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病院薬剤師の仕事内容とは?調剤から病棟業務、チーム医療まで役割を解説

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薬剤師の活躍の場として、調剤薬局と並んで重要な位置を占めるのが「病院」です。入院施設を持つ病院では、外来患者さんだけでなく、入院中の患者さんに対しても、より専門的で包括的な薬物療法が提供されます。そこで働く病院薬剤師は、薬の専門家としてチーム医療に不可欠な存在です。「病院の薬剤師って、薬局の薬剤師と仕事内容はどう違うの?」「ドラマで見るようなカンファレンスに参加したりするのかな?」「具体的にどんな専門的な仕事をしているの?」といった疑問や関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、病院で働く薬剤師の仕事内容を中心に、その多岐にわたる役割、求められるスキル、1日の流れ、そして働く魅力やキャリアについて詳しく解説していきます。

病院における薬剤師の役割と重要性

病院における薬剤師の最も重要な役割は、患者さん一人ひとりに対して、安全かつ効果的な薬物療法を提供し、治療効果の最大化と副作用の最小化を図ることです。そのために、薬剤師は以下のような多角的な視点から業務に取り組んでいます。

  • 薬物療法の専門家としての貢献: 医師の処方箋に基づいて医薬品を調剤するだけでなく、その処方内容が薬学的観点から適切であるかを厳密に評価し、必要に応じて医師に処方提案を行います。また、患者さんの状態に合わせて最適な薬剤選択や投与設計にも関与します。
  • チーム医療のキーパーソン: 医師、看護師、栄養士、理学療法士といった多職種と緊密に連携し、それぞれの専門性を尊重しながら、患者さん中心の医療を実践する「チーム医療」において、薬の専門家として不可欠な役割を果たします。
  • 医療安全の確保: 医薬品の誤投与や副作用といった医療過誤を防ぐため、調剤時の監査、医薬品情報の提供、副作用モニタリング、医療安全管理活動への参画などを通じて、院内全体の医療安全体制の向上に貢献します。
  • 教育・研究機能(特に大学病院や教育機関併設病院): 薬学生の実務実習指導や、新人薬剤師・研修医への教育、そして新しい薬物療法の開発や適正使用に関する臨床研究といった、教育・研究機関としての役割も担うことがあります。

病院の規模(大病院か中小病院か)、機能(急性期医療中心か、慢性期医療か、あるいはがん専門病院のような専門病院かなど)、そして設置主体(国公立、私立、大学附属など)によって、薬剤師の業務内容の重点や範囲は異なりますが、これらの基本的な役割は共通しています。

病院薬剤師の主な仕事内容 – 多様な専門業務

病院薬剤師の仕事内容は、調剤業務から専門的な病棟業務、チーム医療への参加、医薬品情報の管理・提供、そして治験関連業務まで、非常に幅広く、高度な専門性が求められます。

調剤業務(入院・外来)

病院薬剤師の基本的な業務の一つですが、その内容は多岐にわたります。

  • 処方箋監査: 入院患者さんや外来患者さんの処方箋に対し、薬剤の種類、用法・用量、投与期間、相互作用(薬同士や薬と食品の飲み合わせ)、重複投与、禁忌(使用してはいけない場合)、患者さんのアレルギー歴、副作用歴、腎機能・肝機能といった生理機能などを薬学的観点から厳密にチェックします。疑問点があれば、処方医に問い合わせ(疑義照会)を行います。
  • 内服薬・外用薬の調剤: 処方箋に基づいて、錠剤、カプセル剤、散剤(粉薬)、水剤(シロップ剤など)、軟膏、貼付剤、点眼剤といった内服薬や外用薬を正確に調製します。必要に応じて、一包化(1回分ずつパック詰め)や錠剤の粉砕(医師の指示と薬剤の特性を考慮)も行います。
  • 注射薬の個人別セット・混合調製: 入院患者さん一人ひとりに合わせて、必要な注射薬を1回分ずつセットしたり、特に高カロリー輸液(TPN)や抗がん剤、特殊な抗菌薬といった薬剤については、クリーンベンチや安全キャビネットといった無菌環境下で、衛生的に混合調製したりします。これは薬剤師の非常に専門的な業務の一つです。

病棟薬剤業務・薬剤管理指導業務

多くの病院では、薬剤師が各診療科の病棟に常駐または担当薬剤師として配置され、入院患者さんの薬物療法に直接的かつ積極的に関与します。

  • ベッドサイドでの服薬指導: 患者さんのベッドサイドを訪問し、処方された薬剤の効果、副作用(特に注意すべき初期症状)、正しい服用方法、生活上の注意点などを、患者さんの状態や理解度に合わせて丁寧に説明します。
  • 持参薬の確認・評価: 入院時に患者さんが持参した薬剤(他の医療機関で処方された薬、OTC医薬品、サプリメントなど)の内容を詳細に確認し、入院中の治療薬との重複や相互作用、アレルギー歴などを評価し、医師や看護師と情報を共有します。
  • 副作用のモニタリングと早期対応: 患者さんの状態変化(検査値の変動、自覚症状、他覚的所見など)を注意深く観察し、薬剤による副作用の兆候を早期に発見し、重篤化を防ぐための対応(医師への報告、処方変更の提案など)を行います。
  • TDM(治療薬物モニタリング)に基づく投与設計支援: 特定の薬剤(抗てんかん薬、免疫抑制剤、一部の抗菌薬、ジギタリス製剤など)について、薬物血中濃度を測定・解析し、その結果に基づいて個々の患者さんに最適な投与量や投与間隔を医師に提案し、効果的かつ安全な薬物療法を支援します。
  • 医師や看護師との回診同行・処方設計への参画: 担当診療科の医師の回診に同行し、薬学的観点から患者さんの状態を評価したり、治療方針の検討や処方設計(薬剤選択、投与量・経路の提案など)に積極的に参画したりします。
  • 退院時服薬指導と地域連携: 退院する患者さんに対し、退院後の薬物療法が自宅や地域でスムーズに継続できるよう、薬の自己管理方法や注意点を丁寧に指導します。必要に応じて、お薬手帳への記載や、退院時薬剤情報提供書を作成し、地域のかかりつけ薬局や診療所の薬剤師と情報を共有し、連携を図ります。

チーム医療への積極的な参加

現代の病院医療において、多職種が連携して患者さん中心の医療を提供する「チーム医療」は不可欠です。薬剤師も、薬物療法の専門家として様々な医療チームに積極的に参加し、その専門性を発揮します。

  • NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム): 医師、看護師、管理栄養士などと共に、入院患者さんの栄養状態を評価し、最適な栄養療法(経口栄養、経腸栄養、経静脈栄養(TPN)など)の計画・実施・評価に関わります。薬剤師は、特にTPNの組成設計や配合変化の確認、微量元素やビタミンの投与設計などで重要な役割を担います。
  • ICT(Infection Control Team:感染制御チーム): 医師、看護師、臨床検査技師などと共に、院内感染の発生予防とまん延防止のための活動(抗菌薬の適正使用推進、サーベイランス、院内ラウンド、感染対策マニュアルの作成・改訂、職員教育など)を行います。薬剤師は、特に抗菌薬の選択、投与設計、TDM、耐性菌対策などで専門性を発揮します。
  • 緩和ケアチーム: がん患者さんなどの身体的・精神的苦痛を和らげるため、医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどと共に、医療用麻薬をはじめとする薬剤の適切な選択・使用、副作用対策、患者さんや家族への精神的サポートなどを行います。
  • 褥瘡対策チーム、糖尿病療養指導チーム、がん化学療法チーム、精神科リエゾンチーム、呼吸サポートチームなど: その他、様々な疾患領域や特定の医療行為に関する専門チームに参画し、それぞれの分野で薬物療法の専門家としての役割を果たします。
  • カンファレンスでの活動: 各チームの定期的なカンファレンスに参加し、患者さんの状態評価、治療効果の判定、副作用の検討、今後の治療方針の決定などにおいて、薬学的観点から積極的に意見を述べ、情報提供を行います。

DI(医薬品情報)業務

院内の医療従事者や患者さんに対し、医薬品に関する最新かつ正確な情報を提供し、安全で効果的な薬物療法を支援します。

  • 院内からの問い合わせ対応: 医師、看護師、他の薬剤師などから寄せられる、医薬品の用法・用量、副作用、相互作用、配合変化、妊娠・授乳中の使用、代替薬の提案、海外の医薬品情報など、日常的に発生する多種多様な専門的な問い合わせに対し、国内外の学術論文、データベース、公的機関の報告書などを検索・評価し、科学的根拠に基づいて迅速かつ的確に回答します。
  • 医薬品情報の収集・評価・発信: 最新の医薬品情報(新薬、添付文書改訂、緊急安全性情報など)を継続的に収集・評価し、その情報を整理・要約して、院内向けに「DIニュース」や「医薬品集(フォーミュラリー)」として発行したり、院内LANやイントラネットで共有したり、勉強会や研修会で発表したりして、医療スタッフの知識向上と医薬品の適正使用を推進します。
  • 院内採用医薬品の選定・評価: 病院内で使用する医薬品を選定・評価し、採用薬リスト(フォーミュラリー)の作成・運用に関与する薬事委員会(または薬事審議会)の運営をサポートし、薬学的観点から医薬品の有効性、安全性、経済性、供給安定性などを総合的に比較検討し、意見を述べます。

医薬品管理業務

院内で使用される全ての医薬品の品質を適切に保ち、必要な時に必要な薬が安全かつ効率的に供給できる体制を確保します。

  • 品質管理・在庫管理: 医薬品の適切な保管条件(温度、湿度、光など)を維持し、使用期限を厳密に管理します。また、各部署(病棟、外来、手術室など)での医薬品の需要を予測し、適切な在庫量を維持し、医薬品卸売業者への発注業務を行います。
  • 特殊な医薬品の厳格な管理: 麻薬、向精神薬、毒薬、劇薬、血液製剤、特定生物由来製品、治験薬といった、法律で特に厳重な管理が義務付けられている医薬品については、盗難や紛失、不正使用を防ぐため、施錠された専用の保管庫での管理、二重の帳簿による正確な使用記録の作成、定期的な在庫確認などを徹底して行います。

治験関連業務(治験実施施設の場合)

新しい医薬品や治療法の開発に不可欠な臨床試験(治験)において、薬剤師は治験薬の管理を中心に重要な役割を担います。

  • 治験薬の厳格な管理: 治験依頼者(製薬会社など)から供給される治験薬の受け入れ、数量確認、品質確認、そして治験実施計画書(プロトコル)やSOP(標準作業手順書)に従った厳格な保管管理(温度管理、施錠管理、盲検性の維持など)を行います。
  • 治験薬の調剤・払い出し・回収: プロトコルに基づき、治験薬を被験者(治験に参加する患者さん)ごとに正確に調製・払い出し、使用済み治験薬や未使用治験薬を回収し、適切に記録・管理・返却または廃棄します。
  • 被験者への説明補助・同意取得支援: 治験責任医師や治験分担医師が行う、被験者に対する治験内容の説明(インフォームド・コンセント)に同席し、薬学的観点から治験薬に関する情報を分かりやすく補足説明します。
  • 治験審査委員会(IRB/IEC)との連携: 治験の倫理的・科学的妥当性を審査する院内の治験審査委員会に対し、治験薬に関する情報提供や、必要な資料の提出などを行います。
  • CRC(Clinical Research Coordinator:治験コーディネーター)としての活動: 病院によっては、薬剤師がCRCの役割を担い、治験全体の円滑な運営を多角的にサポートすることもあります。

病院薬剤師の1日の流れ(例:一般病棟担当薬剤師の場合)

病院薬剤師の1日は、担当する病棟や業務、そしてその日の入院患者さんの状態や手術・検査の予定などによって大きく変動します。ここでは、一般病棟を担当する薬剤師の典型的な1日を例としてご紹介します。

  • 午前(朝礼・情報共有~病棟業務・調剤):
    • 朝礼・情報共有: 薬剤部全体の朝礼や、担当病棟の医療チーム(医師、看護師など)とのカンファレンスで、夜勤者からの申し送り事項(入院患者さんの状態変化、夜間の緊急処方など)、当日の手術予定や重要な検査、薬剤に関する注意点などを共有します。
    • 持参薬確認・処方箋監査: 新規入院患者さんが持参した薬剤を確認・評価し、入院中の処方内容との重複や相互作用をチェックします。病棟で発行された処方箋を薬学的観点から厳密に監査します。
    • 注射薬の調製・払い出し: 当日投与される注射薬(特に抗がん剤やTPNなど、個別の無菌調製が必要なもの)の調製業務、あるいは調製された注射薬の病棟への払い出しを行います。
    • 医師との回診同行・処方提案: 担当診療科の医師の回診に同行し、患者さんの状態を薬学的視点から評価し、薬物療法に関する情報提供や処方提案(投与量の調整、副作用対策薬の追加など)を行います。
    • ベッドサイドでの服薬指導・副作用モニタリング: 入院患者さんのベッドサイドを訪問し、処方された薬剤の効果、副作用、正しい服用方法などを丁寧に説明し、患者さんの疑問や不安に対応します。また、副作用の兆候がないか、患者さんの訴えや検査値から注意深く観察します。
  • 昼休憩: スタッフ間で交代で休憩。時には、製薬会社主催の院内勉強会(ランチョンセミナー)に参加し、昼食を取りながら最新の医薬品情報を学ぶこともあります。
  • 午後(カンファレンス・DI業務~教育・研究など):
    • 多職種カンファレンスへの参加: NST(栄養サポートチーム)やICT(感染制御チーム)、緩和ケアチームといった専門チームのカンファレンスや、担当診療科の症例検討会に参加し、薬学的観点から専門的な意見を述べ、治療方針の決定やケアプランの最適化に貢献します。
    • 退院時服薬指導: 退院が決まった患者さんに対し、退院後の薬の自己管理方法、継続治療の重要性、副作用が出た場合の対処法などを丁寧に指導し、必要に応じて地域のかかりつけ薬局へ薬剤情報提供書を作成します。
    • DI(医薬品情報)業務: 医師や看護師からの医薬品に関する問い合わせに対応したり、最新の学術論文や診療ガイドラインを調査・評価したり、院内向けにDIニュースを作成したりします。
    • 薬学生・レジデント薬剤師への指導: 担当している薬学生やレジデント薬剤師(卒後臨床研修薬剤師)に対し、病棟業務や症例検討を通じて実践的な教育・指導を行います。
    • 臨床研究・学会発表準備: 自身の研究テーマに関するデータ収集・解析、学会発表用のスライド作成、論文執筆など、学術活動に従事することもあります(特に大学病院など)。
    • 委員会活動: 所属する院内の各種委員会(医療安全管理委員会、薬事委員会、倫理委員会など)の会議に出席し、薬剤師としての専門的意見を述べます。
  • 夕方~(記録整理・翌日準備・当直引き継ぎなど):
    • その日の業務記録(薬歴、DI記録、カンファレンス議事録、研究ノートなど)の整理と最終確認。
    • 翌日の注射薬調製の準備や、担当患者さんの情報整理。
    • 当直薬剤師への申し送り事項(特に注意が必要な患者さんの情報、夜間に予測される業務など)を正確に伝達します。
    • 夜勤・当直業務: 多くの急性期病院では、薬剤師もシフト制による夜勤や当直業務があり、夜間の救急患者への対応、緊急調剤、注射薬の緊急調製、DI業務などを担います。

病院で働く薬剤師に求められるスキルと知識

病院という高度で専門的な医療環境で薬剤師として活躍するためには、薬学的な専門知識はもちろんのこと、以下のような多岐にわたるスキルと資質が不可欠です。

  • 幅広い疾患と薬物療法に関する高度な専門知識: 内科系、外科系、小児科、精神科、がん、感染症、循環器、移植医療、救急医療など、病院で遭遇する可能性のある多種多様な疾患と、それらに対する最新かつ専門的な薬物療法(薬理作用、副作用、相互作用、薬物動態、投与設計、TDMなど)に関する深い知識。
  • 特定の専門分野における深い知識と経験: 自身の専門分野(例:がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、NST専門療法士、緩和薬物療法認定薬剤師など)を確立し、その分野でリーダーシップを発揮できるレベルの高度な知識と豊富な臨床経験。
  • チーム医療を推進するための卓越したコミュニケーション能力と協調性: 医師、看護師、その他の医療スタッフ、そして患者さんやその家族と、それぞれの立場や知識レベル、感情を理解し、円滑かつ効果的に意思疎通を図り、信頼関係を構築し、チームの一員として協調して目標を達成する能力。
  • 臨床判断能力・問題解決能力: 複雑な症例や予期せぬ状況に直面した際に、収集した情報を薬学的・臨床的に的確に評価・分析し、科学的根拠に基づいて最適な判断を下し、具体的な問題解決策を提案・実行できる能力。
  • 医薬品情報収集・評価・提供スキル: 国内外の膨大な医薬品情報源(学術論文、データベース、ガイドライン、添付文書など)から、必要な情報を迅速かつ的確に収集し、その情報の信頼性や臨床的意義を批判的に吟味し、相手に分かりやすく効果的に提供する能力。
  • 医療安全に対する高い意識とリスクマネジメント能力: 医薬品に関連するインシデントやアクシデントを未然に防ぐための高い安全意識と、発生してしまった場合の適切な対応、そして再発防止策を立案・実行するリスクマネジメント能力。
  • 継続的な学習意欲と自己研鑽の姿勢: 日々進歩する医学・薬学の知識や技術、そして変化する医療制度に対応するため、常に新しい情報を学び続け、自身の専門性を高めていく強い意欲と実践。
  • (大学病院などでは)教育・研究に関する基礎的なスキル: 後進の指導や、臨床研究の計画・実施・評価、学会発表や論文作成といった、教育・研究活動に必要な基本的なスキル。

病院で薬剤師として働く魅力とやりがい

病院薬剤師の仕事は、責任も大きく多忙な面もありますが、それ以上に多くの魅力と大きなやりがいがあります。

  • 急性期から慢性期、専門医療まで多様な症例に関与し、臨床スキルを総合的に向上: 様々な疾患や病態、そして多岐にわたる薬物療法を日常的に経験することで、薬剤師としての臨床判断能力や問題解決能力、専門知識を総合的に、かつ飛躍的に高めることができます。
  • チーム医療の中核メンバーとして患者治療に深く貢献: 医師や看護師など多職種と緊密に連携し、それぞれの専門性を尊重し合いながら、患者さんにとって最善の治療方針を共に考え、決定していくプロセスに、薬剤師として主体的に関与し、その貢献を実感できます。
  • 患者さんの治療経過を直接見守り、薬学的介入の意義を実感: 入院患者さんの日々の状態変化を直接観察し、自身の行った服薬指導や処方提案、副作用対策が、実際に患者さんの症状改善やQOL向上に繋がった時、薬剤師としての大きな喜びと専門性の意義を肌で感じられます。
  • 専門薬剤師・認定薬剤師への道と専門性の追求: 多くの病院、特に大学病院や大規模な総合病院では、各種の専門薬剤師・認定薬剤師の研修施設となっていることが多く、資格取得を目指しやすい環境です。特定の分野のスペシャリストとして、より高度な専門性を追求できます。
  • 充実した教育体制と学びの環境: 新人薬剤師向けのOJTや集合研修、各専門分野の勉強会、学会参加支援など、継続的な学習とスキルアップをサポートする体制が整っている病院が多く、特に若手薬剤師にとっては安心して専門性を高められる環境です。
  • 医療安全や病院全体の質向上への貢献: 医薬品の安全管理や適正使用推進を通じて、院内全体の医療安全体制の向上や、医療の質の向上に直接的に貢献できます。

病院で働く薬剤師の大変さ・注意点

魅力的な側面が多い一方で、病院薬剤師として働く際には以下のような大変さや注意点も理解しておく必要があります。

  • 常に求められる高度な専門知識・スキルと継続的な学習の負荷: 日々進歩する医療に対応するため、常に最新の知識を学び続け、自身の専門性を高めていく努力が不可欠であり、業務時間外の自己学習や学会参加なども必要となることが多いです。
  • 業務量の多さと多忙な日常、緊急対応: 急性期医療や救急医療を担う病院では、業務量が多く、多忙な日々を送ることが一般的です.予期せぬ緊急入院や患者さんの急変、手術の変更などにより、時間外勤務や緊急の呼び出しが発生することもあります。
  • 複雑な症例や重篤な患者さんとの関わりによる精神的プレッシャー: 治療が困難な疾患や、生命の危機にある患者さん、あるいは終末期の患者さんと接する機会が多く、その薬物療法に深く関与するため、精神的なプレッシャーやストレスを感じることもあります。
  • 夜勤や当直業務による生活リズムの不規則性: 多くの病院では、24時間体制で患者さんの安全を守るため、薬剤師もシフト制による夜勤や当直業務(オンコール体制の場合も)があり、生活リズムが不規則になりやすいです。
  • 初任給の水準の可能性: 一般的な調剤薬局やドラッグストア、製薬会社などと比較して、病院薬剤師の初任給は必ずしも高いとは限らない場合があります。しかし、その後のキャリアパスや専門性の向上による昇給、福利厚生などを総合的に考慮する必要があります。
  • 大規模組織特有の課題: 大規模な病院組織であるため、部署間の連携調整に時間や労力を要したり、意思決定プロセスに時間がかかったり、あるいは多様なスタッフとの人間関係に配慮が必要だったりする場面もあるかもしれません。

病院薬剤師のキャリアパスと給与の傾向

病院で働く薬剤師のキャリアパスは、その専門性と経験を活かして多様に広がっています。

  • キャリアパスの例:
    • 臨床のスペシャリスト: 特定の疾患領域(がん、感染症、循環器、精神科など)や業務分野(NST、ICT、緩和ケア、TDM、治験など)で専門性を深め、関連する専門薬剤師・認定薬剤師の資格を取得し、その分野のリーダーとして活躍する。
    • 薬剤部門の管理職: 主任薬剤師、係長、副薬剤部長、薬剤部長といった管理職へとステップアップし、薬剤部門全体の運営管理、人材育成、病院経営への参画などを担う。
    • 大学教員(臨床薬学分野など、大学病院の場合): 臨床経験や研究実績を活かして、大学の薬学部や医学部で教員となり、薬学教育や研究活動に専念する。
    • 製薬企業やCROへのキャリアチェンジ: 病院で培った高度な専門知識や臨床経験、チーム医療の経験を活かして、製薬会社の研究開発部門、メディカルアフェアーズ部門(MSLなど)、あるいはCRO(医薬品開発業務受託機関)へ転職し、新たなキャリアを築く。
  • 給与の一般的な傾向:
    • 病院薬剤師の給与は、その設置主体(国立、公立、私立、企業立など)や病院の規模、地域によって給与体系が大きく異なります
    • 初任給は、他の薬剤師の職場(特にドラッグストアや製薬会社)と比較して必ずしも高いとは限りませんが、経験年数や役職(主任、副部長、部長など)、専門薬剤師・認定薬剤師の資格取得などに応じて、着実に昇給していくのが一般的です。
    • 国公立大学病院や公立病院では、国家公務員や地方公務員の給与規定(俸給表)に準じた、あるいは法人独自の規定に基づいた給与が支給され、各種手当(地域手当、扶養手当、住居手当、期末・勤勉手当(賞与)など)も充実しており、非常に安定しています。
    • 私立大学病院や民間の大規模病院では、各法人や病院の給与規定によりますが、一般的に大学病院では教育・研究機能も担うため、その専門性が評価される傾向にあります。
    • 夜勤手当や宿日直手当、専門薬剤師手当などが、給与総額に影響を与える重要な要素となります。
    • 長期的に見れば、専門性を高め、キャリアアップを重ねることで、他の職場と比較しても遜色のない、あるいはそれ以上の高い給与水準を目指せる可能性があります。

まとめ

病院で働く薬剤師は、調剤業務から専門的な病棟業務、チーム医療への積極的な参画、DI(医薬品情報)業務、医薬品管理、そして治験や教育・研究活動に至るまで、患者さんの安全で効果的な薬物療法を支えるために、非常に多岐にわたる重要な役割を担っています。その仕事内容は、常に高度な専門知識と技術、そして高い倫理観と責任感が求められるものですが、それ以上に、医療の最前線で社会に大きく貢献し、薬剤師としての専門性を深く追求し、キャリアを大きく発展させられる、非常にやりがいのある魅力的な仕事です。

この記事が、病院で働く薬剤師の仕事内容についての理解を深め、ご自身のキャリアを考える上での一助となれば幸いです。

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黒岩満(くろいわみつる)
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キャリアアドバイザー
専門職の就職・転職活動を支援しています。求職者に対して、求人情報の提供、応募書類の添削、面接対策、キャリアプランの作成など、様々なサポートを行っています。好きな漫画は、ブラック・ジャック。
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