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マレーシアで薬剤師として働くには?年収・資格・生活とキャリアを解説

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多文化が共生し、近年目覚ましい経済成長を遂げているマレーシア。温暖な気候や比較的低い物価(場所による)も魅力とされ、海外でのキャリアに関心を持つ薬剤師の方にとって、選択肢の一つとして考えられるかもしれません。しかし、実際にマレーシアで薬剤師として働くためには、どのようなステップが必要で、どの程度の年収が期待でき、そしてどのような生活が待っているのでしょうか。

この記事では、マレーシアで薬剤師として働くことに関心を持つ方々に向けて、現地の薬剤師の年収事情、必要となる資格やその取得プロセス、さらにはマレーシアでの生活環境や注意点について、一般的な情報に基づいて詳しく解説していきます。

マレーシアにおける薬剤師の役割と医療制度

マレーシアの医療制度は、政府が運営する公的医療機関と、私立の医療機関が併存しています。国民は比較的安価に公的医療サービスを受けられますが、待ち時間が長いなどの理由から、経済的に余裕のある層は私立の医療機関を選択することも一般的です。

このような医療環境の中で、マレーシアの薬剤師は主に以下のような役割を担っています。

  • 医薬品の調剤と供給: 医師の処方箋に基づき、正確かつ安全に医薬品を調剤し、患者さんに供給します。
  • 服薬指導とカウンセリング: 患者さんに対して、薬の正しい使い方、効果、副作用、保管方法などを丁寧に説明し、服薬コンプライアンスの向上をサポートします。また、健康に関する相談にも応じます。
  • 医薬品管理: 薬局や病院における医薬品の在庫管理、品質管理、発注業務などを行います。
  • 公衆衛生への貢献: 地域社会における健康増進活動や、医薬品の適正使用に関する啓発活動などにも関与します。
  • 他職種との連携: 医師や看護師など、他の医療専門職と連携し、チーム医療の一員として患者ケアに貢献します。

マレーシアにおいても、薬剤師は医薬品の専門家として社会的に認知され、重要な役割を果たしています。

マレーシアの薬剤師の平均年収

マレーシアにおける薬剤師の年収は、経験年数、勤務先(公立病院、私立病院、地域の薬局、製薬企業など)、勤務地域(クアラルンプールのような都市部と地方)、そして役職などによって大きく異なります。

近年の求人情報や給与データ(例えば、eeevo recruitなどの情報)を参照すると、一般的な傾向として以下のような水準が見られます。

(※下記はあくまで目安であり、税金や社会保障負担金を差し引く前の総支給額(brut)です。為替レートによって日本円換算額は大きく変動することにご注意ください。)

  • 一般的な薬剤師(薬局・病院勤務): 月収で5,000リンギット~8,000リンギット程度(2025年5月現在のレートで約17万5,000円~28万円程度)がひとつの目安とされています。 年収に換算すると、約60,000リンギット~96,000リンギット程度(約210万円~336万円程度)となります。
  • 経験豊富な薬剤師や管理職: 経験を積み、薬局長や部門の責任者といった管理的な立場になると、これ以上の収入を得ることが可能です。
  • 製薬企業などの産業薬剤師: 製薬企業の研究開発職、薬事担当、マーケティング担当などとして働く場合、薬局や病院勤務の薬剤師よりも高い年収水準となることが一般的です。

日本の薬剤師の平均年収(約570万円~580万円程度)と比較すると、マレーシアの一般的な薬局や病院勤務の薬剤師の年収は、額面では低い傾向にあると言えます。しかし、後述するように、マレーシアの物価水準(特に地方)は日本と比較して低い部分もあるため、単純な額面比較だけでなく、現地での生活費とのバランスを考慮する必要があります。

マレーシアで薬剤師になるための資格と道のり

日本の薬剤師免許は、マレーシアでは直接通用しません。マレーシアで外国人(日本人を含む)が薬剤師として働くためには、マレーシアの薬剤師資格を取得し、マレーシア薬剤師会(Malaysian Pharmaceutical Society, MPS)に登録する必要があります。

そのプロセスは非常に厳しく、一般的に以下のようなステップが必要です。

  1. マレーシアで認められた薬学部の卒業資格: マレーシア政府が認定する国内外の大学の薬学部を卒業していることが基本となります。日本の薬学部が直接的にどの程度認定されるか、あるいは単位互換が可能かについては、マレーシア薬剤師会や関連省庁への個別の確認と審査が必要です。多くの場合、マレーシア国内の大学の薬学部に編入するか、再教育を受ける必要があると考えられます。
  2. 実務研修(Pupillage): マレーシア国内の認定された施設(病院や薬局など)で、規定された期間(通常1年間程度)の監督下での実務研修(プレレジストレーション・トレーニングとも呼ばれる)を修了する必要があります。
  3. マレーシア薬剤師資格試験の合格: 実務研修修了後、マレーシアの薬事法規や倫理などに関する資格試験(例えば、Forensic Examination)に合格する必要があります。
  4. 言語要件: マレーシアの公用語はマレー語ですが、医療現場や教育機関では英語も広く使用されています。薬剤師として業務を行うためには、マレー語または英語の高い語学能力が不可欠です。試験や研修もこれらの言語で行われます。
  5. 就労ビザ(Employment Pass)の取得: 外国人としてマレーシアで働くためには、適切な就労ビザを取得する必要があります。これには、マレーシア国内の雇用主からの内定とサポートが必要となり、ビザの発給基準も年々厳しくなっている傾向があります。

これらのステップを考えると、日本の薬学部卒業者がマレーシアで薬剤師として就労するまでの道のりは、言語の習得、資格認証、実務研修、国家試験、そして就労ビザの取得と、非常に多くの時間、費用、そして努力を要する、極めてハードルの高いものであると言わざるを得ません。

稀に、日系のクリニックや企業などで、日本人向けのサービスを提供するために日本の薬剤師資格を持つ人材が求められるケース(通訳やコーディネーター的な役割を含む)もあるかもしれませんが、その場合でもマレーシア国内での薬剤師としての法的な業務範囲は限定されるか、あるいは現地の薬剤師の監督下での業務となる可能性が高いでしょう。

マレーシアの薬剤師の求人状況と働く環境

マレーシアにおける薬剤師の需要は、都市部を中心に一定数存在します。公立病院、私立病院、地域の薬局(コミュニティファーマシー)、製薬企業、卸売企業などが主な勤務先となります。近年、マレーシアでも薬学部の新設が増え、国内の薬剤師養成数は増加傾向にあると言われています。

働く環境については、日本と比較していくつか特徴があります。

  • 多文化環境: マレーシアはマレー系、中華系、インド系など多様な民族が共生する多文化社会であり、職場も同様の環境であることが多いです。
  • 労働時間と休暇: 一般的に、労働時間は日本と同程度か、やや短い場合もあります。祝祭日が多いのも特徴です。
  • 薬局の形態: 大手チェーンの薬局も増えていますが、依然として独立系の個人経営の薬局も多く存在します。

マレーシアでの生活費と年収のバランス

マレーシアで薬剤師として働く場合、年収と現地の生活費とのバランスを考慮することが非常に重要です。

  • 物価水準: 一般的に、マレーシアの物価は日本と比較して安いと言われていますが、これは品目や地域によって大きく異なります。クアラルンプールのような大都市では、輸入品や高級品、そして住居費(特に外国人向けのコンドミニアムなど)は日本と同等かそれ以上に高額になることもあります。一方で、ローカルな市場での食料品や屋台での食事などは比較的安価です。
  • 生活費の目安: ライフスタイルによって大きく異なりますが、都市部で比較的快適な生活を送るためには、月々の生活費としてそれなりの金額が必要となります。
  • 税金と社会保障制度: マレーシアにも所得税や売上税・サービス税(SST)といった税金があり、外国人労働者も納税の義務があります。社会保障制度(EPF:従業員積立基金など)への加入についても確認が必要です。

マレーシアの薬剤師の年収が日本の平均より低い傾向にあるとしても、生活費を抑えることができれば、日本と同等かそれ以上の生活水準を維持できる可能性もありますが、一概には言えません。

日本の薬剤師がマレーシアで働くことの魅力と大きな課題

日本の薬剤師がマレーシアで働くことには、魅力的な側面と、それ以上に大きな課題が存在します。

  • 魅力:
    • 多文化社会での貴重な経験: 様々な民族や文化に触れながら生活し、働く経験は、視野を広げ、人間的な成長を促します。
    • 英語環境での業務(一部): 英語が準公用語として広く通じるため、英語でのコミュニケーション能力を高める機会があります(ただし、マレー語の重要性も高い)。
    • 比較的温暖な気候と生活環境: 年間を通じて温暖な気候で、自然も豊かな環境で生活できます。
    • 東南アジアの成長市場でのキャリアの可能性: 今後経済成長が見込まれる地域で、新たなキャリアを築ける可能性があります。
    • 比較的低い生活費(場所やライフスタイルによる): 日本と比較して生活コストを抑えられる可能性があります。
  • 大きな課題:
    • 資格認証の極めて高いハードル: 前述の通り、マレーシアの薬剤師資格を取得するのは非常に困難です。
    • 言語の壁: 日常会話レベル以上の、専門的なコミュニケーションが可能なマレー語または英語の能力が必須です。
    • 就労ビザ取得の困難さ: 外国人に対する就労ビザの発給基準は厳しく、容易ではありません。
    • 文化・習慣の違いへの適応: 職場環境や生活習慣、宗教観など、日本とは異なる文化への適応能力が求められます。
    • 給与水準とキャリアパスの不確実性: 日本の薬剤師としてのキャリアや給与水準をそのままマレーシアで維持・向上させられる保証はありません。

まとめ

マレーシアで薬剤師として働くことは、異文化理解を深め、新たな経験を積むことができる魅力的な選択肢の一つに見えるかもしれません。年収については、現地の物価水準を考慮すれば、一定の生活を送ることは可能でしょう。

しかし、その実現のためには、マレーシアの薬剤師資格の取得という非常に高いハードル、高度な言語能力の習得、そして就労ビザの取得といった、数多くの困難なステップをクリアしなければなりません。これは、相当な覚悟と準備期間、そして多大な努力と費用を要する道です。

もし本気でマレーシアでの薬剤師キャリアを考えるのであれば、まずはマレーシアの薬学教育制度、外国人薬剤師の資格認証プロセス、そして就労ビザの要件について、マレーシア大使館やマレーシア薬剤師会などの公式機関を通じて、正確かつ最新の情報を徹底的に収集することから始める必要があります。憧れだけでなく、現実的な課題を深く理解した上で、慎重に判断することが何よりも重要です。

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