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薬剤師の年収、働く「場所」でどう変わる?地域別のリアルな給与事情と要因を解説

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薬剤師としてのキャリアを考える際、多くの方が注目するのが「年収」でしょう。そして、その年収は、勤務する「場所」によって大きく変動する可能性があることをご存知でしょうか。都市部と地方、あるいは薬剤師が充足している地域と不足している地域では、薬剤師の給与水準にどのような違いが見られるのでしょうか。

この記事では、薬剤師の年収が勤務地によってどのように変わるのか、そのリアルな給与事情と背景にある要因について、一般的な情報に基づいて詳しく解説していきます。

薬剤師の年収に「場所」が影響するとは?

薬剤師の年収に「場所」が影響する背景には、いくつかの理由が考えられます。

  • 地域による経済規模や物価の違い: 一般的に、経済規模が大きい都市部では物価も高い傾向にあり、それが給与水準に反映されることがあります。しかし、薬剤師の場合は少し異なる側面もあります。
  • 薬剤師の需給バランス(偏在): 薬剤師の数は全国一律ではなく、地域によって偏り(偏在)が見られます。薬剤師が不足している地域では、人材を確保するために高い給与を提示する傾向があります。
  • 医療機関の分布や種類: 地域によって、大規模病院が多い、あるいは調剤薬局が密集しているなど、医療機関の状況は異なります。これも薬剤師の求人状況や待遇に影響を与える可能性があります。

【全国的な傾向】薬剤師の年収、地域差はどの程度?

薬剤師の年収における地域差は、実際に存在すると言われています。

一般的に、地方の薬剤師不足が深刻な地域ほど、年収が高くなる傾向が見られます。これは、薬剤師を確保するために、都市部よりも好条件(高い給与、住宅手当など)を提示する薬局や医療機関が多いためです。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」などのデータを見ても、都道府県別で薬剤師の平均年収を比較すると、必ずしも大都市圏が最も高いわけではなく、むしろ地方の県が上位に来ることもあります。

例えば、一部の調査では、九州地方や東北地方、中国・四国地方などで平均年収が高いとされる県が見られる一方で、薬剤師の数が多い東京都や大阪府などの大都市圏では、全国平均に近いか、場合によってはそれを下回るケースも報告されています。これは、大都市圏では薬学部を持つ大学が多く、薬剤師の供給が比較的安定しているため、採用競争が地方ほど激しくないことが一因と考えられます。

なぜ場所によって薬剤師の年収に差が出るのか?主な要因

薬剤師の年収に地域差が生じる主な要因を、さらに詳しく見ていきましょう。

  • 薬剤師の需要と供給のバランス: これが最も大きな要因と言えます。薬剤師の数が少なく、一方で医療機関からの求人が多い地域では、人材獲得競争が激化し、結果として給与水準が押し上げられます。特に、人口減少や高齢化が進む地方では、若い薬剤師の確保が難しく、高い待遇を提示せざるを得ない状況があります。
  • 地域手当・僻地手当などの有無: 勤務地によっては、基本給に加えて地域手当や僻地手当などが支給されることがあります。これは、生活環境の厳しさや都市部とのアクセスなどを考慮したもので、年収を押し上げる要因となります。
  • 物価水準・生活費の違い: 一般的に都市部は地方に比べて物価や家賃などの生活費が高いため、名目上の年収が高くても、実質的な生活の豊かさ(可処分所得)は地方と変わらない、あるいは地方の方が高いというケースも考えられます。年収を見る際には、その地域の生活コストも考慮することが大切です。
  • 医療機関の種類と経営状況: 地域によって、特定の診療科に強みを持つ病院が集中していたり、大手チェーン薬局の進出状況が異なったりします。それぞれの医療機関や企業の経営状況、そして地域における診療報酬の算定状況なども、間接的に薬剤師の給与に影響を与える可能性があります。
  • 企業の給与体系: 全国展開している大手チェーン薬局の場合、地域ごとに給与テーブルを調整していることもあれば、全国一律に近い基準を設けていることもあります。一方、地域密着型の個人経営薬局などでは、経営者の判断や地域の慣習によって給与が決定されるため、ばらつきが大きくなる傾向があります。

【具体的な場所のイメージ】薬剤師の年収が高いとされるのはどんな場所?

一般的に、以下のような場所では薬剤師の年収が高い傾向が見られると言われています。

  • 薬剤師が不足している地方(特に過疎地域や離島など): 人材確保が困難なため、都市部と比較して大幅に高い給与や、住宅提供、引っ越し費用補助といった手厚い福利厚生を提示する求人が見られます。
  • 新規出店が相次ぐエリア(一時的な需要増): 特定の地域で大型商業施設の開発や医療モールの新設などが相次ぎ、それに伴って薬局の新規オープンが集中すると、一時的に薬剤師の需要が急増し、好条件の求人が増えることがあります。
  • 専門性が高く評価される地域・医療機関: 特定の疾患領域(がん、精神科など)の専門医療機関が集積している地域や、高度な専門知識を持つ薬剤師を積極的に求めている病院などでは、その専門性に見合った高い給与が提示されることがあります。ただし、これは限定的なケースです。

【具体的な場所のイメージ】薬剤師の年収が比較的落ち着いているのはどんな場所?

一方で、以下のような場所では、薬剤師の年収が全国平均と比較して特別に高いわけではない、あるいは比較的落ち着いている傾向が見られることがあります。

  • 薬剤師の数が多い大都市圏(特に求職者が多いエリア): 東京都、大阪府、福岡県といった大都市圏は、薬学部を持つ大学が多く、毎年多くの新卒薬剤師が輩出されます。また、生活の利便性などから都市部での就職を希望する薬剤師も多いため、求職者に対して求人数のバランスが取れている、あるいは求職者の方が多いエリアでは、給与水準が地方ほど高くならない傾向があります。
  • 薬局や病院の競争が激しい地域: 特定のエリアに調剤薬局やドラッグストアが密集し、競争が激化している場合、各店舗の収益性が圧迫され、それが薬剤師の給与に影響を与える可能性も考えられます。

場所によって年収が異なる場合のキャリア選択のポイント

勤務地によって年収が異なることを踏まえ、薬剤師がキャリアを選択する際には、以下の点を総合的に考慮することが大切です。

  • 年収だけでなく、生活環境、キャリアアップの機会、教育環境なども総合的に考慮: 高い年収が得られるとしても、その地域の生活環境が自分や家族に合っているか、将来的なキャリアアップの機会はあるか、子育て世代であれば子供の教育環境はどうかなど、多角的な視点から検討する必要があります。
  • Uターン・Iターン転職のメリット・デメリット: 地方出身者が地元に戻るUターン転職や、都市部出身者が地方へ移住するIターン転職は、年収アップのチャンスとなる場合があります。しかし、慣れない土地での生活や人間関係の構築といった課題も考慮しなければなりません。
  • 薬剤師としてのやりがいと地域貢献: 年収も重要ですが、自分がどのような薬剤師として地域医療に貢献したいのか、どのような患者さんと関わりたいのかといった「やりがい」も、働く場所を選ぶ上で大切な要素です。
  • 将来のライフプランとの整合性: 結婚、出産、育児、親の介護など、将来のライフプランと照らし合わせ、長期的な視点で勤務地を選択することが後悔のないキャリア形成に繋がります。

薬剤師が場所を選ばず年収を上げるには?

勤務する「場所」に左右されずに、薬剤師として年収を上げていくためには、自身の市場価値を高める努力が不可欠です。

  • 専門性の向上: 認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得したり、特定の疾患領域や業務(在宅医療、無菌調剤など)に関する深い知識とスキルを身につけたりすることで、どの地域でも必要とされる人材になることができます。
  • マネジメントスキルの習得: 管理薬剤師や薬局長、エリアマネージャーといった管理職を目指すためには、リーダーシップや人材育成、店舗運営などのマネジメントスキルを磨く必要があります。
  • 高いコミュニケーション能力: 患者さんや他の医療従事者と円滑なコミュニケーションを取り、信頼関係を構築できる能力は、場所を問わず薬剤師にとって必須のスキルです。
  • 変化への対応力: 医療制度や薬事制度、地域の医療ニーズは常に変化しています。新しい情報を積極的に取り入れ、変化に柔軟に対応できる能力が求められます。

まとめ

薬剤師の年収は、勤務する「場所」によって変動する可能性があります。その背景には、地域ごとの薬剤師の需要と供給のバランス、物価水準、医療機関の特性などが複雑に絡み合っています。一般的に、薬剤師が不足している地方では、人材確保のために都市部よりも高い年収が提示される傾向が見られます。

しかし、年収の高さだけで勤務地を選ぶのではなく、生活環境、キャリアアップの機会、仕事のやりがい、そして自身のライフプランなどを総合的に考慮することが、薬剤師として充実したキャリアを築く上で非常に重要です。どのような場所で働くにしても、専門性を高め、変化に対応していく努力を続けることが、自身の価値を高め、結果として満足のいく年収に繋がる道と言えるでしょう。

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黒岩満(くろいわみつる)
黒岩満(くろいわみつる)
キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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