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薬剤師の年収は将来減る?懸念される理由と今後のキャリア戦略

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「薬剤師の数は増え続けているし、AIに仕事が奪われるかもしれない。将来、薬剤師の年収は減ってしまうのだろうか…」薬剤師として働く方や、これから薬剤師を目指す方の中には、このような不安を抱いている方もいるかもしれません。専門性の高い国家資格であるにも関わらず、なぜ薬剤師の年収が「減る」という懸念が語られるのでしょうか。

この記事では、薬剤師の年収が将来的に減少するのではないかという懸念の背景にある要因や、薬剤師の年収の現状と今後の展望、そして薬剤師自身がこれからの時代を生き抜き、キャリアを豊かにしていくための戦略について、詳しく解説していきます。

薬剤師の年収 – 現在の状況と「減る」という懸念の背景

まず、現在の薬剤師の年収水準を確認しておきましょう。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」などの最新の公的データによると、日本の薬剤師の平均年収はおおむね570万円~580万円程度とされており、これは日本の全労働者の平均年収と比較して依然として高い水準にあります。

しかし、この安定した状況が未来永劫続くとは限らない、という見方から「年収が減るのではないか」という不安や議論が生まれています。その背景には、医療制度を取り巻く環境の変化や、薬剤師の働き方そのものの変革の波が関係しています。

薬剤師の年収が「減る」と言われる主な要因とは?

薬剤師の年収が将来的に減少する、あるいは伸び悩む可能性が指摘される背景には、以下のような複合的な要因が挙げられます。

  • 診療報酬・薬価の継続的な改定の影響: 国の医療費抑制策は、薬剤師の業務に最も大きな影響を与える要因の一つです。定期的に行われる薬価の引き下げや、調剤基本料をはじめとする調剤報酬の改定は、薬局や病院の収益構造に直接的な打撃を与えかねません。これが経営の圧迫に繋がり、結果として薬剤師の人件費にしわ寄せが来るのではないかという懸念があります。
  • 薬剤師数の増加と需給バランスの変化: 薬学部の6年制移行後、全国的に薬学部が新設され、薬剤師の数は増加傾向にあります。このまま供給が増え続ければ、将来的には薬剤師が過剰となり、地域や職種によっては需要と供給のバランスが崩れ、買い手市場となることで給与水準の上昇が抑制されたり、場合によっては引き下げられたりするのではないかという心配があります。
  • 調剤業務の効率化・機械化(AIの活用など): 近年、自動調剤機や散薬監査システム、AIを活用した処方監査支援システムなど、テクノロジーの導入による調剤業務の効率化が進んでいます。これにより、従来、薬剤師の主な業務とされてきた「対物業務」の比重が相対的に低下し、その部分での薬剤師の必要性が減ることで、人件費削減の対象となる可能性が指摘されています。
  • 医薬分業の成熟と薬局間の競争激化: 日本の医薬分業率は一定の水準に達し、成熟期に入ったとも言われています。これにより、新規出店の余地が少なくなり、既存の薬局間での患者獲得競争が激化しています。競争の激化は、薬局の収益性を圧迫し、薬剤師の給与にも影響を与えかねません。
  • 医療制度全体の変革と薬剤師の役割変化への対応: 地域包括ケアシステムの推進、在宅医療へのシフト、オンライン服薬指導の導入など、医療制度は常に変化しています。これらの変化に対応し、薬剤師が新たな専門性や価値を発揮できなければ、社会からの評価や必要性が相対的に低下し、それが待遇面に反映されるリスクも考えられます。

本当に薬剤師の年収は「減る」一方なのか? – 多角的な視点

これらの懸念材料は確かに存在しますが、一方で、薬剤師の年収が必ずしも一方的に「減る」と結論づけるのは早計かもしれません。以下のような多角的な視点も持つことが重要です。

  • 専門性の高い薬剤師への需要はむしろ増加: がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、緩和薬物療法認定薬剤師、在宅療養支援認定薬剤師など、特定の分野で高度な専門知識とスキルを持つ薬剤師は、今後ますますその価値が高まり、高い評価と待遇が期待できます。ジェネラリストとしての基礎力に加え、プラスアルファの専門性が重要になります。
  • 「対人業務」の価値の高まり: 機械やAIでは代替できない、患者さん一人ひとりに寄り添った丁寧な服薬指導、副作用の的確なモニタリング、医師への積極的な処方提案、多職種との円滑なコミュニケーションといった「対人業務」の重要性は、今後さらに増していくと考えられます。これらのスキルを持つ薬剤師は、高い評価を得られるでしょう。
  • 地域や職種による需要の偏在: 都市部では薬剤師の充足感が出始めている地域もありますが、地方やへき地、特定の診療科を専門とする病院などでは、依然として薬剤師が不足しており、好待遇の求人が存在します。また、製薬企業の研究開発職や学術担当、行政薬剤師など、専門性を活かせる他のフィールドも視野に入れることができます。
  • 薬剤師の職能拡大の可能性と新たな役割: 健康サポート薬局としての機能強化、地域住民への予防医療やセルフメディケーションの推進、多職種連携におけるコーディネーター役など、薬剤師が主体的に新たな役割を創造し、社会に貢献できる領域は広がっています。これらの新しい価値を提供できる薬剤師は、今後も必要とされ続けるでしょう。

年収減少リスクに備え、薬剤師が取り組むべきキャリア戦略

将来的な年収減少のリスクに備え、薬剤師一人ひとりが自身の市場価値を高め、変化に対応していくためのキャリア戦略を考えることが不可欠です。

  • 専門性の深化と差別化を図る: 自身の興味や適性、そして社会のニーズを踏まえ、特定の分野における専門性を深めましょう。認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得は、その客観的な証となります。
  • 対人スキル・コミュニケーション能力を徹底的に磨く: 患者さんやその家族、医師、看護師など、多くの人と関わる薬剤師にとって、高度なコミュニケーション能力は不可欠です。相手の立場を理解し、分かりやすく情報を伝え、信頼関係を築く力を養いましょう。
  • 変化への適応力と生涯学習の姿勢を貫く: 医療制度や医薬品、テクノロジーは常に進化しています。新しい知識や技術を積極的に学び、変化を恐れずに対応していく柔軟性と学習意欲を持ち続けることが重要です。
  • マネジメント能力や経営的視点を習得する: 将来的に管理薬剤師や薬局長、あるいは薬局経営を目指すのであれば、スタッフの育成や労務管理、店舗運営、収益管理といったマネジメントスキルや経営的視点を身につけることが求められます。
  • キャリアプランを主体的に設計し、戦略的に行動する: 自身の強みや弱みを把握し、将来どのような薬剤師になりたいのか、どのような働き方をしたいのかというキャリアプランを明確にしましょう。そして、その目標達成のために、必要な経験を積める職場を選んだり、スキルアップのための自己投資を行ったり、場合によっては転職を検討したりといった戦略的な行動が求められます。
  • 薬剤師以外のスキルも視野に入れる(リスク分散): 本業に支障のない範囲で、語学力やITスキル、あるいは全く異なる分野の知識や経験を積むことも、将来のキャリアの選択肢を広げ、リスクを分散する上で有効かもしれません。

まとめ

「薬剤師の年収が将来減るのではないか」という懸念には、診療報酬改定や薬剤師数の増加、業務の効率化といった、無視できない要因が確かに存在します。しかし、それは全ての薬剤師の年収が一様に下がることを意味するわけではありません。

むしろ、これからの時代は、薬剤師一人ひとりの専門性やスキル、そして変化への対応力が、これまで以上にその価値を左右するようになると言えるでしょう。医療制度や社会のニーズの変化を的確に捉え、専門性を深め、対人業務の質を高め、主体的に新たな価値を提供し続けることができる薬剤師は、将来にわたって社会から必要とされ、安定した収入と充実したキャリアを築いていくことができるはずです。

不安に目を向けるだけでなく、薬剤師の職能が持つ可能性を信じ、常に自己研鑽を怠らず、前向きにキャリアを切り拓いていく姿勢こそが、これからの薬剤師に求められる最も重要な資質なのかもしれません。

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