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なぜ薬剤師の採用は難しいのか?原因と、競争を勝ち抜くための採用戦略

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「募集をかけても応募が来ない」「内定を出しても辞退されてしまう」「理想のスキルを持つ薬剤師に出会えない」…今、多くの薬局や病院、企業の採用担当者様が、薬剤師の採用に深刻な課題を抱えています。

かつてのように、ただ求人を出して待っているだけでは、優秀な人材を確保することが極めて困難な時代になりました。では、なぜ薬剤師の採用はこれほどまでに「難しい」のでしょうか。

この記事では、その背景にある構造的な原因を多角的に分析し、その上で、厳しい採用競争を勝ち抜くための具体的な戦略とアプローチを詳しく解説します。

薬剤師採用が「難しい」と言われる5つの背景

採用難の原因は一つではありません。複数の要因が複雑に絡み合っています。自社の状況を客観的に見つめるためにも、まずはその背景を理解することが不可欠です。

1. 薬剤師の「偏在」と需給のミスマッチ

薬学部の6年制移行により、薬剤師の総数は増加傾向にありますが、その多くは都市部に集中しています。一方で、地方やへき地では薬剤師不足が深刻化しており、地域によって需給バランスが大きく偏っているのが実情です。また、人気の病院や企業に応募が殺到する一方で、中小薬局などでは採用に苦戦するという、職場間でのミスマッチも起きています。

2. 働き方の価値観の多様化

かつては「給与の高さ」が職場選びの大きな決め手でしたが、現代の薬剤師、特に若手層はそれだけでは動きません。「プライベートの時間を確保できるか」「子育てと両立できるか」「スキルアップやキャリア形成の支援はあるか」「職場の人間関係は良好か」といった、ワークライフバランスや働きがいを重視する傾向が非常に強くなっています。

3. 採用競合の激化と多様化

薬剤師を求めるのは、もはや調剤薬局や病院だけではありません。ドラッグストア業界は調剤併設を加速させ、製薬会社はMRやMSL、開発職として薬剤師を求めています。限られた人材を、多様な業態の企業が奪い合う構図となっており、採用競争は激化の一途をたどっています。

4. 求められるスキルと人材像の高度化

地域包括ケアシステムの推進に伴い、在宅医療や多職種連携を担える薬剤師、あるいは薬局のマネジメントができる管理薬剤師など、企業側が求めるスキルはますます高度化・専門化しています。しかし、その高度な要求に見合う経験やスキルを持つ薬剤師は限られており、ここでも需要と供給のギャップが生じています。

5. 職場の情報が「透明化」した時代

現代の求職者は、インターネット上の口コミサイトやSNSを通じて、企業の評判や職場のリアルな情報を簡単に入手できます。「残業が多い」「人間関係が良くない」といったネガティブな情報は瞬く間に広がり、応募者が敬遠する原因となります。企業の魅力だけでなく、弱みも「見える化」されているのです。

採用難を乗り越えるための具体的な対策とアプローチ

では、このような厳しい状況を乗り越え、理想の薬剤師を採用するためには、何をすべきなのでしょうか。従来の考え方を転換し、戦略的なアプローチを取ることが求められます。

1. 採用条件・待遇の再設計

給与はもちろん重要ですが、それだけで他社と差別化するのは困難です。年間休日数、有給休暇の取得しやすさ、残業時間の少なさ、柔軟な勤務時間(時短勤務など)、住宅手当や退職金といった福利厚生を手厚くするなど、総合的な「働きやすさ」をアピールすることが重要です。

2. 「採用ブランディング」の強化

「なぜ、数ある職場の中から『あなたの職場』を選ぶべきなのか?」その答えを明確にし、魅力として発信していく活動が「採用ブランディング」です。自社のウェブサイトやSNSなどを活用し、企業理念や職場の雰囲気、先輩社員の声、教育制度の充実ぶりなどを継続的に発信し、企業のファンを増やしていく視点が不可欠です。

3. 採用チャネルの多様化

一つの採用方法に固執せず、複数のチャネルを組み合わせてアプローチしましょう。ハローワークや求人広告サイトといった「待ち」の媒体に加え、人材紹介会社を活用して質の高い候補者を紹介してもらったり、リファラル採用(社員紹介)制度を導入してミスマッチの少ない採用を目指したりと、多角的な戦略が有効です。

4. 選考プロセスの改善(候補者体験の向上)

応募から面接、内定までの一連のプロセスにおける候補者の体験(Candidate Experience)は、企業の印象を大きく左右します。応募後の連絡が遅い、面接官の態度が横柄、選考結果の連絡がないといった不誠実な対応は、候補者の入社意欲を削ぐだけでなく、企業の評判を落とす原因にもなります。迅速で、丁寧で、誠実な対応を徹底しましょう。

5. 「定着」こそが最強の採用戦略

最も効果的で本質的な採用戦略は、「今いる社員が辞めない魅力的な職場」を作ることです。定期的な面談で不満や要望を吸い上げ、キャリアアップを支援する教育機会を提供し、公正な評価制度を整える。社員満足度の高い職場は、自然と良い評判が広がり、人材も集まりやすくなります。採用は、入社後から既に始まっているのです。

まとめ:これからの時代に「選ばれる職場」であるために

薬剤師の採用が難しい時代は、裏を返せば、採用側である企業や病院が「選ばれる側」になった時代とも言えます。単に空いたポストを埋める「補充」という考え方から、事業の未来を共に創る「パートナー」を迎えるという考え方への転換が求められています。

なぜ採用が難しいのかを真摯に受け止め、自社の魅力を見つめ直し、戦略的に、そして誠実に採用活動に取り組むこと。それこそが、これからの時代に理想の薬剤師と出会うための、唯一の道と言えるでしょう。

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黒岩満(くろいわみつる)
黒岩満(くろいわみつる)
キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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