対人業務・コミュニケーション能力に長けた薬剤師: 「モノからヒトへ」という流れの中で、患者さん一人ひとりに寄り添い、丁寧な服薬指導や健康相談、副作用モニタリングなどを行う「かかりつけ薬剤師」としての役割がますます重要になっています。在宅医療や地域包括ケアシステムにおいても、多職種と円滑に連携し、患者中心のケアを提供できるコミュニケーション能力の高い薬剤師は不可欠な存在です。
  • マネジメント能力・経営スキルを持つ薬剤師: 薬局長やエリアマネージャーとして、店舗運営やスタッフ育成、収益管理などのマネジメント能力を発揮できる薬剤師や、薬局経営に参画し、新しいヘルスケアサービスの開発・提供などに取り組める薬剤師は、高い評価を得られるでしょう。
  • 薬剤師が不足している地域・分野で働く薬剤師: 地方やへき地など、依然として薬剤師が不足している地域では、人材確保のために好条件の求人が出されることがあります。また、製薬企業の研究開発職、行政機関の薬事監視員、大学などの教育・研究職など、特定の分野では専門知識を持つ薬剤師が求められています。

給料低下の不安にどう備えるか

将来の給与動向に不安を感じる薬剤師の方もいるかもしれませんが、変化の時代だからこそ、主体的にキャリアを考え、行動することが重要です。以下に、薬剤師個人としてできる備えをいくつか挙げます。

  • 継続的な学習とスキルアップ: 常に最新の医療情報や薬学知識を学び、専門性を高め続けることが不可欠です。認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得を目指す、特定の疾患領域に関する知識を深める、新しい技術やガイドラインを習得するなど、自己研鑽を怠らない姿勢が求められます。
  • コミュニケーション能力の向上: 患者さんや他の医療従事者との円滑なコミュニケーションは、質の高い医療を提供する上で欠かせません。傾聴力、共感力、説明力などを意識して磨きましょう。
  • 変化への対応力と柔軟性: 医療制度やテクノロジーの変化に柔軟に対応し、新しい業務や役割にも積極的に挑戦する姿勢が重要です。これまでのやり方にとらわれず、常に新しい価値を提供できるよう努めましょう。
  • キャリアプランの明確化と主体的な行動: 自分がどのような薬剤師になりたいのか、どのような分野で貢献したいのかを明確にし、それに向けて具体的なキャリアプランを立て、主体的に行動することが大切です。転職や異動も、キャリアアップのための一つの選択肢となり得ます。
  • 自身の市場価値を客観的に把握する: 自分のスキルや経験が、現在の医療市場でどの程度評価されるのかを客観的に把握することも重要です。必要に応じて、転職エージェントなどの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

まとめ

薬剤師の給料が将来的に一律に下がると断言することはできません。確かに、薬剤師数の増加や医療費抑制策など、給与にマイナスの影響を与える可能性のある要因は存在します。しかし同時に、薬剤師の専門性や対人業務の重要性はますます高まっており、高度なスキルや知識を持つ薬剤師、社会の変化に対応できる薬剤師は、引き続き必要とされ、評価されるでしょう。

重要なのは、変化を恐れずに自己の専門性を高め、社会や患者さんのニーズに応え続けることです。個々の薬剤師が主体的にキャリアを考え、継続的な学習とスキルアップに励むことで、給与面だけでなく、仕事のやりがいや将来性においても、より良い道を切り拓いていくことができるはずです。

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黒岩満(くろいわみつる)
黒岩満(くろいわみつる)
キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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