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薬剤師の年収と「手取り額」のリアルは?知っておきたい税金・社会保険料と賢いお金の考え方

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薬剤師の年収について情報を集める際、求人票や募集要項に記載されている「年収額」は、いわゆる「額面給与」であることが一般的です。しかし、実際に生活を設計したり、将来の貯蓄計画を立てたりする上で本当に重要なのは、税金や社会保険料などが差し引かれた後の「手取り額」ではないでしょうか。

この記事では、薬剤師の年収(額面)と実際に受け取れる手取り額の違い、年収からどのようなものが差し引かれるのか、そして薬剤師の手取り額に影響を与える要因や、手取り額を意識した賢いお金の考え方、キャリアプランニングについて、一般的な情報を基に詳しく解説していきます。

「年収(額面)」と「手取り額」の違いとは?

まず、混同しやすい「年収(額面)」と「手取り額」の違いを明確にしておきましょう。

  • 年収(額面給与): これは、基本給に加えて、薬剤師手当、役職手当、時間外勤務手当、通勤手当、住宅手当、家族手当といった各種手当、そして賞与(ボーナス)などを含んだ、会社から支払われる総支給額のことを指します。税金や社会保険料が差し引かれる前の金額です。
  • 手取り額: 実際に皆さんの銀行口座に振り込まれる金額のことで、「差引支給額」などと給与明細に記載されています。額面給与から、所得税、住民税、そして健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料といった社会保険料(40歳以上の方は介護保険料も)などが差し引かれた後の金額となります。
  • なぜ手取り額を把握することが重要なのか: 日々の生活費、家賃や住宅ローンの支払い、貯蓄、投資、趣味や自己啓発への支出など、私たちが実際に使えるお金は「手取り額」がベースとなります。そのため、自身のライフプランを具体的に計画する上で、手取り額を正確に把握しておくことは非常に重要です。

薬剤師の年収から「手取り額」を計算する際に引かれるもの

では、具体的に年収(額面)からどのようなものが差し引かれて「手取り額」が決まるのでしょうか。主なものは以下の通りです。

  • 税金:
    • 所得税: 個人の所得に対して課される国税です。所得が多くなるほど税率が高くなる「累進課税制度」が採用されています。給与所得控除や基礎控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、医療費控除など、様々な所得控除があり、これらを差し引いた後の「課税所得」に税率を掛けて計算されます。毎月の給与からは源泉徴収という形でおおよその金額が天引きされ、年末調整で過不足が精算されます。
    • 住民税: 都道府県民税と市町村民税(東京23区の場合は特別区民税)を合わせたもので、前年の所得に基づいて計算され、翌年の6月から1年間、毎月の給与から天引きされるのが一般的です。税率は、所得割(所得に応じて課税)と均等割(所得にかかわらず定額で課税)から構成され、所得割の標準税率は多くの自治体で約10%です。
  • 社会保険料:
    • 健康保険料: 病気やケガをした際の医療費負担を軽減するための保険料です。加入する健康保険組合(協会けんぽ、企業の健康保険組合、薬剤師国保など)によって保険料率が異なります。会社員の場合、保険料は会社と折半で負担します。
    • 厚生年金保険料: 老後の生活保障(老齢年金)や、障害状態になった場合(障害年金)、死亡した場合(遺族年金)の保障を受けるための保険料です。保険料率は固定されており、会社員の場合は会社と折半で負担します。
    • 雇用保険料: 失業した場合の生活保障(失業保険)や、育児休業・介護休業給付などを受けるための保険料です。保険料率は事業の種類によって異なり、労働者と事業主の双方が負担します。
    • 介護保険料(40歳以上の場合): 40歳になると、介護が必要になった際の介護サービス費用を支えるための介護保険料の納付が始まります。健康保険料と合わせて徴収されます。
  • その他: 企業によっては、労働組合費、財形貯蓄の積立金、社員旅行の積立金などが給与から天引きされる場合もあります。

薬剤師の年収別「手取り額」の一般的な目安

年収(額面)から実際に受け取れる手取り額は、一般的に額面年収のおおよそ75%~85%程度になると言われています。ただし、この割合は、扶養家族の有無、各種所得控除の金額、居住している自治体の住民税率、年齢(介護保険料の有無)などによって大きく変動します。

以下に、薬剤師の年収例ごとの手取り額の一般的な目安を示します。これはあくまで独身で、特別な控除がない場合を想定した大まかな目安であり、個々の状況によって大きく異なることをご留意ください。

年収(額面)手取り額の目安(年間)手取り額の目安(月額、ボーナスなし均等割)
400万円約300万円~340万円約25万円~28万円
500万円約375万円~425万円約31万円~35万円
600万円約450万円~510万円約37万円~42万円
700万円約510万円~580万円約42万円~48万円
800万円約570万円~660万円約47万円~55万円

【重要な注意点】

上記の表は、非常に簡略化された目安です。実際の手取り額は、

  • 扶養家族の有無・人数: 扶養控除や配偶者控除により、所得税・住民税が軽減されます。
  • 各種所得控除の活用状況: 生命保険料控除、医療費控除、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金控除などを活用すると、課税所得が減り、税負担が軽減されます。
  • 居住地の住民税率: 多くの自治体で標準税率が適用されますが、一部異なる場合もあります。
  • 社会保険料率の変動: 健康保険料率は加入する健康保険組合によって異なり、また年度によって改定されることもあります。
  • 賞与(ボーナス)の支給月数や評価による変動: 賞与の額によっても年間の手取り額は変わります。

ご自身の正確な手取り額を知りたい場合は、給与明細を確認するか、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

薬剤師の「手取り額」に影響を与える主な要因

薬剤師の手取り額が変動する主な要因を改めて整理すると、以下のようになります。

  • 年収(額面)の高さ: 当然ながら、額面年収が高ければ手取り額も増える傾向にありますが、所得税は累進課税であるため、年収が高くなるほど税率も上がり、社会保険料の負担上限も考慮に入れる必要があります。そのため、額面の増加分がそのまま手取りの増加分とはならない点に注意が必要です。
  • 扶養家族の有無・人数: 配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合、所得控除(配偶者控除、扶養控除)が適用され、所得税や住民税の負担が軽減されるため、手取り額が増える方向に働きます。
  • 各種所得控除の活用: 生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金、ふるさと納税の寄付金控除などを積極的に活用することで、課税所得を減らし、結果として手取り額を増やすことができます。
  • 居住地の住民税率: 住民税の税率は、多くの自治体で標準税率(所得割10%+均等割)が適用されていますが、一部の自治体では独自の税率を設定している場合や、環境税などが上乗せされる場合があり、手取り額に若干の影響を与えることがあります。
  • 年齢(介護保険料の負担開始など): 40歳になると介護保険料の負担が始まり、その分、手取り額が減少します。

薬剤師が「手取り額」を意識してキャリアやライフプランを考えるポイント

薬剤師としてキャリアを築き、ライフプランを考える上で、「手取り額」を意識することは非常に重要です。

  • 年収アップを目指す際の注意点: 転職や昇進で額面年収がアップした場合でも、所得税率が上がったり、社会保険料の負担が増えたりすることで、手取り額の増加率が額面の増加率ほど大きくならないことがあります。年収アップを目指す際は、手取り額でどれくらい増えるのかをシミュレーションしてみることも大切です。
  • 節税対策の検討: 前述の各種所得控除を最大限に活用することはもちろん、ふるさと納税、iDeCo(個人型確定拠出年金)、NISA(つみたてNISA)といった税制優遇のある制度を賢く利用することで、手取り収入を実質的に増やしたり、将来の資産形成を効率的に進めたりすることができます。
  • 福利厚生の活用: 勤務先によっては、住宅手当や社宅制度、食事補助、企業型確定拠出年金(企業型DC)といった福利厚生が充実している場合があります。これらの制度は、直接的な手取り額には反映されなくても、生活費の負担を軽減したり、将来の資産形成をサポートしたりする形で、実質的な可処分所得を増やす効果があります。
  • ライフイベントとの関連: 結婚、出産、子育て、住宅購入、退職といった大きなライフイベントは、収入や支出、そして利用できる控除額に大きな影響を与えます。これらのライフイベントを見据え、手取り額の変化をシミュレーションしながら、長期的な視点で家計管理や資産形成を計画していくことが重要です。

まとめ:薬剤師の「手取り額」を正しく理解し、賢いライフプランを

薬剤師の年収について考える際、求人票などに記載される「額面給与」だけでなく、実際に自由に使えるお金である「手取り額」を正しく理解することは、健全な家計管理や将来のライフプランを設計する上での第一歩です。

年収(額面)から差し引かれる所得税、住民税、社会保険料の仕組みを大まかにでも理解し、自身が活用できる所得控除や税制優遇制度(ふるさと納税、iDeCo、NISAなど)を賢く利用することで、手取り収入を効果的に増やしていくことも可能です。

ご自身のキャリアプランとライフプランをしっかりと見据え、年収(額面)と手取り額の両方を意識しながら、経済的な側面からも充実した薬剤師人生を目指していきましょう。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーなどの専門家のアドバイスを求めるのも良いでしょう。

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黒岩満(くろいわみつる)
黒岩満(くろいわみつる)
キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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