薬剤師の転職、「辞めてから」活動する?メリット・デメリットと成功のポイント
薬剤師としてのキャリアを見直し、新たなステージへ進むことを決意したとき、転職活動を「在職中に行うか」「一度退職してから行うか」は、多くの方が悩むポイントではないでしょうか。特に、現職が多忙であったり、心身ともにリフレッシュしてから新しいスタートを切りたいと考えたりする場合、「辞めてから転職活動をしたい」という選択肢が頭をよぎるかもしれません。
確かに、退職後に転職活動を行うことには、時間に余裕ができるなどのメリットがあります。しかし、その一方で、収入面の不安やブランク期間に対する懸念など、事前に理解しておくべきデメリットや注意点も存在します。
この記事では、薬剤師があえて「辞めてから」転職活動を始める場合のメリット・デメリット、そしてその選択を成功に導くための具体的な進め方や注意点について詳しく解説していきます。
なぜ薬剤師は「辞めてから」転職活動を考えるのか? その理由と背景
薬剤師が、現職を退職した後に本格的な転職活動を開始しようと考える背景には、様々な理由があります。
- 現職が多忙で、転職活動に十分な時間を割けない: 日々の業務に追われ、情報収集や応募書類の作成、面接対策などにじっくりと取り組む時間的・精神的な余裕がない。
- 心身のリフレッシュが必要: 現在の職場環境や業務内容に強いストレスを感じており、まずは心と体を休ませ、リフレッシュしてから新しいスタートを切りたい。
- 資格取得や自己研鑽に集中したい: 退職後の時間を活用して、認定薬剤師の資格取得のための勉強や、語学学習、あるいは興味のある分野の研修などに集中的に取り組みたい。
- 遠方への転職やUターン・Iターンを考えている: 引っ越しを伴う転職の場合、退職後に腰を据えて現地での情報収集や住居探し、そして転職活動を行いたい。
- 円満退職への配慮: 転職活動をしていることを現在の職場に知られたくない、あるいは、退職が決まった際に十分な時間をかけて業務の引継ぎに専念したい。
- やむを得ない事情による離職: 会社の倒産やリストラ、あるいは家族の介護など、予期せぬ理由で離職し、その後で転職活動を始めるケース。
「辞めてから」転職活動をするメリット:時間と心のゆとり
退職後に転職活動を行うことには、以下のようなメリットが期待できます。
- 時間に余裕ができ、活動に集中できる:
- 企業研究、自己分析、応募書類の作成、面接対策などに、じっくりと時間をかけて取り組むことができます。
- 平日日中の面接にも柔軟に対応しやすくなり、複数の応募先とのスケジュール調整もスムーズに行えます。
- 職場見学などにも積極的に参加しやすくなり、より多くの情報を得て慎重に判断できます。
- 精神的なゆとりが生まれる: 現職の業務やストレスから解放されるため、落ち着いた気持ちで自己と向き合い、将来のキャリアプランを深く考えることができます。焦らずに、自分のペースで活動を進められます。
- 即時入社が可能というアピールポイント: 企業や医療機関側が「すぐにでも人材が欲しい」という急募案件の場合、即時入社が可能であることは大きなアピールポイントとなり、採用に繋がりやすくなることがあります。
- リフレッシュや自己投資の機会: これまで忙しくてできなかった旅行に出かけたり、趣味に時間を使ったりして心身をリフレッシュすることができます。また、資格取得のための勉強や、語学学習など、自己投資に集中できる貴重な期間とすることも可能です。
「辞めてから」転職活動をするデメリットと注意点:計画性が不可欠
多くのメリットがある一方で、退職後の転職活動には、事前に理解し、対策を講じておくべきデメリットや注意点も存在します。
- 【最大のデメリット】収入が途絶えることによる経済的・精神的プレッシャー:
- 退職後は当然ながら給与収入がなくなります。生活費の確保が最も重要な課題です。十分な貯蓄があるか、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給資格や期間、手続き方法などを事前に必ず確認しておきましょう。
- 経済的な不安は、精神的な焦りを生み、「早く決めなければ」というプレッシャーから、希望しない条件でも妥協して転職先を決めてしまうリスクを高めます。
- ブランク期間(離職期間)への懸念:
- 離職期間が長引くと、採用担当者に「働く意欲が低いのではないか?」「実務感覚やスキルが鈍っているのではないか?」といったネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。
- 面接では、ブランク期間をどのように過ごしていたのか、その理由や目的を明確に説明できるようにしておく必要があります。
- 社会的信用の低下(一時的な可能性): 無職の期間は、住宅ローンやクレジットカードの審査などで不利になる場合があります。
- 健康保険・国民年金の手続きと負担増: 退職すると、会社の健康保険や厚生年金から脱退するため、自身で国民健康保険と国民年金への切り替え手続きを行う必要があります。保険料も全額自己負担となるため、経済的な負担が増えます。(健康保険は任意継続被保険者制度の利用も検討できます)
- 自己管理能力がより一層求められる: 時間に余裕ができる反面、生活リズムが不規則になったり、転職活動へのモチベーションを維持するのが難しくなったりする可能性があります。計画的な活動と強い自己規律が不可欠です。
- 「なぜ退職後に活動しているのか」という質問への準備: 面接では、ほぼ確実にこの質問をされます。ネガティブな印象を与えないよう、明確で前向きな理由(例:「〇〇のスキルアップに集中するため」「心身をリフレッシュし、新たな気持ちでキャリアをスタートさせるため」など)を準備しておきましょう。
- 孤独感や焦燥感との戦い: 一人で転職活動を進める中で、情報交換の相手がいなかったり、なかなか結果が出なかったりすると、孤独感や焦りを感じやすくなることがあります。
「辞めてから」の転職活動を成功させるためのステップとポイント
退職後の転職活動を成功させ、後悔のない選択をするためには、周到な準備と計画的な行動が鍵となります。
【STEP 1】退職前の入念な準備が成功の土台
- 十分な貯蓄の確保: 転職活動期間が想定より長引く可能性も考慮し、最低でも3ヶ月分、できれば半年分以上の生活費を準備しておくと、経済的な不安を軽減できます。
- 失業保険(雇用保険)の確認: 自身が失業保険の受給資格を満たしているか、手続き方法、給付日数、給付開始時期などを、ハローワークや関連情報サイトで事前にしっかり確認しておきましょう。
- 情報収集の開始(在職中から): 退職を決める前、あるいは退職準備中から、薬剤師の求人市場の動向、興味のある企業や医療機関の情報、自己分析などを少しずつ始めておくと、退職後の活動がスムーズに進みます。
- 具体的なキャリアプランとブランク期間の計画: 退職後のブランク期間をどのように過ごすのか(資格取得、スキルアップ、リフレッシュなど)、そしてどのようなキャリアを目指し、いつ頃までに転職先を決めたいのか、具体的な計画を立てておきましょう。
【STEP 2】退職後の計画的かつ積極的な活動開始
- 生活リズムの維持と心身の健康管理: 退職後も、できるだけ規則正しい生活を送り、心身の健康を維持することが、転職活動への集中力やモチベーションを保つ上で重要です。
- 明確な活動スケジュールの作成と実行: 「〇ヶ月以内に内定を獲得する」など、具体的な目標と期限を設定し、週単位・日単位でやるべきタスク(求人検索、書類作成、面接対策など)を計画的に進めましょう。
- 質の高い情報収集と丁寧な自己分析: 時間に余裕がある分、じっくりと企業研究や自己分析を行い、応募書類(履歴書・職務経歴書)の質を高めましょう。
【STEP 3】ブランク期間を「成長期間」に変える
- スキルアップ・自己研鑽: 認定薬剤師の資格取得のための勉強、専門分野の研修会への参加(オンライン含む)、語学学習、PCスキルの向上など、自身の市場価値を高めるための活動に時間を充てましょう。
- 社会との繋がりを保つ: ボランティア活動への参加や、短期のアルバイト(薬剤師業務でなくても可)なども、生活リズムの維持や社会との接点を持つ上で有効です。
- リフレッシュも忘れずに: 旅行や趣味など、これまでできなかったことに時間を使うのも、心身のリフレッシュとなり、次の活動へのエネルギーとなります。
- これらの活動は、面接で「ブランク期間に何をしていたか」という質問に対する、非常に前向きで説得力のある回答材料となります。
【STEP 4】面接での効果的な説明
- 退職理由と、退職後に活動を始めた理由: 正直に、しかしネガティブな表現は避け、**「〇〇という目標を達成するために、集中的に取り組む時間を確保したかった」「心身ともに万全の状態で、新しいキャリアに臨みたかった」**など、前向きで計画性のある理由を説明しましょう。
- ブランク期間の過ごし方と得たもの: 上記STEP 3で取り組んだことを具体的に伝え、それが今後の業務にどう活かせるか、あるいは自身の成長にどう繋がったかをアピールします。
- 入職意欲の高さと即時入社のメリット: 「貴院(貴社・貴局)で働きたいという強い思いがあり、準備を整えてまいりました。即時入社も可能です」といった形で、熱意と柔軟性を示すと好印象です。
【STEP 5】転職エージェントの活用も有効な選択肢
離職中の場合でも、薬剤師専門の転職エージェントは、求人情報の提供、選考対策、条件交渉など、心強いサポートを提供してくれます。客観的なアドバイスや、自分では見つけられない非公開求人の情報も得られる可能性があります。ただし、「早く決めたい」というエージェント側のペースに流されすぎず、あくまで自分の軸をしっかり持って活用しましょう。
【STEP 6】焦らず、しかし期限を意識した活動
経済的なプレッシャーから焦ってしまい、希望しない条件で妥協してしまうのは避けたいところです。しかし、無計画に活動期間が長引くと、ブランク期間が長くなり、選考で不利になる可能性も高まります。最初に立てた活動スケジュールと目標期限を意識し、バランスを取りながら進めましょう。
「辞めてから」か「在職中」か? どちらが良いかの判断基準
最終的に、どちらの方法が良いかは、個々の状況によって異なります。
- 経済的な余裕: 離職中の生活を支える十分な貯蓄があるか。
- 精神的な状態: 現職のストレスが限界に達しており、まずは休養が必要か。
- 転職活動にかけられる時間: 在職中でも、平日の面接対応など、活動時間を十分に確保できるか。
- 希望する転職先の状況: 急募の求人が多いのか、選考に時間がかかるのか。
- 自身の性格: 自己管理能力が高く、計画的に行動できるか、プレッシャーに強いか。
多くの場合、リスクを最小限に抑えるためには、在職中に転職活動を行うことが推奨されます。しかし、上記のような理由から、どうしても「辞めてから」の方が自分に合っている、あるいはより良い結果に繋がると判断できるケースもあります。
まとめ:計画性と自己管理が「辞めてから」の転職成功の鍵
薬剤師が「辞めてから」転職活動を行うことは、時間に余裕を持ってじっくりと活動に取り組めるという大きなメリットがある一方で、収入面の不安やブランク期間に対する懸念といったデメリットも伴います。
この選択を成功させるためには、何よりも退職前の入念な準備(十分な貯蓄、情報収集、具体的な計画立案)、そして退職後の計画的かつ積極的な活動、ブランク期間の有効活用が不可欠です。自己管理能力と強い意志を持ち、時には転職エージェントなどのサポートも活用しながら、焦らず、しかし目標を見失わずに活動を進めていきましょう。
あなた自身の状況を冷静に見極め、最適な方法を選択することで、きっと納得のいく、新たなキャリアへの扉を開くことができるはずです。