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薬剤師の年収、厚生労働省のデータから見る実態|平均給与と統計の読み解き方

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薬剤師の年収について語られる際、その情報の信頼性は非常に重要です。様々なメディアや求人サイトが独自の調査データを公表していますが、最も客観的で広範な情報源の一つとして、厚生労働省が実施・公表している統計データが挙げられます。

この記事では、薬剤師の年収に関心を持つ方々に向けて、厚生労働省の統計データ(主に「賃金構造基本統計調査」)から見える日本の薬剤師の年収の実態や、そのデータの見方、そしてキャリアを考える上での活用法について、詳しく解説していきます。

厚生労働省の薬剤師年収データ – 信頼できる情報源とは?

厚生労働省は、我が国の労働者の賃金に関する様々な統計調査を実施・公表しており、その中でも薬剤師の年収を把握する上で特に重要なのが**「賃金構造基本統計調査」**です。

  • 賃金構造基本統計調査の概要: この調査は、主要産業に雇用される労働者の賃金の実態を、雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数といった様々な角度から明らかにする、国の最も基本的な統計調査の一つです。毎年実施され、その結果は政府の政策決定や企業の賃金設定、個人のキャリアプランニングなど、幅広い分野で活用されています。
  • 薬剤師の年収を把握する上での重要性: この調査では、職種別の集計結果も公表されており、「薬剤師」の項目も含まれています。そのため、他の職種との比較や、年齢階級別・男女別といった詳細な属性別の平均給与(きまって支給する現金給与額、年間賞与その他特別給与額)を知ることができます。
  • 公的データとしての信頼性と限界: 国が実施する大規模な統計調査であるため、その客観性や網羅性は非常に高いと言えます。しかし、あくまで「平均値」を中心としたデータであり、個々の薬剤師の実際の年収(勤務先の業態、地域、専門性、役職、企業の経営状況などによる差)を全て反映するものではありません。また、調査対象や集計方法の特性を理解した上でデータを解釈する必要があります。

厚生労働省データに見る薬剤師の平均年収

では、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の最新の公表データ(※)に基づくと、日本の薬剤師の平均年収はどの程度の水準にあるのでしょうか。

(※記事執筆時点での最新データ傾向を指し、特定の年度実績を明記するものではありません。)

一般的に、薬剤師の平均年収はおおむね570万円~580万円程度とされています。この内訳としては、平均月収(きまって支給する現金給与額)が約41万円~42万円、年間の賞与その他特別給与額が70万円台後半から80万円程度となることが多いようです。

この平均年収は、日本の全労働者の平均年収(近年のデータで約460万円前後)と比較すると、約100万円以上高い水準にあります。このことからも、「薬剤師の年収は高い」という一般的なイメージが、公的な統計データ上でもある程度裏付けられていると言えるでしょう。

【属性別】厚生労働省データで見る薬剤師の年収詳細

「賃金構造基本統計調査」では、より詳細な属性別の平均年収データも公表されており、薬剤師の年収の多様な側面を垣間見ることができます。

  • 年齢階級別平均年収: 薬剤師の年収は、年齢と共に上昇していく傾向が明確に示されています。
    • 20代: 新卒から数年目にあたる20代では、平均年収は350万円~470万円程度。
    • 30代: 経験とスキルが向上し、中堅として活躍する30代では、平均年収は500万円~650万円程度へと大きく伸長します。
    • 40代: 管理職に就く人も増え、専門性を深める40代では、平均年収は600万円~700万円程度。
    • 50代: キャリアのピークを迎え、平均年収は650万円~750万円程度に達することが多く、50代後半で最も高くなる傾向が見られます。
    • 60代以上: 定年後の再雇用や勤務形態の変化などにより、平均年収は下降する傾向にあります。
  • 男女別平均年収: 男性薬剤師と女性薬剤師の平均年収には差が見られ、一般的に男性薬剤師の方が高い傾向にあります。近年のデータでは、男性薬剤師の平均年収が約620万円~630万円であるのに対し、女性薬剤師は約540万円~550万円程度となっています。この背景には、平均勤続年数の違い、管理職に就いている割合の違い、女性が出産・育児などでキャリアを一時中断したり、パートタイム勤務を選択したりするケースが多いことなどが影響していると考えられます。
  • 企業規模別平均年収: 企業規模(従業員数)によっても、薬剤師の年収には差が見られます。一般的に、企業規模が大きいほど給与水準が高いという傾向が他の職種では見られますが、薬剤師の場合、中小企業(従業員10~99人など)の方が、大企業(従業員1,000人以上など)よりも平均年収が高いという逆の傾向が示されることがあります。これは、中小規模の薬局などでは、薬剤師一人ひとりが担う責任範囲が広かったり、地域によっては人材確保のために好条件を提示したりするケースがあるためと推測されます。ただし、福利厚生やキャリアパスの充実度は大企業の方が高い場合が多いです。
  • 経験年数別平均年収(傾向): 直接的な経験年数別の詳細データは公表形式によりますが、年齢階級別データと同様に、薬剤師としての経験年数が長くなるほど、平均年収も上昇していく傾向にあると考えられます。

厚生労働省データから読み解く薬剤師の年収の傾向と今後の展望

厚生労働省の統計データを長期的に見ると、薬剤師の平均年収は、経済全体の動向や医療制度の変化の影響を受けながらも、比較的安定して高い水準を維持してきたと言えます。

今後の展望については、以下のような点が統計データやその背景から考察されます。

  • 医療制度改定(診療報酬・薬価改定など)の影響: 国の医療費抑制策は、今後も継続的に診療報酬や薬価に影響を与え、それが薬局や病院の経営、ひいては薬剤師の給与水準に間接的に影響を及ぼす可能性があります。統計データ上での急激な変動は少ないものの、昇給のペースなどに影響が出ることは考えられます。
  • 薬剤師の需給バランスの変化: 薬学部の6年制移行後、薬剤師の数は増加傾向にあります。将来的な需給バランスの変化が、平均年収の伸びを抑制する要因となる可能性も指摘されています。
  • 薬剤師の専門性や役割の変化への期待: 一方で、「対物業務から対人業務へ」という大きな流れの中で、かかりつけ薬剤師機能の強化、在宅医療への積極的な参画、多職種連携における専門性の発揮など、薬剤師に求められる役割はより高度化・多様化しています。これらの新しい役割や専門性が診療報酬などで適切に評価されれば、薬剤師の価値が高まり、年収にもポジティブな影響を与える可能性があります。

厚生労働省の年収データを活用する際の注意点

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」などの公的データは、薬剤師の年収の実態を客観的に把握するための非常に信頼性の高い情報源ですが、活用する際には以下の点に注意が必要です。

  • あくまで「平均値」であることの理解: 統計データは、多くの個人の給与情報を集計した「平均値」です。個々の薬剤師の年収は、勤務先の業態(調剤薬局、病院、ドラッグストア、企業など)、具体的な企業や医療法人、勤務地域、役職、専門スキル、雇用形態(正社員、パート、派遣など)によって大きく異なります。平均値は、あくまで全体の傾向を把握するための参考指標として捉えましょう。
  • 調査対象や集計方法の限界: 統計調査には、その調査対象(例えば、一定規模以上の事業所のみなど)や集計方法による限界があります。特定の職種(例:製薬企業のMRなど、薬剤師資格を持つが「薬剤師」として集計されていない可能性のある職種)や、フリーランスのような多様な働き方が十分に反映されていない可能性も考慮する必要があります。
  • 「額面」の給与であること: 統計データで示される給与額は、通常、税金(所得税、住民税)や社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)が引かれる前の「額面」の金額です。実際に手元に残る「手取り額」は、これよりも少なくなることを理解しておく必要があります。
  • 他の情報源との比較検討: 公的統計データだけでなく、民間の調査会社が発表する年収データ、薬剤師専門の求人サイトに掲載されている給与情報、あるいは実際に働いている薬剤師からの情報など、複数の情報源を比較検討することで、より多角的に薬剤師の年収実態を理解することができます。

まとめ

厚生労働省が公表する統計データは、日本の薬剤師の平均年収や、年齢別・男女別・企業規模別といった属性別の給与水準を客観的に把握するための、最も信頼できる情報源の一つです。これらのデータからは、薬剤師の年収が日本の全労働者の平均と比較して高い水準にあることや、年齢と共に上昇していく一般的な傾向などを読み取ることができます。

しかし、統計データはあくまで全体の平均像を示すものであり、個々の薬剤師の年収は、本人のキャリア選択、スキルアップへの努力、そして働く環境によって大きく左右されます。公的データを参考にしつつも、自身のキャリアプランや目標、そして薬剤師としての働きがいや社会貢献といった多様な価値観と照らし合わせながら、主体的にキャリアをデザインしていくことが、納得のいく収入と充実した職業人生を送るための鍵となるでしょう。

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黒岩満(くろいわみつる)
黒岩満(くろいわみつる)
キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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