薬剤師の採用コストはいくら?内訳と相場、効果的な採用方法を解説
薬局や病院、ドラッグストアなどを運営する上で、薬剤師の確保は事業の根幹を揺るがす重要な経営課題です。しかし、専門職である薬剤師の採用は容易ではなく、一人を採用するために多額のコストがかかることも少なくありません。
「薬剤師を一人採用するのに、一体いくらかかるのだろう?」
「採用コストを少しでも抑えつつ、良い人材を確保する方法はないだろうか?」
この記事では、そうした疑問をお持ちの経営者や人事担当者の皆様に向けて、薬剤師の採用コストの内訳と相場、そしてコストを意識した効果的な採用手法について詳しく解説します。
薬剤師の採用コストの内訳
薬剤師の採用コストは、大きく「外部コスト」と「内部コスト」の2つに分けられます。まずは、どのような費用が発生するのかを具体的に見ていきましょう。
外部コスト(社外に支払う費用)
外部コストは、採用活動のために社外のサービスや媒体を利用する際に発生する費用です。
- 求人広告費薬剤師専門の求人情報サイトや求人情報誌に広告を掲載するための費用です。料金体系は、一定期間掲載する「掲載課金型」、応募があった時点で費用が発生する「応募課金型」、採用が決定した場合のみ費用を支払う「成功報酬型」など様々です。費用は数万円から数十万円と媒体やプランによって幅があります。
- 人材紹介手数料薬剤師専門の転職エージェント(人材紹介会社)を利用した場合に支払う成功報酬です。エージェントが候補者の募集からスクリーニング、面接日程の調整まで行ってくれるため、採用担当者の負担を大きく軽減できます。費用は採用する薬剤師の理論年収(月給×12ヶ月+賞与など)の20%~35%程度が相場とされており、採用コストの中では最も高額になる傾向があります。
- 合同就職説明会への出展費新卒・中途薬剤師を対象とした合同説明会や就職フェアに出展するための費用です。ブースの出展料のほか、ブースの装飾費、配布するパンフレットの作成費などがかかります。多くの求職者と直接会えるメリットがありますが、費用は数十万円から百万円以上になることもあります。
内部コスト(社内で発生する費用)
内部コストは、採用活動のために自社のリソース(ヒト・モノ・カネ)を使った際に見えない形で発生している費用です。
- 人件費採用活動に携わる社員の人件費です。求人票の作成、応募者とのメールや電話でのやり取り、面接、内定後のフォローなど、採用プロセスには多くの時間が費やされます。採用担当者だけでなく、面接官となる管理薬剤師や役員の時間もコストとして捉える必要があります。
- その他の経費応募者に面接時の交通費を支給する場合の費用や、社員の紹介で採用が決まった際に報奨金を支払う「リファラル採用(社員紹介制度)」のインセンティブ費用なども内部コストに含まれます。
【雇用形態別】薬剤師の採用コストの相場
採用コストは、募集する薬剤師の雇用形態や採用手法によって大きく変動します。
- 正社員(中途採用)最もコストが高くなる傾向があります。特に、即戦力となる経験豊富な薬剤師を急いで採用したい場合、人材紹介サービスを利用するケースが多くなります。【コスト例】
- 人材紹介: 理論年収500万円の薬剤師を採用した場合、成功報酬(料率25%と仮定)は125万円。
- 求人広告: 20万円~80万円程度。ただし、採用できる保証はありません。
- 正社員(新卒採用)合同説明会への出展や大学への求人活動が中心となり、活動全体で数百万円規模の予算が必要になることもあります。一人あたりの採用単価としては中途採用より低く算出される場合もありますが、内定辞退などのリスクも考慮する必要があります。
- パート・アルバ’イト地域の無料求人誌やハローワーク、店頭でのポスター掲示など、比較的低コストでの採用が期待できます。ただし、急募の場合や専門スキルを求める場合は、有料の求人サイトや人材紹介を利用することもあり、その際は正社員採用に近いコストがかかる可能性もあります。
※これらの金額はあくまで一般的な目安です。採用難易度の高いエリアや、管理薬剤師などの特定のポジションでは、相場よりも高くなることがあります。
薬剤師の採用コストを抑えるためのポイント
採用コストは抑えたい、しかし採用の質は落としたくない、というのが本音でしょう。コスト削減と採用成功を両立させるためのポイントをいくつかご紹介します。
- 自社の採用サイトやSNSを強化する自社のホームページに魅力的な採用ページを作成したり、SNSで職場の雰囲気や働くスタッフの声を継続的に発信したりする方法です。初期投資や運用に手間はかかりますが、外部サービスに頼らず直接応募を集めることができ、長期的に見れば最もコストパフォーマンスの高い手法となり得ます。
- リファラル採用(社員紹介制度)を導入・活用する既存の社員から知人や友人を紹介してもらう採用手法です。紹介した社員にインセンティブを支払うコストはかかりますが、人材紹介手数料に比べればはるかに安価です。また、職場の内情を理解した上での応募となるため、ミスマッチが少なく定着率が高いという大きなメリットがあります。
- ダイレクトリクルーティングを試す企業側から求職者データベースなどに登録している候補者へ直接アプローチする採用手法です。データベースの利用料はかかりますが、自社の魅力や求める人物像を直接伝えることができ、人材紹介よりもコストを抑えられる可能性があります。
- 採用手法を適切に使い分ける「急いで一人だけ採用したい」なら人材紹介、「時間をかけてもいいから複数名採用したい」なら求人広告や合同説明会、「長期的な資産を築きたい」なら自社サイト強化、というように、状況に応じて最適な採用手法を選択することが重要です。
- 採用プロセスを見直し、効率化するWeb面接を導入すれば、遠方の応募者の負担を減らし、自社の面接官の移動時間や交通費も削減できます。また、応募者管理を効率化するシステムを導入することも、内部コストの削減に繋がります。
- 魅力的な職場環境を整え、離職率を下げる究極の採用コスト削減策は、そもそも薬剤師が辞めない職場を作ることです。適正な給与水準、休暇の取りやすさ、充実した研修制度、良好な人間関係など、働きがいのある環境を整備することが、結果的に採用コストを大幅に抑制することに繋がります。
まとめ
薬剤師の採用コストは、決して安いものではありません。しかし、それは未来の事業成長を支える人材を確保するための重要な「投資」です。
まずは自社が採用活動にどれくらいの外部コストと内部コストをかけているのかを正しく把握することから始めましょう。その上で、本記事でご紹介したような採用手法を自社の状況に合わせて組み合わせ、戦略的に採用活動を進めていくことが、コストを抑えながら理想の人材と出会うための鍵となります。採用活動は、自社の魅力や働き方を見つめ直す絶好の機会でもあるのです。