10年後の理想像:薬剤師のためのキャリアビジョン具体例
薬剤師として日々の業務に真摯に取り組む中で、ふと「10年後、自分はどのような姿になっていたいだろうか」と、遠い未来に思いを馳せることはありませんか。目の前の仕事に追われる毎日では、長期的なキャリアについてじっくりと考える機会を持つことは難しいかもしれません。しかし、変化の激しい時代において、ご自身の職業人生を主体的に、そして納得感を持って歩んでいくためには、未来への羅針盤となる「10年後」を見据えたキャリアビジョンを描くことが、非常に重要な意味を持ちます。本記事では、その未来を描く上でのヒントとなる、キャリアビジョンの具体的な例をご紹介します。
具体例を見る前に:まずはご自身の価値観を知ることから
様々なキャリアビジョンの例に触れる前に、まず不可欠なのが、ご自身の内面を見つめ、これまでの経験を振り返る「自己分析」です。どのような業務にやりがいを感じ、何を大切にしたいのかというご自身の価値観の軸を定めることで、他者の例に惑わされることなく、ご自身にとって本当に納得のいくビジョンを描くことができます。他者のキャリアビジョンは、あくまでもご自身の可能性を広げるためのヒントであり、その土台となるのは、あなた自身の経験と価値観なのです。
【例1】専門性を究める「スペシャリスト」としての10年後
一つの方向性として、特定の分野における専門性を深く追求し、高度な薬物療法に貢献するスペシャリストとしてのキャリアビジョンがあります。例えば、がん領域に強い関心があるのであれば、「まずは、がん治療に注力している病院へ転職し、多様な症例に触れながら実務経験を積む。3年後までには、がん薬物療法認定薬剤師の資格を取得する。5年後には、チーム医療の中核メンバーとして、医師や看護師から頼られる存在となる。そして10年後には、がん専門薬剤師として、後進の指導や院内での教育研修を担い、地域全体の薬物療法の質の向上に貢献する」といった道筋が考えられます。
【例2】組織を率いる「マネジメント」としての10年後
プレイヤーとしてだけでなく、チームや組織を動かし、より大きなスケールで医療に貢献したいという志向を持つ方もいらっしゃるでしょう。例えば、薬局での勤務経験を活かし、「まずは、店舗運営の基礎を学ぶために、リーダー的な役割を積極的に担う。3年後には、薬局長として一つの店舗の運営責任者となる。5年後には、複数の店舗を成功に導くことで、エリアマネージャーへとステップアップする。そして10年後には、より広い地域の統括責任者として、企業の経営戦略に関わりながら、地域医療のインフラを支える存在になる」というキャリアビジョンを描くことができます。
【例3】新たなフィールドに挑戦する10年後
薬局や病院での臨床経験を活かし、全く新しいフィールドで活躍するという選択肢もあります。例えば、「これまでの服薬指導の経験で培ったコミュニケーション能力を活かし、製薬企業のMR(医薬情報担当者)へ転職する。3年後までには、担当領域のトップセールスとして実績を上げる。5年後には、その知識と経験を活かして学術部門へ異動し、医療現場への情報提供資材の作成や研修企画に携わる。そして10年後には、臨床開発の分野にも挑戦し、新薬の創出という、より根源的な形で患者様に貢献したい」といったキャリアビジョンも考えられます。
「例」の先にある、あなただけの未来図
ここでご紹介したキャリアビジョンは、あくまでも数多くある中の一つの例に過ぎません。大切なのは、これらの例をヒントにしながら、ご自身の価値観や興味・関心と真摯に向き合い、あなただけのオリジナルの未来図を描き出すことです。しかし、ご自身のキャリアビジョンについて一人で考え、それを実現するための最適な環境を見つけ出すことに、難しさを感じることもあるでしょう。
専門家と共に描く、実現可能な10年後の未来
そのような時、客観的な視点を持つ専門家に相談することは、ご自身の可能性を広げる上で非常に有効です。薬剤師のキャリア市場に精通した転職エージェントのキャリアアドバイザーは、いわば数多くの薬剤師のキャリアビジョンという「生きた例」を熟知しています。客観的な立場からあなたのキャリアビジョンの整理を手伝い、その実現に最適な道筋を共に考えてくれる、心強いパートナーとなり得ます。未来への一歩をより確かなものにするために、一度専門家との対話の機会を持ってみてはいかがでしょうか。