障害を持つ薬剤師の採用・転職ガイド|働き方から求人探し・面接の伝え方まで
薬剤師としてのキャリアを歩みたい、あるいはこれまでの経験を活かして新しい職場で活躍したい。そう考えたとき、ご自身の障害のことで不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
「障害があっても、薬剤師として働くことはできるのだろうか?」
「職場にどんな配慮をお願いできるんだろう?」
「面接で、障害についてどう伝えればいいか分からない…」
しかし、結論から言えば、障害を持つことは、薬剤師としてのキャリアを諦める理由にはなりません。近年、企業の障害者雇用への理解は深まっており、適切な配慮やサポートを受けながら、専門性を存分に発揮できる環境が整ってきています。
この記事では、障害のある薬剤師の方々が、安心して自分らしく働ける職場を見つけるための就職・転職活動の進め方について、具体的なステップを交えながら詳しく解説します。
障害を持つ薬剤師の働き方と活躍の場
薬剤師の資格と知識は、障害の有無にかかわらず、社会にとって非常に価値のあるものです。あなたの専門性を活かせる職場は、数多く存在します。
- 調剤薬局: 比較的勤務スタイルが安定しており、通院などとの両立がしやすい職場です。在宅医療に特化した薬局など、働き方も多様化しています。大手チェーンでは、障害者雇用に関するサポート体制や研修制度が充実している傾向にあります。
- 病院: チームで業務を進めるため、体調がすぐれない時などに周囲のサポートを得やすい環境です。ただし、業務量が多く、当直や緊急対応が求められる場合もあるため、体力的な配慮が可能かどうかを事前に確認することが重要です。
- ドラッグストア: OTCカウンセリングや調剤など、活躍の場は広いですが、店舗によっては接客や品出しなど、立ち仕事や体力的な負担が大きい業務もあります。「調剤専任」など、業務内容を限定して働ける求人を探すのも一つの方法です。
- 企業・公務員: 製薬会社のDI業務や学術、行政機関でのデスクワークなど、身体的な負担が少なく、安定した環境で働けるケースが多いです。法定雇用率の遵守意識も高く、比較的門戸が広い傾向にあります。
大切なのは「どの業種か」ということ以上に、**「その企業・法人が、障害のある社員一人ひとりに向き合い、共に働く姿勢を持っているか」**を見極めることです。
「オープン就労」と「クローズ就労」自分に合った働き方を選ぶ
就職・転職活動を進める上で、最初に考えるべき大きな選択肢が「オープン就労」と「クローズ就労」です。
オープン就労(障害を開示して就職する)
自身の障害について企業側に伝えた上で、就職活動を行う方法です。「障害者採用枠」での応募もこれに含まれます。
- メリット:
- 通院や体調に合わせた勤務時間の調整、業務内容の変更など**「合理的配慮」**を受けることができる。
- 職場の理解を得やすく、精神的な負担が少ない。
- 入社後のミスマッチが起こりにくい。
- デメリット:
- 一般の求人に比べて、求人数が限られる場合がある。
クローズ就労(障害を非開示で就職する)
障害があることを企業側に伝えず、一般の採用枠で就職活動を行う方法です。
- メリット:
- 求人の選択肢が広い。
- 障害を意識されることなく、他の社員と全く同じ立場で評価される。
- デメリット:
- 必要な配慮を求めることができないため、体調が悪化するリスクがある。
- 入社後に障害が判明した場合、信頼関係を損なう可能性がある。
どちらを選ぶかは個人の状況や考え方によりますが、安心して長く働き続けるためには、必要な配慮を受けられる「オープン就労」を選択する方が、結果的に多くのメリットをもたらすケースが一般的です。
障害者採用枠での就職活動の進め方
オープン就労を選んだ場合、どのように活動を進めればよいのでしょうか。
1. 求人情報の探し方
障害者採用枠の求人を探すには、専門の窓口を活用するのが最も効率的です。
- 障害者専門の転職エージェント: 最もおすすめの方法です。障害者雇用に精通したキャリアアドバイザーが、あなたのスキルや経験、希望する配慮などを丁寧にヒアリングし、最適な求人を紹介してくれます。応募書類の添削や面接対策、企業側への配慮事項の伝達など、全面的にサポートしてくれます。
- ハローワーク: 各地域にあるハローワークには、障害のある方向けの専門窓口が設置されており、求人紹介や職業相談に応じてくれます。
- 企業の障害者採用ページ: 大手企業などでは、自社の採用サイトで障害者採用の専門ページを設けている場合があります。
2. 面接での伝え方のポイント
面接は、あなたのスキルと意欲をアピールし、企業との相互理解を深める大切な場です。障害について話す際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 客観的・簡潔に説明する: 障害名や症状について、診断書の内容などに基づき、客観的な事実を簡潔に伝えます。
- 「できること」と「工夫」を伝える: 「〇〇は難しいですが、△△という工夫をすることで、□□の業務は問題なく行えます」というように、「できないこと」だけでなく、「できること」や「カバーするための工夫」をセットで話すことで、前向きな姿勢と問題解決能力を示すことができます。
- 求める「合理的配慮」を具体的に伝える: 「定期的な通院のため、月に一度、半日休暇を頂ければ幸いです」「重い医薬品の棚卸しなど、特に体力が必要な業務は、他の方と協力させていただけますでしょうか」など、働く上で必要な配慮を具体的に、かつ明確に伝えましょう。これが、入社後のミスマッチを防ぐ上で最も重要です。
- 仕事への意欲をしっかり見せる: 最後に、薬剤師としてどのように貢献していきたいかという、仕事への熱意を自分の言葉で力強く伝えることが、何よりも大切です。
実際に受けられる「合理的配慮」の具体例
企業や職場によって対応は様々ですが、一般的に以下のような配慮を受けられる可能性があります。
- 勤務時間: 通院への配慮、時短勤務、フレックスタイム制の適用、週3〜4日勤務など。
- 業務内容: 身体的な負担が大きい業務(在庫の運搬など)の軽減、長時間の立ち仕事への配慮(休憩時間の調整など)。
- 職場環境: 車椅子でも移動しやすい通路の確保、PCの音声読み上げソフトの導入、休憩室の利用への配慮など。
- コミュニケーション: 指示を口頭だけでなく、メモやメールなど文章でも伝えてもらうなど。
よくある質問
Q. 障害者手帳がないと、障害者採用枠には応募できませんか?
A. はい、基本的には障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳)の交付を受けている方が対象となります。
Q. 給与や待遇は一般枠と変わりますか?
A. 法律で、障害を理由に賃金などで不当な差別的取り扱いをすることは禁止されています。給与や昇進などの待遇は、一般枠の社員と同様に、本人の能力や経験、業務内容に応じて決定されます。
まとめ
障害があることは、薬剤師としてのキャリアを築く上での一つの側面に過ぎません。大切なのは、ご自身の特性を正しく理解し、必要なサポートを受けながら、持っている専門知識とスキルを最大限に活かせる環境を見つけることです。
就職・転職活動は、時に孤独で不安な道のりかもしれません。しかし、あなたをサポートしてくれる専門家や、あなたの力を必要としている企業は必ず存在します。一人で抱え込まず、専門の転職エージェントやハローワークなどを積極的に活用し、自分らしく輝ける職場への扉を開いてください。あなたの新たな一歩を心から応援しています。