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薬剤師の新しい働き方「在宅勤務」:求人の特徴、仕事内容、可能性を徹底解説

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近年、働き方の多様化が急速に進み、薬剤師のキャリアパスにも新たな選択肢が生まれています。その一つが「在宅勤務(リモートワーク、テレワーク)」というスタイルです。通勤時間の削減や柔軟な働き方が実現できる可能性がある一方で、業務内容や求められるスキルは従来の働き方と異なる点も多くあります。「薬剤師が在宅でできる仕事って何?」「どんな求人があるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、薬剤師の在宅勤務に関する仕事内容、メリット・デメリット、必要なスキル、求人の探し方、そしてその将来性について詳しく解説します。

薬剤師の「在宅勤務」とは?実現可能な業務と現状

在宅勤務とは、オフィスに出社せず、自宅やその他の遠隔地で業務を行う働き方のことです。薬剤師の業務は、患者さんとの対面でのコミュニケーションや、医薬品の物理的な取り扱いが基本となるため、全ての業務が在宅で行えるわけではありません。しかし、IT技術の進歩や、近年の感染症対策、働き方改革の流れを受けて、薬剤師の業務の中でも在宅勤務が可能な領域が徐々に広がってきています。

薬剤師業務における在宅勤務の可能性と限界

調剤業務そのものや、患者さんへの直接的な薬剤の手渡しといった物理的な作業は、現時点(2025年5月)では在宅で行うことは困難です。しかし、オンライン服薬指導のように、情報通信機器を活用することで部分的に在宅での対応が可能になった業務や、元々オフィスワークに近い性質の業務(DI業務、資料作成など)では、在宅勤務の導入が進んでいます。

在宅勤務導入の背景

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展、オンライン診療やオンライン服薬指導に関する規制緩和の動き、そしてワークライフバランスを重視する社会的な意識の高まりなどが、薬剤師の在宅勤務という働き方を後押ししています。

薬剤師が在宅勤務で携われる主な業務内容

薬剤師が在宅勤務で担当できる業務は、多岐にわたります。以下に代表的な例を挙げます。

  • オンライン服薬指導: 薬局や病院に所属し、情報通信機器(スマートフォン、タブレット、PCなど)を用いて、患者さんの自宅や入居施設などにいる患者さんに対して服薬指導を行います。処方箋の受付から薬剤の配送、決済までオンラインで完結するシステムと連携して行われることが多く、法的要件(情報通信機器を用いた服薬指導の実施要領など)を遵守し、対象となる患者さんの状態や同意を得た上で実施されます。
  • DI(医薬品情報)業務: 医薬品に関する国内外の最新情報を収集・分析・評価し、医療従事者や患者さんからの問い合わせに電話やメールで対応したり、DIニュースや学術資料を作成したりする業務です。専門知識と情報検索スキルが求められます。
  • 学術・メディカルライティング: 製薬企業や医療関連企業、学術団体などから依頼を受け、医薬品の製品情報概要、インタビューフォーム、学術論文の翻訳・要約、患者さん向け資材、教育研修コンテンツなどの作成やレビューを行います。
  • 薬事関連業務(一部): 医薬品や医療機器の承認申請に必要な書類作成のサポートや、関連法規・ガイドラインの調査、翻訳といった業務の一部を在宅で行う場合があります。
  • ファーマコヴィジランス(安全性情報管理)関連業務(一部): 国内外の副作用情報を収集し、データベースへの入力、評価の補助、報告書作成のサポートなど、医薬品の安全性監視に関わる業務の一部を在宅で行うことがあります。
  • 薬剤師向け教育・研修コンテンツ作成、オンライン講師: 薬剤師や薬学生向けの研修資料やeラーニングコンテンツの作成、オンラインセミナーの講師などを担当します。
  • ヘルスケア関連のITサービス企業での業務: 医療系アプリやウェブサービスのコンテンツ作成・監修、薬剤師の専門知識を活かしたカスタマーサポート、オンライン健康相談といった業務で、在宅勤務の求人が見られることがあります。
  • その他: 医療・健康関連のウェブメディアや雑誌の記事執筆・監修、製薬企業や健康食品メーカーなどが設置する薬剤師相談窓口(コールセンター業務)なども、在宅で可能な場合があります。

薬剤師が在宅勤務で働くメリット

在宅勤務という働き方には、薬剤師にとって多くのメリットがあります。

  • 通勤時間の削減、時間を有効活用できる: 毎日の通勤にかかる時間と労力を削減でき、その時間を自己研鑽や家事、趣味などに充てることができます。
  • 働く場所の自由度が高い(完全在宅の場合): 完全在宅勤務であれば、自宅やコワーキングスペースなど、自分が最も集中できる環境で働くことができます。
  • 育児や介護との両立がしやすい: 通勤時間がないことや、休憩時間を柔軟に取れる可能性があるため、育児中や家族の介護をしている薬剤師にとって、仕事と家庭の両立がしやすくなります。
  • 集中して業務に取り組める環境を自身で構築可能: オフィスの喧騒や割り込み業務が少ない環境を自分で作ることで、DI業務や資料作成といった集中力を要する業務の効率を高められる場合があります。
  • 地方在住でも都市部の企業の仕事に関われる可能性: 例えば、福岡県筑前町のような地方に住みながら、東京や大阪に本社を置く企業の求人に応募し、在宅で専門性を活かした業務に携わるといった働き方も可能です。
  • 感染症リスクの低減: 通勤やオフィスでの接触が減るため、感染症の流行時にもリスクを低減できます。

薬剤師が在宅勤務で働くデメリット・注意点

多くのメリットがある一方で、在宅勤務には以下のようなデメリットや注意点も存在します。

  • コミュニケーション不足になりやすい: 対面での気軽な雑談や相談が減るため、同僚や上司とのコミュニケーションが希薄になったり、情報共有に遅れが生じたりする可能性があります。意識的なコミュニケーション努力が必要です。
  • 自己管理能力が強く求められる: 勤務時間や業務の進捗、休憩時間などを自身で厳密に管理する必要があります。誘惑が多く集中しにくい環境では、モチベーション維持も課題となります。
  • 業務内容が限定される場合がある: 前述の通り、物理的な調剤業務や対面が必須となる業務は在宅では行えません。そのため、在宅勤務で担当できる業務範囲が限定されることがあります。
  • 情報セキュリティ対策の徹底が必要: 患者さんの個人情報や企業の機密情報を取り扱う場合、自宅のネットワーク環境やPCのセキュリティ対策を徹底し、情報漏洩のリスクを最小限に抑える必要があります。
  • 労働時間とプライベートの区別がつきにくい: 自宅が職場となるため、仕事と私生活の境界が曖昧になりやすく、長時間労働に繋がったり、オンオフの切り替えが難しくなったりすることがあります。
  • 運動不足や孤独感を感じやすい: 通勤がなくなることで運動量が減少しやすく、また一人で作業することが多いため、孤独感や社会からの疎外感を感じる人もいます。
  • 評価制度が整備されていない場合がある: 在宅勤務者の業務成果や貢献度を公平に評価するための制度が、まだ十分に整備されていない企業もあります。
  • ネットワーク環境や作業スペースの確保が必要: 安定した高速インターネット回線や、業務に集中できる静かな作業スペース、必要なOA機器(PC、プリンター、ウェブカメラなど)を自身で用意または整備する必要があります(企業によっては貸与・補助あり)。

在宅勤務薬剤師に求められるスキルと準備

在宅勤務で薬剤師として成果を出すためには、専門知識に加え、以下のようなスキルや準備が重要になります。

  • 高い専門知識と実務経験(業務内容による): 担当する業務分野(オンライン服薬指導、DI、薬事など)における深い専門知識と、それを裏付ける実務経験が求められることが多いです。
  • ITリテラシー: PCの基本操作はもちろん、Word、Excel、PowerPointといったオフィスソフト、ウェブ会議システム(Zoom、Teamsなど)、チャットツール、クラウドサービスなど、業務で使用する各種ツールやソフトウェアをスムーズに使いこなせる能力。
  • 自己管理能力: 勤務時間、タスクの優先順位付け、進捗管理、休憩時間の確保、体調管理、モチベーション維持など、自身を律して計画的に業務を遂行する高い自己管理能力。
  • コミュニケーション能力: メール、チャット、ウェブ会議など、オンラインを中心としたコミュニケーション手段を用いて、相手に誤解なく情報を伝え、円滑な意思疎通を図る能力。相手の状況を察する力や、積極的に情報を発信する姿勢も重要です。
  • 情報セキュリティ意識: 患者情報や企業秘密などの機密情報を適切に取り扱い、情報漏洩を防ぐための高いセキュリティ意識と知識。
  • 集中できる作業環境の整備: 静かで業務に集中できる個室やスペース、安定したインターネット回線、長時間の作業でも身体に負担の少ない椅子やデスクなどを準備することが望ましいです。

薬剤師の在宅勤務求人の探し方

薬剤師向けの在宅勤務の求人を探す方法はいくつかあります。

  • 薬剤師専門の求人サイト: 「リクナビ薬剤師」「マイナビ薬剤師」「薬キャリAGENT」「ファルマスタッフ」といった大手求人サイトで、「在宅勤務」「リモートワーク」「テレワーク」「オンライン服薬指導」「DI業務 在宅」といったキーワードで検索します。詳細検索で「在宅勤務可」といった条件を指定できる場合もあります。
  • 一般的な求人サイト: Indeedや求人ボックスといったアグリゲーション型求人サイトでも、同様のキーワードで検索すると、様々な企業や医療機関からの在宅勤務求人が見つかることがあります。
  • 企業の採用ホームページ: 特にITヘルスケア関連企業、製薬企業(学術部門、DIセンターなど)、CRO(メディカルライティング部門など)、オンライン診療・服薬指導サービスを提供している企業の採用ページを直接確認するのも有効です。
  • 転職エージェントの活用: 在宅勤務の求人や、リモートワークを導入している企業の情報に詳しい転職エージェントに相談し、非公開求人を紹介してもらうのも良いでしょう。自身のスキルや希望に合った案件を提案してくれる可能性があります。
  • フリーランス薬剤師向けのマッチングプラットフォーム: 単発の業務委託案件やプロジェクト単位の仕事を探せるプラットフォームの中には、在宅で可能なDI業務や記事執筆・監修などの案件が見つかることがあります。
  • 知人や同僚からの紹介、人脈の活用: これまでの職場で築いた人脈や、薬剤師仲間からの紹介で、在宅勤務可能な仕事の情報が得られることもあります。

在宅勤務薬剤師の求人の特徴と給与水準

薬剤師の在宅勤務求人は、徐々に増加傾向にはありますが、全体としてはまだ限定的であり、いくつかの特徴があります。

  • 求人数の状況: 調剤薬局や病院での対面業務が中心である薬剤師の特性上、完全在宅勤務の求人数は、他の職種と比較するとまだ多いとは言えません。ただし、オンライン服薬指導の普及や、DI業務・学術業務のアウトソーシング化などにより、少しずつ増加しています。
  • 職種による違い: オンライン服薬指導担当、DI担当、メディカルライター、薬事コンサルタント、医療系コンテンツクリエイターなど、在宅で可能な職種は多岐にわたりますが、それぞれの業務内容や求められるスキル、経験は大きく異なります。
  • 雇用形態: 正社員としての在宅勤務制度を導入している企業もありますが、契約社員や業務委託(フリーランス)といった形態での募集も少なくありません。
  • 給与水準: 業務内容、求められるスキル、経験、雇用形態、企業の規模や業種によって大きく異なります。一般的なオフィス勤務の同職種と比較して、通勤手当がない代わりに在宅勤務手当が支給されたり、成果報酬型の契約であったりする場合もあります。一概に高いとも低いとも言えませんが、専門性が高く、希少なスキルを持つ場合は好条件となることもあります。

薬剤師の在宅勤務の将来性とキャリアパス

薬剤師の在宅勤務という働き方は、今後さらに可能性が広がっていくと期待されます。

  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展による可能性の拡大: AIを活用した医薬品情報検索システム、電子カルテ・電子薬歴のさらなる連携、ウェアラブルデバイスからの健康データの活用など、医療分野におけるDXが進むことで、薬剤師が在宅で関与できる業務範囲が拡大する可能性があります。
  • オンライン診療・服薬指導の普及と薬剤師の役割: 2020年以降、規制緩和が進んだオンライン診療・オンライン服薬指導は、今後も地域医療や感染症対策、利便性向上の観点から一定の需要が見込まれます。これに伴い、オンライン服薬指導を専門に行う薬剤師の役割はより重要になるでしょう。
  • 専門性を活かした多様なキャリア: 在宅でDI業務のスペシャリストを目指したり、メディカルライターとして専門記事を執筆したり、薬事コンサルタントとして企業の製品開発を支援したりと、特定の専門分野を深めることで、場所を選ばずに活躍できるキャリアを築けます。
  • ライフワークバランスを重視した働き方の選択肢として定着の可能性: 育児や介護、あるいは自身の健康上の理由などで通勤が難しい薬剤師にとって、在宅勤務はキャリアを継続するための重要な選択肢となります。企業側も、優秀な人材を確保するために、柔軟な働き方の一つとして在宅勤務制度を整備していく動きが加速すると考えられます。

まとめ:薬剤師の新たなワークスタイル「在宅勤務」の可能性と実現に向けて

薬剤師の在宅勤務は、まだ発展途上の働き方ではありますが、IT技術の進歩や社会のニーズの変化に伴い、その可能性は着実に広がっています。通勤時間の削減、働く場所の自由、ワークライフバランスの向上といった多くのメリットがある一方で、自己管理能力やコミュニケーションの工夫、情報セキュリティへの配慮といった課題も存在します。

この記事でご紹介した情報が、薬剤師としての新しい働き方として在宅勤務に関心を持つ皆さんにとって、その実情や可能性を具体的に理解し、自身のキャリアプランを考える上での一助となれば幸いです。ご自身のスキルや適性、ライフスタイルを考慮しながら、在宅勤務という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

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黒岩満(くろいわみつる)
黒岩満(くろいわみつる)
キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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